2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

チェルノブイリへ行った若者たち

八年前、夫婦でオーストリアのチロル地方の旅に出た。飛行機の窮屈なエコノミー座席の隣は日本の若者だった。 ぼくは声をかけた。 「どこへ行くんですか」 「チェルノブイリです」 「チェルノブイリ? へえーっ、あの原発の爆発したところ?」 「はい、これ…

生き物たち

クリスマスローズ 庭の南側、ヒノキの仲間の木の茂みに、鳩が朝から何かを運んでいる。茂みに飛び込んで、また出て何かを取りに行く。どうも巣作りをしているようだ。 庭の北側、アカカナメの樹のなかに、毎年モズがすをつくる。今年も巣作りしているようだ…

手塚治虫の遺言

1996年出版の、手塚治虫著「ガラスの地球を救え」は、彼の遺言でもあった。 ☆ ☆ ☆ 「大宇宙の暗黒の中に、青く輝く水の惑星、それが人類のふるさと、地球なのだ。水と光と緑の大地に育まれて、数知れぬ生き物が生命を輝かせてきた地球。 46億年というとてつ…

森下二郎の「戦時下日誌」

かつて文芸春秋社が、「人生の本」という全集を出版している。その第10巻は「心の記録」。そこに森下二郎の、「戦時下日誌」が収録されていた。 森下二郎は、信州上伊那出身で、松本高女の校長を務めていた。内村鑑三に私淑し、敬虔なクリスチャンだった。 …

クレムリンの宮殿のなかで

爆撃によって破壊された建物、 着の身着のまま故郷を脱出する人々。 残虐な生き物の歴史、 山ほど教訓があるのに、いまだ懲りることがない。 モスクワ・クレムリンは絶大な権力者の宮殿、二つの大聖堂と鐘楼が建ち、イワン大帝のときの2キロメートル以上の…

よみがえる帝国の記憶

今朝の朝日新聞「オピニオン&フォーラム」のインタビュー記事に注目。 中国の歴史学者、葛兆光(コーチャオコワン)さんの「よみがえる帝国の記憶」論。 中国にこういう人がいた。 ☆ ☆ ☆ 「『ウクライナはロシアの歴史の一部だ」と語り、プーチンはウクライ…

フキノトウ

朝夕のウォーキングで出会う柴犬のワンちゃん、名はカイト。 「カイト―、カイト―」 ぼくは、カイトの体をなでまくる。 カイトを連れたおばさん、 「私にはひ孫がいるんよ。二歳なんよ」 「え? ほんとう?」 考えてみれば、おばさんが23歳の時に女の子を生ん…

もう一度あの詩を

二度まで自ら命を絶とうとした彼に、何かいい読み物はないかと、本棚をさがした。 数冊本を引き出したが、それが適当かどうかわからない。通信制高校で教えた彼、ときどき電話をしてくる。本を読んでいるかと訊くと、あまり本を読んでいないという。 本棚か…

ロシア、ポーランド

私がこの10年かけて書き上げた自伝的小説がもうすぐ本になる。「本の泉社」から上下二巻。何回も膨大なページのゲラ刷りをおくってもらい、修正、校正、文章を練ってきた。 本のタイトルは「夕映えのなかに」。 このなかに1965年のヨーロッパからシルクロー…

「脱走・1950年ザバイカルの徒刑場で」

石原吉郎は昭和14年応召。中国に送られ、昭和20年の敗戦によって侵攻してきたソ連軍の捕虜となった。抑留された兵たちは、ソビエトのアルマアタに送られ、重労働25年の刑を受けて、バイカル湖西の密林地帯で刑に服した。そして昭和25年、ハバロフスクに移動…

ウクライナに平和を

私はこの8年かけて書いてきた長編の小説を、いよいよ「本の泉社」から出版することになった。題は「夕映えのなかに」。 最初タイトルは「魂呼ばふ山河」にしていたが、シューベルト作曲、カールラッペ作詞の、神の恩寵を歌うドイツ歌曲のタイトル「夕映えの…

ウクライナ人

僕の中学生時代は、戦後の教員不足で、社会科、英語、理科、音楽、体育の先生がいなかった。 僕の担任の滝野カツ先生はドラムカンというあだ名を生徒から付けられた、体格のいいお母さん先生だった。滝野先生は家庭科の先生だったが、時々ピンチヒッターで、…

戦争論

1999年に、吉本隆明は「私の戦争論」を著した。 吉本は、「戦争はダメだ」ということと、「戦争自体がダメだ」とは異なると言った。右翼も左翼も、「戦争自体がダメだ」という観点を持ち得ていないと。 「第三権力」という存在は必要だ。それは戦争している…

喜納昌吉の言葉

片づけをしていたら、林業家の滝本さんが送ってくれたコピーが出てきた。 沖縄コザ出身の音楽家、喜納昌吉さんの、琉球新報掲載文のコピー。 喜納昌吉は「花」を歌った平和活動家でもあった。 彼が二十年ほど前に書いた文章を読みかえしてみた。今の時代、新…

何が起こるか分からない

何が起こるか分からない。 国のおいても、社会においても、自分においても、 何が起こるか分からない。 「不変」なんて存在しない。 世界は常に移り変わっている。 社会は常に変化している。 人は老い、やがて生を終える。 自分も同じ。 不思議な生き物がい…

ウクライナのパラリンピック選手

両足.を足首の上で切断したスキー選手が、スキーを付けて、滑っている写真が新聞に出ていた。北京パラリンピックが始まる。ウクライナ選手も参加するという。 そのウクライナ選手団のニュース。 ロシア軍の侵攻が熾烈だ。都市は破壊され、死者負傷者も多数出…

小さなケーキと一杯のコーヒー

もう何年前になるか。スペインのバルセロナへ旅した。目的は、サグラダ・ファミリア教会だった。 天 を突き刺す教会はまだ建設中で、少し下り坂になっている道路の向こうにその塔が見えていた。道の中央に並木が緑の葉を茂らせている。ベンチが置いてある。 …