2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

 街路樹と樹林の価値<2>

1894年(明治27)の夏、ウォルター・ウェストンは、中部日本のアルプス地帯を北から南へ徒歩で縦断した。糸魚川から松本までは、アルプスの東麓を歩き、安曇野に入った。安曇野を通過するとき、次のような記録を残している。 「土曜日(七月二十八日)、信州…

 イスラム国と日本

湯川さんは命を奪われたらしい。後藤さんの命は風前の灯にある。 救いたい、助かってほしい。 「テロ行為には屈しない。断固として戦う。全力を挙げて救出する」 その声の空虚さ。 めぐりきたれる歴史の糸はもつれ、 解決の糸口は泥沼。 歴史の歯車は国家の…

 街路樹と樹林の価値

仙台を出て東京の明治女学校で学び、安曇野の相馬愛蔵のもとに嫁いできた相馬黒光の随筆「穂高高原」には、安曇野の空に突き刺さるような屋敷林の針葉樹のことが少し皮肉な思いを込めて書かれている。安曇野の屋敷林は各家の自己主張であり、アイデンティテ…

 「ルリユールおじさん」という絵本

「ルリユールおじさん」という絵本がある。(いせ ひでこ作 理論社) 一人の少女が何度も何度も読んだたいせつな植物図鑑がぼろぼろになり、ページがばらばらになった。どうしたらいいだろう。少女は図鑑をなおしてくれる製本屋を探して歩き、パリの路地裏で…

 山尾三省「びろう葉帽子の下で」<2>

いろりを焚く 家の中にいろりがあると いつのまにか いろりが家の中心になる いろりの火が燃えていると いつのまにか 家の中に無私の暖かさが広がり 自然の暖かさが広がる 家の中にいろりがあると いつのまにか いろりが家の中心になる いろりの火が 静かに…

 山尾三省「びろう葉帽子の下で」

山尾三省さんが亡くなって13年余になる。三省さんは、1960年代、社会変革を志してコミューン活動をはじめ、1973年には、インド、ネパールへ巡礼の旅に出た。1977年、屋久島の廃村に一家で移住。田畑を耕し、子どもを育て詩やエッセイを執筆した。屋久島で三…

新美南吉の二つの詩 

写真:チロルの村 1932年(昭和7)、19歳で童話「ごんぎつね」を書いた新美南吉は詩も作っていた。詩は、南吉が世を去ってから見出され、詩集として刊行された。24歳、小学校代用教員、25歳、高等女学校の教員を勤めた。そのころ作った詩は、没後に「墓碑銘…

 「在日」の歴史を知る<2>

韓国を植民地に併合した1910年、石川啄木は、 地図の上 朝鮮国にくろぐろと 墨をぬりつつ 秋風を聴く と詠んだ。韓国併合は8月、その2か月前に幸徳秋水ら無政府主義者が一斉に逮捕される大逆事件が起こっている。天皇暗殺を企てたという無実の罪で、逮捕され…

 「在日」の歴史を知る

読売新聞社が1999年に出版した「20世紀 戦争編 日本の戦争」に、二人の韓国人、金成壽さんと李圭哲さんから取材した記事が載っている。 「朝鮮統治『内鮮一体』掲げ皇民化」の項にその記事がある。日本が朝鮮を植民地にしたのは1910年。金成壽さんと李圭哲さ…

 人間社会を崩していくもの

14日の夜、NHKテレビの「クローズアップ現代」が「ヘイトスピーチ問題」を取り上げた。この番組でこのテーマを取り上げるのはこれで2回目になる。今回はかなりなまなましい現場の映像を報道し、この問題を掘り下げようとした。大阪市鶴橋、在日の人々がたく…

 兵士の短歌に詠われた「慰安婦」

従軍慰安婦は短歌にも詠われていた。「昭和万葉集」(講談社刊)をひもとき、以前このブログに書いたあの歌をもう一度読む。 体験したことをつぶさに兵士たちは短歌に詠んだ。アララギ派の浅見幸三の短歌は、「昭和万葉集」巻四に七首収められている。 明空…

 北星学園大学への「言論テロ」と慰安婦問題

「このころから、北星学園大学にも、いやがらせ電話や、『植村をやめさせろ』というメールが送られてくるようになった。五月末には脅迫状が送られてくるようになってきた。 『あの朝日新聞記者=捏造朝日記者の植村隆を講師として雇っているそうだな。売国奴…

 山を愛する人に贈る <中西悟堂の山旅の記録・昭和18年>

悟堂さんは1943年(昭和18)も北アルプスに登った。 1943年(昭和18)の戦況は、 2月 日本軍、ガダルカナル島から撤退開始。 4月 山本五十六連合艦隊司令長官戦死。 5月 アッツ島守備隊玉砕。 10月 学徒出陣、神宮外苑で学徒壮行大会。 11月 マキンとタラワ…

 山を愛する人に贈る <中西梧堂の山旅の記録・昭和17年>

「ケルン」廃刊して3年後、太平洋戦争が起こった。中国に加えて東南アジア、南太平洋が戦場となった。男たちは次々と戦地へ向かった。 そのころ、北アルプスはどんな状況だったか。1942年(昭和17)と43年の山の様子を中西悟堂が書いている。そのとき、中西…

 山を愛する人に贈る <山岳雑誌「ケルン」終刊>

山岳雑誌「ケルン」は、1938年5月号をもって終刊となった。5年間で60号が発刊された。日中戦争が全面展開に入るのは1937年7月7日である。僕が生まれたのはその12月だった。 終刊号の最後に、たくさんの人の声が掲載されている。そのなかからいくつかの声を聞…

 山を愛する人に贈る <山岳雑誌「ケルン」創刊>

1931年、「満州事変」勃発、日本軍の中国侵略が本格化する。政府は不拡大方針をとったが、現地日本軍が独走し、1932年に「満州国」を「建国」した。翌33年、国際連盟からの撤兵要求を拒否して日本は国際連盟を脱退する。そうして1937年、盧溝橋事件を契機に…

 孫たちとラン

二人の息子たちが関東と関西から、正月、それぞれ子どもたちを連れて、ジイジとバアバそして犬のランの家に帰ってきた。ウイちゃんは2歳、アーちゃんとホノちゃんは今年の4月から小学校、3人とも女の子。セイちゃんは男の子、今年3年生になる。セイちゃ…

 私の年賀状

昨夏6月から7月、オーストリアのチロルへ妻と気ままな旅に出、脱原発をやりとげ、他国の原発による電気は輸入しないという徹底した政策をとるオーストリアの、自然・環境・文化・芸術薫る街や村、山を歩いて日本という国をつくづく考え、 8月、若い人たちが…

 2015年元日

昨日雪かきした道に、 今朝また雪が軽く降り積もっていた。 孫たち3人にランを連れて、散歩に出る。 道はかりかりに凍結し、上を雪がおおっている。 車のわだちが二本、朝から車が一台通っていったらしい。 元旦は車の姿がない。 子どもたちが滑って転倒す…