2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

戦争論 11

新船海三郎君は、これまでの世に出ている膨大な戦争文学を読み、「戦争は殺すことから始まった」という著書を出版している(「本の泉社」)。 「黙殺、忘却、無視‥‥は過去のことではない。現代日本もそうである。私たちは屑籠をあさってでも、引っ張り出して…

戦争論 10

高橋源一郎は、古山高麗雄の戦争小説を高く評価した。 「古山は、戦争という大きな物語を、小さな個人の物語に接続させることに生涯を費やした。」 1920年、植民地朝鮮の新義州で生こまれた古山は、京都三高に学び、1942年に軍に召集された。入隊した古山は…

戦争論 9

高橋源一郎が、「ぼくらの戦争なんだぜ」という本を8月に出した(朝日新書)。今読んでいる。 この本の中に、大岡昇平の小説「野火」についての論が長くつづられている。 戦争小説と言えば「野火」だ。「野火」は大岡昇平の経験にもとづいて書かれた。 「野…

戦争論 8

重田園江さん(明大教授)が、「戦争への悔恨をかみしめて」という評論を書いていた(朝日新聞8,23)。それはジョン・ダワーの「敗北を抱きしめて」につなげる想いである。 1945年の日本の敗戦後、戦地の日本人が出会った悲惨も、焦土と化した日本国内の…

戦争論 7

「野火」「俘虜記」「レイテ戦記」など、兵士としての戦場体験を大岡昇平は書いた。 「戦争」という語り口の著書がある。そこにこんなことを書いている。 トルストイの「戦争と平和」は、ロシアが戦争に勝ったから書けた。私は負けた側から、戦争とは何かを…

戦争論 6

<堀田善衛「若き日の詩人たちの肖像」から> しばらくうとうとしていて、不意に鋭い汽笛の音で眼が覚めると、自分は明後日から、自分の家に帰るものではなくなるだと、気づかされた。 そうして、人間が自分の家へ帰るものではなくなるとなると、その先の方…

戦争論 5

この時季、テレビでは戦争特集の番組が多く、あの吉田満の記した記録「戦艦大和ノ最期」のドキュメンタリーを、再び見た。 満20歳、学徒出陣により海兵団に入団した吉田満は、予備少尉に任官、「戦艦大和」に乗艦した。 1945年、敗戦間際、戦艦大和に沖縄へ…

ムクゲの花

今日も、庭のムクゲの花、 窓を開けるとお迎えしてくれる。 木全体に花をつけ、朝開き、夕方に落ちる一日花。 白花の樹は、すがすがしい。 紅花の樹は、あでやか。 まわりは白く、真ん中だけ紅いのもある。 生命力が強く、一本の木があると、その周囲に、土…

ランの一周忌

ランの一周忌です。 去年、暑い暑い日つづいたとき、ランは水も飲まず、玄関の土間に横たわり、静かに逝きました。16歳でした。 庭の、樹々の茂るところに、ランを埋葬してやりました。 お墓の上に、大きな木材で墓標をつくってやりました。 その墓に、「ラ…

戦争論 4

朝日新聞の8月12日、政治学者豊永郁子氏の寄稿文が一面全部に載っていた。 タイトルは「ウクライナ 戦争と人権」 見出しは、 犠牲を問わぬ地上戦 国際秩序のため容認 正義はそこにあるか この原稿の最後は、次のような文章でしめくくられていた。 ☆ ☆ ☆ 「最…

戦争論 3

加藤陽子さんは、「歴史の誤用」というものを指摘していた。 「政治的の重要な判断を下す人は、過去の出来事について、誤った評価や判断を導き出すことがいかに多いか。」 アーネスト・メイは、アメリカのベトナム戦争について研究した。 「なぜこれほどまで…

戦争論 2

小学生のころ、友だちが、「日本は無条件降伏や」と言った。「無条件降伏って、なんや」、ぼくは聞いたが、だれも知らない。先生からも説明がなかった。 1945年7月26日、アメリカ、イギリス、中国の出したポツダム宣言は、戦争終結の条件を示したものだった…

戦争論 1

ルソーが戦争論を書いていたのを知らなかった。加藤陽子(東大教授)の著書「それでも日本人は『戦争』を選んだ」(朝日出版社)で、加藤はこんなことを書いている。 「戦争のもたらす根源的な問題は、ルソーが考えた問題でした。ルソーの論文は日本語訳がな…

一つの歌

2002年、加美中学で教えた武田君が、ぼくが中国武漢大学に赴任するときに一枚のCDを贈ってくれた。それは当時、彼がファンで追っかけをしていた長渕剛の歌う「静かなるアフガン」のCDだった。 ぼくはそのCDを武漢大学日本語科の授業で使った。CDデッキは町の…