2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧

 子どもの考えと評価

子どもの考え 桃子は、クラスでいちばん小さな女の子、 ランドセルをしょって歩くと、いつもみんなから遅れてしまう。 ある日の下校、みんなに追いつこうとしても、 ランドセルが重すぎて追いつけない。 「どうしよう、そうだ、ここなら大丈夫、ここに置いて…

   スズメのお宿

独身スズメの若者宿 小さな公園の桜の木に、 スズメが群れてさかんにさえずっています。 スズメのお宿です。 そこから大通りへ二百メートルほど歩くと、 もっと大規模なスズメのお宿のさえずりが聞こえてきます。 それはそれは賑やかな、 ひっきりなしにおし…

 小さな手作り豆腐屋

横丁を入れば さびれた商店街のメイン通りから、 細い横丁へ十数歩はいったところに、 古い長屋風の家並みがあり、 あれれ、こんなところにと思ってしまった、 小さな手作り豆腐屋と、 その向かいに鶏のから揚げを売っている もっと小さい店があったのです。…

  「銀河鉄道の夜」

さびしい君へ 宮沢賢治が「銀河鉄道の夜」という童話を書いているのを、 知っていますか。 知ってるけれど、読んでいません? そうですか。じゃあ、読んでみてください。 この童話は、何かが分かるというような童話ではなく、 何かを感じる、という童話です…

 商店街の一軒の店

今夜のおかず 商店街には「○○銀座」という名前が付いているから、 昔は近在の人を集めてにぎわっていたのだろう。 江戸時代は街道筋、 老舗の造り酒屋や寺もある、古い家並みもある。 今はちらほら人が通るだけの、 商店街の多くの店は、 シャッターを閉ざし…

  円空さん

中観音堂 中観音堂の前に砂利を敷いた広場があり、 その傍らに、現代の木彫りの円空仏が十数体並んでいた。 大きいのは等身大ぐらいもある。 円空さんを偲んで、 平成の人々が丸太を刻んだものだった。 今も、円空仏を彫る人がたくさんいる。 発起は、趣味や…

 カボチャの収穫

土からの贈り物 台風13号の雨が来る前日、 安曇野にコンバインが終日音を響かせ、 稲刈りを急いでいる。 今年の稲の稔りは良い。 蕎麦が白い花を咲かせている。 蕎麦畑の白色と稲田の黄金色、その調和が清楚で美しい。 暁生さんの家の庭の余分な土をもらっ…

 異変に気づくこと

アオマツムシ 今日も桜の木の上から虫の声が聞こえる。 秋の虫の異変に気づいたのは、もう十年以上も前のこと。 秋の虫といえば、コオロギがおなじみ、 エンマコオロギ、ミツカドコオロギなどが庭や土間にいて、 秋の夜長、美声を響かせていた。 スズムシ、…

  心優しい人たち

一、北京で シャオホンの視線が、 ぼくの靴下の一点に止まったみたい。 見ると、靴下に穴があいている。 シャオホンは指さした。 老師、つづくってあげます、と、 彼女の両手の指がものを言っている。 シャオホンはクラスでいちばん勉強が遅れていた。 シャ…

 勇気ある発言

サツマイモの弁当 戦争が終わって3年目の夏のこと。 小学校5年生のぼくのクラスに、 町の学校から一人の男の子が転校してきた。 河内のガラの悪いやんちゃ坊主たちは、まだはだしで遊んでいた時代だった。 転校してきた子の名前はクワタくん。 クワタくん…

 偶然の出会い

コウくんとの出会い 「コウです。」 白いハンチングをかぶった長身の若い男は、 ぼくを呼んでから名を名のった。 「おう、おう、コウくん。」 一年ぶり。まさかこんなところで出会うとは、 あまりにも偶然、偶然だなあ。 ぼくは初めてそのスーパーへ、 長良…

 ゴッホと宮柊二(みやしゅうじ)

歌集「山西省」の歌 耳を切りしヴァン・ゴッホを思ひ孤独を思ひ 戦争と個人をおもひて眠らず この歌は、1941年(昭和16)、柊二が山西省大原の北の小都市、 原平鎮の野戦病院に入院していたときに作っている。 発表されたのは、戦後昭和21年。 入院…