教師になる人へ

 生き残って教師となった特攻隊員

「福島の田舎の教師となり、宿直室に寝泊りする生活を重ねて、ある年、わたしは十万ページの本を読みきる。戦争が作った青春の空白を、そうすれば埋めることができるかと思って、本にしがみついていたのだった。手当たり次第に読みとばし、そのときはバイブ…

 悔恨、慙愧、自責 2 <岡部伊都子と槙枝元文>

2008年に亡くなった随筆家の岡部伊都子は、一生十字架を背負って生きた人でした。婚約者が出征の決まった時、「自分はこの戦争はまちがっていると思う。天皇陛下のために死ぬのはいやだ。君のためならよろこんで死ぬけれども」と話したといいます。軍国…

 悔恨、慙愧、自責 1

人間には、過去を振り返って、自らのおかした過ちを深く悔い、自分をうちたたく思いに苦しむことがある。 それが人の命にかかわること、人の人生を狂わせること、精神を傷つけることであったときは、ぎりぎりと心を切り刻みさいなむ悔恨の念を一生背負うこと…

  労をねぎらう

「労をねぎらう」という言葉があります。広辞苑を引くと、「ほねおりを慰め、労を謝する」とあります。 よくやってくれましたね、おつかれさまでした、ありがとう、という気持ちを表します。 子どものころ、母の実家のおばあちゃんの家に行ったとき、叔父が…

 教師と教師、教師と子どもの人間関係

教師になって初めて教壇に立ったときのこと。 担任するクラスにS君がいた。 Sは口から生まれてきたような子で、思ったこと感じたことをすぐに口に出す。 授業中も、ぼくがしゃべっている最中であろうとなかろうと、お構いなしに発言する。 いきなり椅子か…

 自己紹介/家庭訪問/教師仲間をつくる

子どもを知る 子どもと仲良くなる S先生は、5月になって学校へ来なくなった。 学校へは行けない、行きたくない、不適応が激しくて気力が湧かない、 もう学校を辞めたいということであった。 4月に就職して出勤し始めて1ヶ月、 授業もクラスも動き始めた…

  席替え

今日の楽しみ 日曜日の朝、NHK歌壇に入選していた次の歌が、 印象に残った。 前髪をちょっと濡らし 「行って来ます」 風薫る五月 席替えの朝 母親の作だろう。 我が子が登校していく。 思春期に入りつつある我が子は、 前髪をちょっと濡らして、元気よく…

  一人の先生の影響

佐藤藤三郎と無着成恭 佐藤藤三郎さんは、2000年に「山びこの村 ――だから私は農をやめない」(ダイヤモンド社)を出版している。 藤三郎さんにはお目にかかったことはないが、藤三郎さんの中学時代の無着成恭先生には会ったことがある。 豪放磊落、体もでか…

  (10)子どもに「お話」を

読み聞かせ・口演童話・お話 国際フレンドの会の上田さんが、一冊の本をプレゼントしてくださった。 郷土に伝わる昔話・伝説を集めたもので、 21編のお話が載っている。 19年前、 地元の公民館で開かれていたストーリーテリング教室に参加して語りを学ん…

 (9)<魂の泉をひらく先駆者>

魂の泉をひらく先駆者 予言者は、時代を見ぬく賢者なのでしょうか。 学識をもって未来を洞察する人の予言は、仮説として提出されます。 ソ連の崩壊を、それが起こる10年前に予言した学者がいました。 ソ連の実態を分析し、歴史から割り出した仮説でしたが…

 (8)<子どもの生活を知る>

授業を成立させるには、子どもを知る 谷口先生が授業に行くとき、階段の踊り場に固まっていた数人に、 「教室に入らんか」と声をかけた。 たむろしていた生徒たちは応えた。 「おれらに教室に入れちゅうのは、酒飲みに酒飲むなちゅうのと同じことや。 飲みた…

(7)<清掃活動をクラスの核に>

掃除(清掃)で変わる 一年間これを先生が先頭に立って本気で続けると、子どもは変わります。 クラスが変わります。 教室やトイレ、環境が変わります。 毎日の生活で、欠かすことのできない活動が掃除です。 これは無限の教育の場です。 私はこの活動を、最…

 (6)<苦闘の中で 自己を解放する>

山に救われたあのとき 理想を掲げた学校づくりのプロセスは困難を極めた。 教師たちは疲弊していた。 額に鉛のかたまりがぶらさがっているような、うつうつとした気分がのしかかり、 希望が次第に遠のいていくような暗い毎日だった。 そうだ、行こう。 仕事…

 (5)<支えあう友をもつべし>

親しい友が影で支えてくれた 同じ年の新任教師同士は、互いに支えあう最も親しい間柄になる。 新入生徒を受け入れて、三年間受け持って卒業式で送り出していくこの三年間を同期の友と体験することは、おそらく教師人生の原点となるだろう。 新任一年目で壁に…

 (4)<好きと嫌い>

先生なんか嫌い 「先生なんか大嫌い」 感情をぶつけてくる子がいる。 ぶつけないで、そっぽをむいてしまうこともある。 新任の先生はたじろいでしまう。自信を失ってしまったりもする。 試練である。 これをどう受け止めたらいいだろう。 「私もあんたなんか…

 (3)<すぐれた実践に学ぶ>

戦後の教育史と貴重な実践研究に学んでほしい このごろNHKでは、「課外授業、ようこそ先輩」とか「わくわく授業」とか、 授業シリーズを報道している。 見ていて楽しい。 現役教師にとって、自分の限界を超えるために役立つ映像だと思う。 自分の経験だけ…

 (2)<得意技をもつこと>

得意技、好きなものを活用しよう 得意技をもつことをすすめる。 得意技がなければ、好きなもの、熱中するものでもよい。 自分のもっている得意技を隠していないで、子どもの前でやってみせる。 それは自分を知ってもらい、子どもとの関係を開いたものにして…

 (1)<職場の影響は大きい>   

職場に慣れ、惰性におちいるな 君は職員室に席をもらって、そこに座る。 ああ、自分もこの人たちの同僚になったんだなとつくづく思うだろう。 やがて、いろんな先輩教師たちの特徴や職場の気風がわかってくる。 そしていろんな教師の影響を受けはじめる。 そ…

(0)私が教師になった日

教えるとは、希望を心にいだくこと 教員として赴任するまでの三月、 ぼくは早月尾根から剣岳に登る大学山岳部の合宿に参加していた。 春の雪山は、紫外線が強烈で、 赤黒く焼けた皮膚がぼろぼろとむけてくる。 下山して家に帰ってきたら、 大阪市立淀川中学…