中国・青島での生活

⑧  夏休みの終わり

夕暮れの広場 広場はすっかり暗くなったのに、 子どもらはまだ遊んでいる。 かくれんぼの隠れ場は そこらじゅうにあり、 鬼が数えている間、 子どもらは 隠れ場所を探して 一目散に走る。 昔 ぼくが河内の子どもだった頃 十を数えるのは、 「ぼんさんが へを…

⑦  抗日戦争60周年

夏の夜、TVをつけたら、ドラマをやっています。登場する日本兵の服装で日中戦争がテーマだとすぐに分かりました。日本軍の残虐行為は見たくないなあ、少し忌避したい気持ちが湧きました。 それは、抗日戦争のときのある山村の民兵の戦いです。見始めると引…

⑥  人と人との関係

中国の街を歩いていて、「お構いなしだなあ」と思うことがよくあります。 市場の猛烈な人ごみの中へ、バイクで乗り込んでくる人がいました。もちろんそろそろだけれど。もうお構いなしだな、とそんなときに思います。 歩道にロープを張って理髪店がタオルを…

⑤  廃品回収、リサイクル

リサイクル よく通る声を響かせながら廃品回収が、 小さな手作りの木の一輪車を押してやってくる。 おばあさんは布袋を背負い、青年は手押し車を押して。 歌うように喉を響かせる声色は、日本の昔の物売りに似て、 聴くたびになつかしさが湧く。 ダンボール…

④   暗闇の公園に集う人たち

公園に集う人たち 十六夜の月が雲間にのぞいている。 月の明かりに照らされた七、八人のおばあさんは 小さな床几に腰をおろして、 円く輪になり、 何をしゃべっているのやら、 外灯もない公園の、 いつもぼくが通る池の横で、彼女達はいつまでもお話をしてい…

③  犬の話  

あぶない、轢かれるぞ。 道路のセンターラインに犬が座って、右から左へと通過していく車を見送っています。 真ん中まで来たものの、向こうまで渡りきれず、身動き取れなくなっているのでした。よく見かける犬で、左前足が怪我か何かで使えず、いつも左前足…

②  下町の暮らし

ぼくの住んでいた宿舎は、日本のかつての6階建て公営住宅に似ていて、その3階でした。ずいぶんくたびれた建物で、一階部分のひさしの上に、二階の人が勝手にベランダを作り、植木鉢を置いたり、洗濯場をつくったりしています。 ぼくの部屋の窓から、隣の住…

①  日本語を学ぶ農村青年

8月19日から10月22日まで、中国・青島で日本語を教えていました。青島は一時、ドイツの植民地でしたが、第一次大戦で、日本が青島のドイツ軍と戦って勝利を収めてからは、一時期を除いて1945年まで日本の統治下にありました。 ぼくは、下町の、六…