2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

風景

フランスの作家、プルーストは、「失われた時を求めて」という大作を書いた。母の死が転機になって構想された小説で、9歳から苦しめられた喘息の病を押して死の数日前まで執筆をつづけた。 この小説の描写は実に詳細を極め、文章から匂い立つものがある。こ…

人間

どういうわけか、ひょいと「晩祷」という曲のテープがあったことを思い出した。もっぱらCDばかり聴き、以前の録音テープをラジカセに入れて聴くということは絶えてなくなったから、たくさんの音楽テープはほこりをかぶって眠っている。あのなかに「晩祷」が…

しもやけ

小学生のころ、毎年冬になるとしもやけになった。かゆくてたまらない。足の指も手の指も、みみたぶまでも赤くはれあがり、ひどい時は紫色になって皮膚が破れた。あかぎれになることもあった。皮膚に糸状の割れ目ができる。水に触ることが多いとあかぎれがで…

子どもの約束

) 室生犀星の詩に、「明日」という詩がある。 明日 明日もまた遊ぼう! 時間をまちがへずに来て遊ぼう! 子供は夕方になってさう言って別れた。 わたしは遊び場所へ行って見たが いい草のかをりもしなければ 楽しさうには見えないところだ。 むしろ寒い風が…

鳩山さんへの手紙

沖縄、嘉手納基地の騒音で、年に10人が死亡している、という試算を、北海道大学の松井教授が発表した。(朝日新聞 3・14) 米軍基地の騒音により、周辺住民約1万7千人が睡眠を妨げられ、10人が心臓疾患で死亡している。 松井教授は、世界保健機関の…

手相

ベトナム人の実習生に日本語を教える活動を、公民館で続けている。今マンツーマンで教えているズック君は、日本語検定試験で3級をとり、その後2級を目指しているが、昨年暮れの試験では6点足りず、不合格になった。彼の会社は残業の多い仕事で、勉強時間…

鶴見俊輔伝を読んだ <2>

1995年、「女性のためのアジア平和国民基金」が発足し、鶴見俊輔も「呼びかけ人」に加わった。当時、このことがいろいろな反響を呼んだ。 この基金は、先の戦争中、日本軍の従軍慰安婦とされたアジア諸国の女性たちに対して、民間から募った「償い金」ととも…

鶴見俊輔伝を読んだ

鶴見俊輔伝(黒川創)を読んだ。500ページにもなる力作の伝記だった。昨年11月に出版されている。 伝記の終わりの方に、2015年に亡くなった俊輔の最期のてんまつと、学者で姉の、鶴見和子の散骨のことが記されている。鶴見和子の死去は2006年7月、満88歳…

保山耕一さんのこころの映像

昨日、テレビの「こころの時代」という一時間番組で、映像作家・保山耕一さんのドキュメンタリーを見た。奈良の春日大社周辺を映像に撮る保山さんの仕事の記録、初めは軽く見ていたが、次第に引き込まれ、映像の美しさの奥に宿る魂のようなものを感じ、それ…