世界にまたがる二人

何年ぶりだろう、カズヒロ君と会った。大工のケイタ君が車で連れてきた。 パプアニューギニアからはるばるとやってきたカズヒロ君、裸足にサンダルを引っかけ、日に焼けた顔、体は前後も横幅も、たくましくなっている。二人は、ムラの学園の同期生、今年50歳…

お稲荷さん

毎朝の散歩の途中、小さな若宮稲荷に立ち寄る。 老犬ランは、とぼとぼ歩き、 ぼくはストックをつきつき、 舗装路から野道に入り、若宮稲荷へ、 野道を折れ曲がり、折れ曲がり。 ランは草の道に入ると、元気になる。 ランは、草と土が好き。 菜の花があると、…

好きな道 愛する道

「この道、好きだなあ」と、小学生の時思っていた道がある。学校からの帰り道、旧街道を通って帰るか、カルタ池で旧街道からそれて野道を帰るか、そのときの気分で決めていた。旧街道を帰れば少し早く帰れる。でも、ぼくの好きなのは野道の裏道だった。道幅…

そこにも人が歩んだ道がある

日曜日は朝から地域の市民運動会があり、ぼくは居住地区の子ども会育成会の役であったから、地元の小学校へ出かけた。市民運動会は、子どもから大人まで、いろいろコンビを組んで出場し、地区対抗という形で競走する。好天気に恵まれ、競技は和気あいあいで…

 野の道

この道は、心の和む道です。 人と生き物だけが歩む、歩むものの足に柔らかな、 和草(にこぐさ)の萌えいづる小道です。 野の人の手が入り、整えられた野の道、草のじゅうたん、 この道は、野の人のこころです。 長い長い人の歴史が感じられる道です。 ウグ…

 般若心経

大和の国の金剛山麓に住んでいた。 山に沿って旧高野街道がうねうねと村と田畑、林をぬうように続き、私の住んでいた集落は旧村のはずれにあって戸数は14戸だった。 秋の初めに地蔵盆があった。 隣の上田さん宅の敷地角をへこませて地蔵菩薩がまつられてお…

 一つの道しか歩けない

ふけたもんだ、新しい免許証の写真を見て思う。 車の免許証の更新手続きをして、警察で新しいのを受け取った。 これまでのはその場でパンチを入れられ、穴あきになったのを戻された。 「処分してください。」 新しい免許証の写真は、バリカンで刈った頭がつ…

 安曇野の道の名前

「日本サラダ街道」という名前の道がある。安曇野からリンゴ園の中を通って山形村、朝日村に至る道だ。 目的地へ最短距離で行く道ではないから、左折したり右折したり、分岐点に「日本サラダ街道」と書かれた小さな標識があるのだが、どこが出発点でどこまで…

春 よみがえる原風景の村

春になった。 空気が変わった。 まだ冷たさは残っていても、ほの甘さを含んだ澄んだ空気になった。 この空気、 中甸(チョンディエン)の村がなつかしい。 異郷の地でありながら、血の中に残る故郷、 心の故郷、 原風景が生き残っていた。 中国雲南省の奥地…

巡礼の道  歩く文化

病院の5階の端に、患者やお見舞いに来た人たちが面会したり談話したりする部屋がある。 その部屋の本箱に、漫画や週刊誌などが十数冊置いてあった。 積み上げられた本のいちばん下に、写真集のような大版の分厚い本があり、これはいったい何だろうと、引っ…