2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ある小ガラスの話

ヘルマン・ヘッセに、「小ガラス」という文章がある。 ヘッセがバーデンというところへ湯治にやってきたときのこと。道で小ガラスに出会った。カラスは恐れもせず、ヘッセは半歩の距離まで近づいた。カラスはヘッセをじろじろ見た。 「私は驚いた。そのカラ…

カラス

借りている半反ほどの畑に行ったら、えらい草やあ。草の勢いはたまらん。数日畑に行かなかったら、どえらいことになっている。畑には黒豆を植えているのだが、早く種をまいたのはすでに実をつけており、その間に草がにょきにょき生えている。草刈機であぜの…

カンテキ

自家製トマトソースは実にうまい。それで毎年妻が地這いトマトを長時間煮込んで作っている。トマトは僕が作り、ソースは妻が作る。 今年もソースづくりを始めた。ところが今年、トマトの出来が悪い。成長が良くなかった上に、天候不順がたたった。収穫に行く…

歴史認識の欠落

「日本社会の歴史」を著した網野善彦が、こんなことを書いていた。 「五世紀後半、大王に率いられた近畿の首長連合は、各地域の首長とその率いる集団との間に、なお祭祀的、呪術的な要素を残した貢(みつぎ)・贈与を媒介とするゆるやかな支配服従関係を保ち…

エアコン

お盆の前、日中の気温があまりに高くて、36度を超えていたから、以前奈良に住んでいたときに少しばかり使っていたエアコン(それは外して持ってきて物置に仕舞っていた)を取り出し、これを再び使用できないかと、町の職人さんにみてもらった。 職人さんいわ…

目覚め

椅子に座って、ぼんやりと庭の草木を眺めている。こんなふうに何をするでもなく、山を眺め、雲を見て、頭に浮かぶ想念の、ゆらゆらと過ぎていくのを感じることって、これまでそんなになかったように思う。日が昇る前、散歩の途中で、村の公園の木のベンチに…

山をうたう

この詩も好きだった。 甲斐が根 三木露風 夏山のいただき 白く連なる 甲斐が根よ そよ 我が心の故郷。 天晴れて青し 澄みて高し 想ひやる 神 御座(みくら)に香をたく。 雷鳥は峡間の 雪に落ちて あけぼのの 日は 紅に染めたり。 高光る甲斐が根 君をおもふ…

山の詩

そしてまた、山に向かう夜行列車の中で、「山の詩集」を取り出し、次の詩を口ずさむのだ。 山巓(さんてん)の気 堀口大学 汚邪(おや)の地を去って 山巓の気に立たう。 われらあまりにも 巷塵の濁悪(しょくあく)に慣れた。 聴け、天の声、 若い嵐が中空…

「山」という詩

青年のころ、山へ行くとき、キスリングザックの大きなポケットに「山の詩集」を一冊入れた。 濡れないようにしてはいたものの、山行中には風雨に出会う。 新しかった詩集も雨水がしみこみ、ぼろぼろになり、 それでもそれを次の山行に持って行かないと、気が…

猛暑よ、去れ

昨日、 ランが少し食べた。動物病院が出してくれた、病気回復ケアの犬用の缶詰、獣医さんは「おいしいの」と言っていた、それを昨日大スプーンに一杯ほど、ランにやると、数粒のドッグフードは見向きもしなかったのに、やっぱりおいしいのだ、食べた。なかに…

ランがあぶない

先週の土曜日のこと。 食欲旺盛のランが何も食べない。水も飲まない。工房の床下に入って、ハーハー荒い呼吸をしながら伏せたまま動こうとしない。工房の床下は、おそらく我が家でいちばんヒンヤリするところだ。 その日、早朝五時からジャガイモ掘りをした…