2012-12-01から1ヶ月間の記事一覧

 チェルノブイリの子ども、フクシマの子ども

NPO法人の「広河隆一 非核・平和写真展開催を支援する会」の機関紙第46号が年の暮れに届いた。そのことのために、日々尽力しておられる人たちがいる。感じるものがある。 一面の記事には、「遠足をやめた先生がた」という見出しが付いていた。福島がそ…

 安部敏一さんの歩いた自然<2>陸前高田

] 雪の犬小屋 阿部さんの「通信」のなかに陸前高田行きの記録がある。時は1995年3月。「JR陸羽東線岩出山駅発午前7時57分に乗る。‥‥濡れ雪の降る寒い日である。小牛田駅の雪の積もったレールの上でハクセキレイが途方にくれているように見えた。スズメの群れ…

安部敏一さんの歩いた自然<1>福島原子力発電所

「風が吹くと、この木の葉が音を立てます。それで、ヤマナラシと言うのです」 高々と空に立つその木は、風が来たとき、なるほどさらさらと音を立てた。ヤマナラシはポプラの仲間で、楕円形の葉っぱは風に吹かれると白っぽい葉裏を返して、山を鳴らした。 十…

 新しい山

夜明け、 白い峰が西の空に立ち、 輝く、 常念。 今まで見てきた常念岳とは違う 新たな常念を見た。 頂上から雪煙があがり、 南に流れて空に消える。 森の上に白いすそを引き、雪の山ひだを折り、 光るものあり、 新しい山を見た。 新たな常念は、神さびる常…

 感情が狂わす人間関係

若輩教師のころ、夏休みが終わって二学期が来た。陽に焼けたA子に、「黒くなったね」と声をかけた。するとA子は、「先生なんか嫌い」と言って、ぷいと行ってしまった。親しみをこめて言ったのに、どうして腹を立てるのかと、今度はこちらが不愉快になった。…

 心に残る年賀状

反原発の集会 今年黒豆がたくさん採れた。耕作放棄地を活かす取り組みで土地をただで借りることができ、3畝ほどの土地に黒豆を播いた。種豆は大規模農業を展開する彰久さんが提供してくださった。虫の心配も、肥料もいらず、草を引き抜くだけで、いい豆が採…

 ピーカンカンと空は晴れ、四方八方 信濃の山だ

烈風のなかを、トビがゆっくり風上へ向かって飛翔していく。 雪道の上をつがいのセグロセキレイがヒラヒラ、 ハンミョウのように少し飛び上がっては少し舞い降り、 餌を求めて行けども雪ばかり。 カラスが庭の野菜クズをあさりにくる。 屋根から雪煙があがっ…

 屋久島からの贈り物「かから団子」

屋久島から団子が送られてきた。まあ、きれいに作られた団子だねえ。いかにも屋久島という感じだねえ、と言ってから、「いかにも屋久島という感じ」と言ったものの、それはどういう感じなんだろうねと思った。団子に添えられたサトコさんの手紙が入っていた…

  井上靖『友』<海の底を歩いて帰ってきた友>

友 どうしてこんな解りきったことが いままで思いつかなかったろう。 敗戦の故国へ 君にはほかにどんな帰り方もなかったのだ。 ――海峡の底を歩いて帰る以外。 短い詩である。初めてこの詩を読んだとき、疑問符が頭に浮かんだ。海峡の底を歩いて帰る以外に帰…

 ケヤキを守る市民たち <井上靖の小説「欅の木」>

井上靖の小説「欅の木」のなかで、ケヤキを守る会をつくった市民たちが講演会をひらき、市民が演壇に立って話をする場面が登場する。昨日書いたのはその一人、ケヤキを守るために自分は命を捧げてもいいと戦地から手紙を送って戦死した弟のこと、銭湯の主人…

 伐られていく大木

「小太郎さんは、年に一回か二回、帰ってきはります」 近所のおばちゃんがそう言ったが、一度も顔を見たことがなかった。金剛山麓の村、そこに小太郎さんの実家があった。小太郎さんはT.S氏だった。池口小太郎が本名の、作家、評論家、政治家、実にさまざま…

 美輪明宏『ヨイトマけの唄』

「美輪明宏が紅白歌合戦に出るんだって」 「え、ほんと? 何を歌うのかな」 家内とそんなやりとりをした。歌は「ヨイトマケ」じゃないか、そんな気がした。 その翌日、家内が言った。 「『ヨイトマけの唄』だって」 「へえ、やっぱり。それだけ聴きたいな。…

 吉野せい「春」を読む <生きることってどういうことだろう>

「丘の上の村」の学園で、16、17歳の女の子たちと吉野せいの「春」を読んだかの日の記憶はもうおぼろになっている。 「春」の冒頭の一文を読む。朗読しましょう。みんなはそれぞれの思いをこめて最初の一文を朗読した。 「春ときくだけで、すぐ明るい軽…

 生きているということ 私たちの未来

「『生まれる』の動詞は、いまあまりにも痛々しく、ひょっとしたら『死ぬ』の自動詞よりも残酷でさえあるかもしれない。なぜなのか。徴(しるし)をわたしは感じている。Aが死んだ。死因は熱中症。行年七十六。さいごのことばは『あつい、あつい』であった…

 日本語教室・伝言ゲーム

ひきだしの中にもう10年も眠っていたジーンズのパンツが4着あった。このジーパンは大阪にいる広太郎君が少しはいていたもので、ぼくが10年前ボランティアで中国へ行くと聞いて、ダンボールに1箱、いろいろな衣類とともに送ってきてくれた。けれどそれを中国…

 子どもの遊び研究

(マッチをすって火をおこす)<学校というハコと、家庭というハコ、この二つのハコのなかで、現代の子どもたちはほとんどの時間を過ごす。学校と家庭の外に広がる世界には、子どもの遊ぶ姿はない。子どもたちの喪失した世界とはどんな世界だったのか。> 研…

 日本型ファシズムがじわじわ進行しているか

黒豆をお椀にいっぱい、ダンボール箱にざーっと入れる。箱を傾けると、黒豆はざざーと低いほうへころがる。明日は国政選挙だ。黒豆はいっせいにどっちへ転がるだろうか。多党乱立の状態での選挙では票はばらける。だから、小選挙区という仕組みでは、得票数…

 「仰げば尊し」

(写真は碌山美術館)市議会を傍聴した。本会議のこの日は、一般質問で議員が行政に質問をする。一人60分ほどの指定された時間内に、質問をし、それに対して行政側が答える。 寒さが身に染むなか、議会の開かれている堀金総合支所三階に行った。傍聴者は午…

 リービ英雄の見たアメリカ、そしてオバマ <2>

リービ英雄はアメリカと中国という大陸に君臨する二つの国と日本を行き来する。リービの足が向かうところ、リービの眼が注がれるところ、それはその国の底の部分。 「バラック・オバマが大統領に当選したのは、リンカーンの奴隷解放宣言から140年ぶりの大き…

 リービ英雄の見たアメリカ、そしてオバマ

リービ英雄は、アメリカで生まれ、少年時代を台湾、香港で暮らし、17歳のときに日本に来た。その後、アメリカの大学を出て、大学の日本文学教授となり、日本に定住し、日本語による作家活動を行なっている。 リービ英雄は万葉集を読んで感動し、大和の地を…

 今朝は氷点下9度

朝起きたら、部屋は冷えに冷えていた。パジャマから着替えるとき、裸の体に感じる寒さが、体に影響を与えているなと感じる。鼓動の反応が少し気になった。温度計を見ると寝室は1度だった。居間は0度。外壁に這わせて室内に引き込まれた水道管は、断熱材が…

 ベトナム、中国、パラグアイの若者たち

雪が近づいているから、野沢菜を採りにおいで、と巌さんから電話があった。家内が明日までいないから、水曜日にいただきに行きますと、電話を切ったら、1時間ほどして、キンコンとチャイムが鳴り、巌さんが現れた。 「野沢菜、持ってきた」 「ひえーっ、もう…

 人間にレッテルを貼ること

人間にレッテルを貼ることは、世間でよくある。「変人」というレッテルがある。ちょっと変わった人ということだが、どこが変わっているのかというと、世間の常識から見て変わっているということになる。みんながこうするということをしないで、みんながしな…

 暗く寒い日に歌う

陰鬱な日だった。雲低く垂れ込め、寒気しんしんと身にしみた。今朝あいさつを交わしたご婦人はちょくちょく出会う人で、オミソという名前の犬を連れて、ウォーキングはいつも暗いうち、オミソに催促されて出てくるのだという。オミソという名前がおもしろい…

 四囲の山々

爺ガ岳と鹿島槍ガ岳 小型の柴犬を連れて朝の野を散歩しているNさんに出会った。いつも何か一言、話を交わすだけのお付き合い。今朝は何を言おうかなと思いつつ近づく。北の空遠くに雪山がある。それが目に入ったからあいさつはそれを話題にした。 「あの雪の…

 高村光太郎と尾崎喜八<わが自責>

突如よみがえってきて、自責の念に胸がきりきり痛むときがある。自分の人生の中で、自分がおかした間違い、罪と言いたいことがらである。そのとき罪だと意識しなかった、が、自分の脳は、それは間違いだと峻別して記憶の中にすべて残している。 光太郎と喜八…

 高村光太郎・尾崎喜八・ヘルマン・ヘッセのつながり

穂高東中学校では毎年秋に、「田舎のモーツァルト音楽祭」が、生徒全員とゲストの音楽家によって開催されている。全生徒による「レクイエムから」の合唱を聴いた時、ぼくはその合唱のすばらしさに聴きほれるとともに、一人の詩人・尾崎喜八が1960年ごろ、田…

 古い建具、古い建物

巌さんの仕事場の外に処分するものが置いてある。そのなかに、建具の障子に使われてきた木枠が数枚ブロック塀に立てかけてあった。もし燃やすんだったら、ほしいと声をかけたら、トラックで運んであげますというから到着を待っているが、まだ来ない。こうい…

 ヘルマン・ヘッセ「少年時代から」

親・家族、暮らしの環境、そして友、この三つは、子どもに深く影響を与える。 ヘッセにはまた「少年時代から」という作品がある。少年時代の記憶の細い糸をたぐりよせた作品である。記憶をひもとくと、まず断片的な記憶から始まる。それが集まって、記憶の元…

 ヘルマン・ヘッセの「わたしの幼年時代」

朝のうちは、ときどき晴れ間も出た天気が、にわかにかきくもり吹雪になった。雪は横殴りに吹き付ける。今は、外仕事を休んで、名文をここに書き記そう。ヘルマン・ヘッセの「わたしの幼年時代」(高橋健二・訳)から一節。昨日書いたことの想いが継続してい…