現代社会

 オリンピックの異状

ピョンチャン冬季オリンピックが終わり、これからパラリンピックが開催される。 雪と氷の教義を観ていて、「よくやったねえ」と思うのは、世界からやってきたアスリートたちもそうだけど、韓国の人びとがこの大イベントを成功させるためにやりきった努力だっ…

 社会を動かす感情

「思想はやがて社会の動向を左右する力を失うのではないか、とぼくは悲観的なことを考えている。」 と池澤夏樹が言っている。無力を導くのは情報革命。 「これまでは交友、言語、制度、思想などが人間と人間とをつないできた。資本主義になってから金銭の媒…

 「プロヴァンスの村の終焉」

ウイーン楽友協会のシュタイネルナーザールが語っていた。 「子どもの頃は森が好きで、毎日森の小道を散策していましたよ。森の管理人になりたかったのですが、バイオリンに出会って、結局バイオリニストになりました。」 長くウイーンフィルハーモニーのコ…

 非常事態宣言

今朝は霧が深かった。夜明けとともにランを連れて散歩に出ると、五十メートル先は白い幕におおわれて何も見えない。霧の中からぼんやりと人影が現れた。誰かと思えば中村さんだ。向こうも犬を連れている。 「吉田さんかい、そちらの犬何歳かね。」 「11歳…

 とらわれない人

「君の名」のプロデューサー・川村元気が、こんな話をしていた。 あるとき、ケイタイをどこかへ落としたらしい。そのまま、電車に乗った。ケイタイを持っていたら、車内に入ればすぐさまケイタイを手に持ってそれに集中するところだが、ケイタイがないから窓…

 社会の底

「社会の底が抜けた」という言葉をこの頃よく目にする。底が抜けてしまったら落ちるところまで落ちて行く。崩壊である。今や、底が抜けた感じだ、どこまでも落ちて行くか。危機感がこの表現に込められている。これ以上悪化させない。ここで踏みとどまって、…

 「正露丸」

太平洋戦争の激戦地だったガダルカナル島で、今も旧日本軍の兵士の遺骨収集をしている人たちがいるという。 遺骨収集は、日本兵の遺族と、「全国ソロモン会」の人たち、そしてNPO法人「JYMA日本青年遺骨収集団」らが行っている。 島にはまだ約7000人の遺骨が…

 「思い」と「感じ」だけで大統領は選べない

「思いがけない」結果が出たと言う。「思っていた」ことと異なる。したがって「意外」、すなわち「意」が「外れる」。「意」と「思い」が「意思」。 「思い」に人は左右され、動く。一昨日アメリカでは、「思い」が衝撃的な結果を生んだ。 だが「衝撃的」と…

「国際化」から「民際化」へ

探検家でもあった文化人類学者の梅棹忠夫と歴史学者の上田正昭が1999年にこんな対談をしていた。梅棹 「民族間の紛争というものは、人間の業みたいなものですが、必ずしも歴史全体を通してあったわけではありません。激しくなったのは、ここ数百年のことです…

 開高健の小説「パニック」……行政関係者はこの小説を読んでほしい

120年目に笹が開花し、実を結び、枯れる。すると、その実を食べるネズミが大繁殖して、農作物も森林も怒涛のようなネズミの大軍に襲われ、大打撃を受ける。120年目の到来が近づくと、それを予測した一人の県職員、俊介が、これまでの動物学の研究にもとづく…

 「チェルノブイリの祈り 未来の物語」<5>

関西電力の高浜原発4号機が再稼働する。九州の川内原発、高浜三号につづく四つの原発の稼働だ。福島原発事故後、すべての原発がストップしていたこの国だったが、またもや事故以前の国と同じになりつつある。 ベルギーの原発のことがニュースに出ていた。ト…

 「チェルノブイリの祈り 未来の物語」<4>

「プロメテウスの罠」というドキュメンタリーの連載が朝日新聞で続いている。今日で1544回になる。福島原発事故後、事故の正体を追いつづけるこの記事に、すさまじい執念を感じる。プロメテウスは、ギリシア神話の英雄、天上の火を人間に与えてゼウスの怒り…

 「チェルノブイリの祈り 未来の物語」<3>

現代の日本人の頭に、チェルノブイリはどのように位置づいているだろうか。 スベトラーナ・アレクシエービッチは、この本の最初に「見落とされた歴史について」と題してこんなことを書いている。 「この本はチェルノブイリについての本じゃない。チェルノブ…

 「チェルノブイリの祈り 未来の物語」<2>

アレクシェービッチは、3年間かけて300人の人に取材した。 「一人の人間によって語られるできごとはその人の運命ですが、大勢の人によって語られることは既に歴史です。二つの真実、――個人の真実と全体の真実を両立させるのは、もっともむずかしいことです。…

 「チェルノブイリの祈り 未来の物語」<1>

「チェルノブイリの祈り 未来の物語」(スベトラーナ・アレクシエービッチ著 松本妙子訳 岩波現代文庫)を読んだ。チェルノブイリの村人たちの語りに、ぼくは引き込まれた。 2015年のノーベル文学賞は、ベラルーシの作家・スベトラーナ・アレクシエービッチ…

  世界が風雲急を告げている

明治維新から後、日本はどういう道を歩んできたか、最近そのことが頭をかけめぐる。今朝も午前5時ごろから、うつらうつらしながら、考えていた。欧米の植民地主義に対抗すべく同じ植民地主義に走った日本の歴史、その一本の道。 世界があやしい。風雲急を告…

 韓国の少女像

少女像は 告発・抗議・糾弾の思いを込めて 建立されたものであろう そうであったとしても そこにそうして静かに座っていると その姿・表情から ぼくの心に伝わってくるものは なんという無心さ そう もともとそういう純なる少女なのだ 未来を奪われるまえの …

 罪の記憶

今朝の新聞を見ると、今年亡くなった有名人の記録が載っていた。掲載されていたのは71人、「惜別」のタイトルがついている。ああ、この人も亡くなったのか、と過去の元気だったときの声や姿がよみがえり、しみじみ追慕の気持ちがにじみでる。 人生の年の暮…

 心の中に仲良くしたい声がある

ひで みっちゃんからのメールに、「日本人が韓国でフリーハグをしてみた映像」(http://feely.jp/3656/)というのが添付されていたから、のぞいてみた。 日本人が韓国の街なかを歩きながら、手にもった板をかかげている。板には韓国の国旗と日の丸が画かれて…

 「国民の命、平和な暮らしを守るために」

1962年に『思想の科学』が「日本民主主義の原型」という特集をした。その核が田中正造だった。田中正造の研究家・林竹二が特集の序で、なぜ田中正造なのか、次のように書いている。 「民権思想は、いうまでもなく運動の思想で、実践は人間に支えられる。『人…

 集団的自衛権

戦場へ向かう道。これまでその道には、憲法の柵が設けられ、ふさがれていた。その柵が開かれようとしている。道のかなたに砲煙の上がる戦場がある。戦争の泥沼がある。 今、与党内で自民と公明が論議している。自民が押している。国の形の変わる大きな転換に…

 隠された真実

袴田さんの人生は、犯罪が無実であったとすれば、権力によってつくられた虚構が強制した人生である。 拘束した初期では、捜査機関は袴田さんを何が何でも犯人に仕立てようとは考えていなかっただろう。取り調べの過程で、権力機関は保有する捜査権を踏み外し…

 半世紀前の「天声人語」、「ダモクレスの剣」は今も

紆余曲折の人生上の遍歴によって、わが青年期のほとんどの記録が失われたが、かろうじて保存していたいくつかのなかに山日記がある。ぱらぱら目を通していくと、1961年春に、北さんと二人、鹿島槍ヶ岳の東尾根を登攀した記録があった。冬の豪雪のなかの登攀…

 飛び込み自殺で止まった電車

再び竹内敏晴の登場。こんなことを書いていた。 ある朝、乗っていた電車が途中で停止した。車内放送が入った。 「ただ今、飛び込み自殺がありまして‥‥」 車内が一瞬シーンとした。 「御迷惑をおかけしております。まだ復旧の見込みは立っておりませんので、…

 復興とはどうすることだろう

小径、小道について書いてきた。もう少し考えてみよう。 大阪では路地のことを「ろーじ」と言っていた。人家の間の狭い道、裏通りに出る通路、サンマを焼く煙が流れてきたりして、そこを通り抜ける人は住人の暮らしを感じる。「横丁(横町)」ともいう。法善…

 ナショナリズムとファシズム

書店に行ってみる。単行本にも週刊誌にも、中国、韓国という目立つタイトルがいくつか目に留まる、他国への批判感情が、きわだった色使いに現れている。公共の図書館のなかにもそれらが何冊も入り込んでいる。公共の図書館で、どうしてこういう図書を選定し…

 棄民

時代が動いているなと思う。社会が変わっていってるなと思う。いったいどちらへ向かって動いているのだろう。寒々としたものを感じる。 ラジオの「姜尚中と和合亮一の対談」のなかで、福島原発事故における「棄民」を語っていた。福島原発事故での「棄民」と…

 まさかのことが起こる

山梨が大雪で大変だとニュースで知り、道志村に電話をかけた。息子の嫁の両親が住んでいる。 「雪が1メートル10センチ積もってまーす。1週間前には70センチ積もりましたあ。」 「わあ、それじゃ家が埋没ですねえ」 「はい、埋没ですー」 「外へ出られます…

 反日と反中のはざまで

雪ちゃんは中国の大学で教えている。「雪ちゃん」はニックネーム、ぼくが武漢大学で教えたとき、雪が好きで好きでと言っていたのを聞いた日本人留学生が、彼女にそのニックネームを贈った、と聞いた。今年2月初めに春節のあいさつを雪ちゃんに送ったところ、…

 近づくソチ冬季五輪

今日は日の光に熱がこもっていた。氷点下の、体を貫くような冷気が、日が昇るにつれて上昇し、昼間は日射が肌をほかほか温めていく。ランの黒毛は日を吸収して、縁台で四肢を伸ばして寝ている。きらめく太陽にはまぶしい輝きがあった。まだまだ冬の日が続き…