自然

滅びゆく野の自然

今朝起きたら雪がかなり積もっていた。暦は三月に入った。 もう春だ。春の歌が頭に浮かぶ。まだ風は冷たいし、野のベンチでしばらく歌えない。温かくなったら、ベンチに座って、アルプスを眺めながら歌を歌おう。 明治期から学校で教わり、子どもたちに歌い…

小さな命

ここ数日の霜でトマト、ナス、黒豆は、緑の色を失ってしまい、枯れ色になった。 大根、小松菜、野沢菜、ほうれんそうは平気。しゃきっとした緑色を保っている。今晩は大根料理だ。 小さな生き物は、不思議な生命力だ。一ミリほどの、メマトイのようなトビム…

中野孝次の思想

「理想的社会など、ついに実現しないかもしれない。科学の進歩と人智の限りない発展が信じられていた19世紀後半にエンゲルスが夢想したような楽観的未来像は、われわれはもう信じることはできない。科学がその発展の極限に、世界を20回も破滅させるに足る兵…

初ツバメ

快晴で暖かい数日前、初ツバメを見た。朝の散歩で、満開の道祖神桜を見ての帰り、ツバメは僕の横で身をひるがえした。たったの一羽、周囲を見回しても他にツバメの姿はない。よくぞここまで来たなあ、大丈夫かなあ、夜はまだ氷点に近くなるのに、餌になる虫…

小さな命

昼ごろから雪がチラつき出し、次第に風も出て、吹雪になってきた。 こたつに足を突っ込んで本を読んでいたら、 背後のガラス戸に、どかんと音がした。何だ? 振り向くと、キジバトがバラの木の根方に落ちている. あー、ぶつかったのか、 ハトは、吹雪をさけ…

梅雨明け

野の二号ベンチの横に植えたムクゲの木に、一輪、白花がパッチリ咲いていた。まだ枝も少ししか伸びていない、これから成長する樹。そこに花が付いている喜び。たったの一輪が、なんともかわいい。 庭に植えたヒメシャラも白花を咲かせている。別名「夏ツバキ…

雷鳥計画は無理

中央アルプスの木曽駒ヶ岳にライチョウを復活させようという環境省の計画が動いている。 昔は木曽駒にもライチョウがいた。それがいなくなり、最近、北アルプスの乗鞍岳から成鳥を移住させたり、卵を持っていったり、復活計画をいろいろやっていて、前回は、…

黒豆とモズ

黒豆の芽が90パーセント出て、ほぼ順調な畝と、ほんのわずかしか発芽しなかったところと、この違いはどうしてだろう。 畝によって、種まきの日が異なる。5月の末に蒔いたところは、成績が良く、いちばん後に蒔いたところは、わずかしか発芽していない。 …

金星

老いたランはトイレが近くなった。トイレに行きたくなると、「ワン」と太い声で吠えて人を呼ぶ。その回数が増えた。 午後八時ごろ、ランが呼んだ。 ランを連れて外に出た。冬耕(とうこう)された田んぼと、まだ三寸ぐらいにしか伸びていない麦畑の中の道を…

生命の不思議

道端の霜柱は、丈が5センチほどもある。畑に行くと、玉ねぎの苗は、かなりよく育っていて、霜柱によって土から掘り出されるという苗は、1月の土抑えで防ぐことができている。ニンニクも大丈夫だ。 何も作っていない畝は秋に黒豆を収穫した畝だ。その天地返…

予兆

周囲に広がる農地は、補助整備の終わったところだが、ところどころ何も植えていない、草ぼうぼうの畑もある。 今朝、何も植えず、水だけ張った一枚の田んぼを見た。水を張るということは草の繁茂を防ぐためでもある。草を抑えるにしても、水が浅いから、細い…

ヒナを発見してまた失敗

モズのヒナは、その後姿が見えなかった。逃げ込んだ菜花の茂みを調べてみても、姿はなかった。もう生きてはいないかもしれん。餌を食べないで、どこかに潜んでいても、この異常な暑さのなかだ。 そして今朝のこと。 工房の西側に材木置き場として庇を出して…

キャベツ畑

去年の秋にたくさんできたキャベツの苗が、無事に越冬し、まだ虫がつかない春先に一本ずつ独立させて、球を結ぶように育ててきたところ、ぐんぐん大きくなった。四月にモンシロチョウが舞いだし、キャベツはチョウの大好物だから、卵を産む前に防ごうと、畝…

生命のコミュニケーション

今朝、カッコーの初鳴きを聴く。 遠くから聞えてくる、カッコー。 聞き逃すことのないたったの二音、カッコー。 ナツキタ、カッコー、ナツキタ、カッコー。 クロウタドリのように複雑なメロディを歌う鳥もいて、 簡単な声もいて、 鳥たちもその種族の歌を持…

 高村薫「土の記」より 2

もう一箇所、次の文章を取り上げておこう。高村薫「土の記」下巻より。 この小説に登場する農の記は驚くほど詳細だ。実際に作者の体験したことがベースにあるのだろうか。 東日本大震災のとき、大地は。 <新月の前の糸のように細い月は夜明け前に上り、日没…

 地震のとき生物たちは?<高村薫の小説「土の記」>

高村薫の小説「土の記」を読んだ。舞台は奈良県の大宇陀、描写の緻密で豊かな表現に感嘆する。 下巻のなかに、東日本大震災のときのカエルの話が出てくる。次のような描写だ。 <昨夜は、両方の耳の外耳道にシュレーゲルアオガエルが潜り込んできた。ヒロロ…

共存共生

畑を歩いて、今日は何を持っていけるかな、キュウリは二本、ピーマン一個、シシトウは二つかみ、ササゲ二つかみ、これだけあれば今日と明日の分になるだろう。ゴーヤは明日、もいで持っていこう。ナスはつやつやナス色に光っている。ピーマンもぴかぴか緑色…

 ウグイスとアゲハ蝶

我が家でウグイスの初音を聴くのは初めてだった。日曜日、朝食の時に、それらしき声が聞えた。まさかここでウグイスが鳴くはずがない。ここにきて12年が経つが、家でウグイスを聴くなんて一度もなかった。散歩して山手の方へ歩いた時には、数回聴いたこと…

 春

四月に入った枯れ色の庭に、 スイセンがにょきにょき葉を伸ばし、つぼみを出し、 黄色い花がいくつか咲き始め、 毎年、ほんまにこの数十本のスイセンの、 しゃきっとした、みなぎる謹厳なやさしさに、 ほれぼれ、ほれぼれして、 敬愛の念をおぼえて、敬意を…

冬のミツバチ

息子たち、孫たちが帰っていって、静かさが戻った。部屋の中の物音がよく聞こえる。 「何か飛んでいるよ」 と家内が言う。 「ほら、カーテンにとまった、あれえ、蜜蜂やわ」 プーンとかすかな羽音を立てている。 「どこから入ってきたん?」 外は毎朝零下5…

 小さき命

台風が過ぎた今朝は青空が広がっている。久しぶりに常念山脈の稜線が見えた。 昨夜、風のいちばん強かった時は、午後10時頃だった。ごうごうと吹き荒れ、家がかすかに揺れた。南風が強く、ドーンドーンと家の外壁に打ち付ける何かの音が聞こえた。風の息切…

 孫たちとキャンプ

今年もキャンプに行きたいという。どこかいいところがないかと探した。去年は、近くの烏川渓谷のキャンプ場に行った。小学生と幼稚園の孫たちを含めた二人の息子の家族7人。テントを張るサイトが区割りされていて、テントが林立していた。キャンプ施設は整…

 雷雨激し

午後、雷鳴とどろき、篠突く雨となった。昼過ぎまで蒸し暑い日照りだったが、三時ごろにわかに雲がわき出た。それでも、 「いや、これぐらいじゃ、雨は大丈夫。あの雲は松川村か池田町辺りだな」 と高をくくっていたところが、ぽつりぽつりと降り出したかと…

 ハチ

ハチさんは友だち、とか言っていたら、ここ二日、草取りをしていて刺された。コアシナガバチで、ハチの体も巣も小さく、ぼくが顔を数十センチほど巣に近づけても、巣の上で巣作りと巣の防御をしているハチたちは攻撃してこない。コアシナガバチは、普通よく…

 今年の虫、小鳥、その他生物

安曇野に越してきたとき、「蚊がいない」といううれしい発見があった。中古の家の庭は数本の木が植わっていたが、草がほとんど生えていなかった。周囲は水田とタマネギ畑、蚊の発生するところがない。だから蚊がいない。それから11年たって庭は、草も木も盛…

 虫、微生物のおかげで生きている

ユスリカが数十匹かたまって飛んでいる。飛んでいると言っても移動する飛行ではない。同じところを集団で上下している。数日前まで夜は氷点下の寒さだったのに、いつのまにか現れて集団の舞踊をくりひろげる。この小さな生命の不思議。ユスリカは蚊とよく似…

 内山節の「自然の奥の神々」

白樺は、黄色く色付き、ヤマボウシとハナミズキは紅く色付いた。里山のカラマツも黄金色になりつつある。 子スズメたちの初めての冬の宿は、白バラとモッコウバラが織りこんだ茂みだ。毎朝毎夕、スズメたちは群れ、茂みの枝に止まって羽づくろいをし仲間たち…

 柳生博と柳生信吾 八ヶ岳の物語

柳生真吾さんがもう半年前に、亡くなっておられたんだ。家内は以前にそのことをぼくに伝えたというのだが、ぼくの頭に入っていなかった。たぶんそれを妻から聞いた時、考え事をしていて上の空だったのだろう。 俳優の柳生博さんの長男で園芸家の柳生真吾さん…

 芽を出すものたち

種をまいてから、毎日のように水やりしては、芽はまだかとのぞいていたが、それらしきものは見えなかった。アスパラガスは、そんなに発芽が難しいのかな、ひょっとしたら種がよくなかったのか、などと原因をいろいろ考えていた。種をまいてから三週間以上が…

小さな生き物たち

7日は立冬、すでに霜も降り、山は雪化粧をした。ついつい後手後手に回ってしまう畑の作業、黒大豆の畑に行ってみたらすっかり枯れて、2割ほどのさやがはじけ、豆が飛び出して地面に落ちている。おそかりし由良の助、もっと早く収穫すべきだった。昨日と今…