犯人はだれだ

 

    庭の畑を見て、驚いた。なんだ、これは!

    レタスの苗を植えた畝に、大きな穴が開けられ、数本の苗が四、五メートル向こうに土とともに飛んで行ってる。穴の周囲も、周りの畝も、動物の足跡だらけだ。

    足跡の大きさからみるとキツネか。しかし肉食のキツネがどうしてレタス畑を荒らす? 合点がいかない。

 近所の農家のヒデさんに来てもらった。

    「なんだろね、キツネか、ハクビシンか。足跡の大きさからするとキツネかなあ、キツネだとすると、巣はすぐそこだからね」。

    キツネの巣は、ヒデさんの田んぼの上、ススキの群落の中にある。

    「しかし、キツネがどうしてレタス畑を掘るのかなあ。」

    ヒデさんも首をかしげて帰って行った。

    なんだろう、不思議だ。とばされていた土を鍬で集めて畝に戻し、散らかっていたレタスの苗を集めて、畝にもどし、水をやった。

    しばらく考えていて、近くの畝の小さな穴を見た。そうか、モグラだ。モグラがこの畑にいることは分かっていた。それをねらって、キツネが夜中にやってきて、モグラを獲物にしたのだ。人間には分からないが、キツネには土中のモグラが、土の中を掘り進んでいくのが分かる。かすかな音が聞こえる。モグラがレタス畑の土中を掘っている。その音に、やってきたキツネが気づいたのだ。キツネの嗅覚も鋭い。モグラがこの下におるぞ、キツネは前足で土を掘り、後ろ足で土を後ろに蹴飛ばして、モグラを見つけ、くわえて巣に戻っていったのだ。

    まちがいない。レタス畑は荒らされたが、モグラを退治してくれたのはありがたい。

    これをヒデさんに報告しよう。

    これからトマト、ナス、サツマイモ、いくつかの苗を植えよう。