森の国の旅

 人びとの中の「古層」

ドイツを指すジャーマン・GERMANをドイツ語で発音するとゲルマン。 原始ゲルマン人は土地共有性を実施し、自給自足的村落を形成したそうだ。霊魂崇拝、自然崇拝が行なわれ、彼らの神は森の中に住んでいた。だから今もドイツ人は森の民。霊魂崇拝、自然崇拝、…

日本の景観美を想う

最近見た映像だが、木曽路を馬篭から妻籠まで歩いて旅籠(はたご)に泊った外国人たちが、その美を「こここそが歴史的日本の美であり、日本一だ」とほめ讃えていた。ぼくが初めて妻籠を訪れたのは、人の気の絶えた1970年一月末だった。志賀高原に行き、帰り…

 動物園へ行った

朝からトラムに乗って家内と二人動物園へ出かけた。どこの停留場で降りたらいいか、乗り場にいた市民に聞いて路面電車に乗った。駅には駅名が書いてある。それを見逃さないようにドア近くに立つ。 「この駅だ」 駅名を見て、近くにいた若者に確かめると、ZOO…

ストリートミュージシャン

何人かの辻音楽師に出会った。 今の呼び名はストリートミュージシャン、 街かどに立って曲を演奏する。 フランクフルトの街で、 老いたバイオリン弾きに出会った。 四角い小さなスピーカーを路上に置いて、 スピーカーから流れるオーケストラの音色に合わせ…

幼稚園、学校の教育と自然

フランクフルトの住宅街を歩いていると、大きな樹が葉を茂らせているところがあった。足を止めて観察する。ほう、幼稚園かあ。興味深々でのぞいた。したたる緑のなか木漏れ日が映っている。目の前に遊具がある。子どもの大好きな、冒険心をくすぐる遊具。ア…

子どもの休暇、大人の休暇

夏休み、冬休みは、子どもにとってもっとも楽しいときだ。ぼくの子ども時代は野性的文化時代と言えるような日々で、家の手伝いもあるが、何より近所の仲間とあるいはクラスの友と思う存分遊ぶ、遊びを創造する、冒険、探検の日々だった。自由を謳歌し、自分…

農業政策とエネルギー政策

宿は、小さな質素なホテルだった。朝食で特においしいと思ったのは、パン、ヨーグルト、チーズ、ハム。堅い歯ごたえのあるパンをちぎりながら食べる幸せ、幾種類もあるチーズとハムも食欲をそそった。ヨーグルトと温かいコーヒーのおかわりができることは、…

古城の街からサイクリングに行く

ICE(新幹線)に乗って、途中で乗り換え、古い中世の地方城壁都市に行った。駅から展望すると、小高い丘の上に街があり、教会の尖った塔がいくつか空に伸びている。街の周囲は城壁が取り囲む。千年の時を経た歴史遺産都市だ。 駅から城内まで30分ばかりだけ…

歩く文化と街道の国

未知への旅は、先入観・固定観念をどんでん返しにする。元来旅というものはそういうものだろう。 敗戦後ヨーロッパ随一の経済発展をとげた工業国という頭の中のこの国の姿と、今目の前に広がる事実とは、まったく違った。そこは森の国、古い歴史を刻む街道の…

アップルワインの酒場

日曜日の住宅街は、ことのほか静かだ。マイカーは歩道にくっつくように一列に整然と駐車している。そのなかにおいしい田舎料理が食べられる店があるらしい。リンゴワインにソーセージがおいしい店は、どこかいな。店の看板というものはなく、小さな標識があ…

 森の国の春

SPRING、 北の国の 春、五月、 長い冬の眠りから覚めて、 大地から湧きあがる泉(SPRING)、 バネ(SPRING)のごとく跳ねあがり、 木々は芽吹き、花咲く。 まったく予想イメージをはるかに超えた。この壮大な平原の森、聞きしに勝るここは森の民の森の国だ。…

 人間のいちばん悲しい誤り

旅をしてきた。そこは森の国だった。その地の人、ヘルマン・ヘッセはこんな詩を詠んだ。 旅の秘術 あてどないさすらいは 青春の喜びだ。 青春とともに その喜びも色あせた。 それ以来、目あてと意志とを自覚すると、 私はその場を去った。 ただ目的だけをせ…