「ゲルニカ」とサグラダ・ファミリアの旅

  ⑧  二つの出来事

<第一話> ぼくらは並んで公園を歩いていた。ぼくは両手にストックを突いている。 「財布、うしろのズボンのポケットに入れてない?」 洋子が聞いた。 「うん、うしろポケットに入れている。」 「後ろの二人組、さっきポケットに手を伸ばしていたよ。私が見…

  ⑦ 鳥の歌

トレドのカテドラル前の路上でチェロを弾いていたChiki Serranoから買ったCDの最後の曲は、カタルーニャ民謡『鳥の歌』だった。この歌を聴いてほっと心が安らいだ。 『鳥の歌』を初めて聞いたのは、カザルスの演奏を録音したCDだった。その演奏は1961年11月1…

    ⑥  この国の人びと

「ガウディ通り」の散策路に置かれたベンチに座って、道行く人々をなんとなく眺めていた。さわやかに晴れ、プラタナスの木陰は気持ちよい。街路の真ん中に泉水があり、鳩が飛んで来て水遊びをしている。街路や公園に、座りたいなと思う時に座れるベンチがあ…

   ⑤ 「サン・パウ病院」

宿が「サン・パウ病院」から道路を隔てたところにある。旅に出る前に、「サン・パウ病院」が世界遺産であるということを知ったものの、いったいどんな病院なのか、なぜ世界遺産なのか、肝心のことは何も知らないままに出かけた。バルセロナでの第一夜が明け…

  ④ ストリートミュージシャン・辻音楽師

「辻音楽師」、現代は「ストリートミュージシャン」、そのイメージがすっかり変わった。 まずはマドリードの王宮の前庭、人通りは少ない。かすかにアコーデオンの音色が聞こえた。まぎれもないアコーデオン、音色を聞き間違えることはない。音に誘われ木々の…

 ③ 都市の中の自然公園「カサ・デ・カンポ」

マドリード市内に、カサ・デ・カンポというスペイン最大の都市の自然公園があることを知って、これは絶対この眼で見なければならないと、一日かけて行くことにした。面積は1750ヘクタールあるらしい。1750ヘクタールというと、どれぐらいの広さなのか、平方…

  ②『ゲルニカ』の物語

1939年5月、作品『ゲルニカ』はアメリカ合衆国に送られ、その年に第二次世界大戦が勃発する。『ゲルニカ』はニューヨーク近代美術館に保管され、ピカソ展はアメリカ合衆国内で開催された。第二次大戦が終わると、1953年、『ゲルニカ』はヨーロッパに戻され、…

①ストックを突きながら

「ゲルニカへのピカソの道」特別展を観たい。両手ストックを突いて、よく磨かれた石段を上っていった。ストックを突くと、痛む膝がいくらかカバーされて痛みが和らぎ、足どりも確かになる。 ソフィア王妃芸術センターの入口から階段下まで入館者の長い列がで…