2005-12-01から1ヶ月間の記事一覧

 「卒業生と忘年会②」

白いニワトリ 店に入ってきた顔が笑っている。 よっさん、覚えてる? 阿部やん。 おう、アベチンか、変わってないなあ。 よっさん、忘れてたら、帰ろと思うてたんやで。 忘れてなんかいるものか、変わってないな、ええ顔してるやん。 ええ顔してるやろ。よっ…

 「卒業生との忘年会」

忘年会 三十九歳になるシンジが、 「閻魔」という名の飲み屋を開いた。 その店で忘年会をする、と言う。 彼は、中学生のとき猛烈なツッパリ反抗児で、 髪をそり上げ、学ランを着て、 十人の仲間と近隣の中学校に出かけては、 ツッパリ同士の対決をしては勝ち…

 「いただきます」

いただきます 日本語を学ぶ中国人研修生に、 「あげます」「もらいます」の言葉を教えるのは、 五十音から始める学習が一月ほど進んでからだ。 二人の研修生が教壇に立ってリンゴを手渡す演技をする。 「リンゴをあげます」 「リンゴをもらいます」 「あげる…

 「罵倒文化・愚弄文化」

罵倒文化 象の背に乗った若い女性タレントが、 象の手綱をとる男性に罵声を浴びせる。 「てめえ、なにしてんだよー、‥‥」 べらんめえ調のどぎつい言葉は、 男性のプライドをひどく傷つける内容なのだ。 浴びせられた男性は苦笑する。 男性はインド人だろうか…

 「先生の悲鳴」

先生の悲鳴 小学校の先生から悲鳴が届く。 病休をとっている先生のところに見舞いに行ったら、 十二キロも痩せて別人のようだったと。 荒れる子どもたちは、 「次の担任の先生も病気にしたろか」 とうそぶき、教師への暴力はエスカレートしていると。 些細な…

 「魑魅魍魎(ちみもうりょう)」

魑魅魍魎 昔、魑魅魍魎がいた。 「一本道でんがな、 それが二本になっとるんですわ、 わしはこれは狐やと、 闇の中でマッチをすって、 タバコをつけました。 そしたらでんな、 道が一本になって、 無事帰ってこれたんですわ。」 おっちゃんは、縁側に腰掛け…

 「家族の断絶」

断絶「ふーん、これが、じいとばあの生活か。」 囲炉裏端に座っているじいと、ばあを見て、 久しぶりにやってきた小学生の孫は、 部屋の入り口に突っ立って言ったという。 柱や梁、建具も黒くつややかに輝く、 薄暗いけれど長い歴史の残る家。 じいと、ばあ…