2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

 ネパールで出会った人

26年前のことだが、ネパール山岳地帯の森林が荒廃し砂漠化が進んでいた。急ピッチで森がなくなっており、大雨が降れば洪水が起こる。被害はバングラディッシュにまで及んだ。少しでも歯止めをかけねばと、日本のNGO団体「アジア協会アジア友の会」はネパー…

 シモン芋と木のサッシ

道志村の幸雄さんが送ってきてくれたシモン芋はおいしかった。洋子が料理してくれたのは、最初はサラダ。シモン芋を切ってルクエに入れ、電子レンジでふかし芋にしてサラダにしてくれた。その味、まさにジャガイモとサツマイモの中間、ジャガイモサラダに似…

 その時人々は

下仁田ネギの苗を買ってきた。地元の物産センターに、規格外の苗が一袋だけ格安で出ていた。農協の店では売切れていたから、見つけたときはうれしかった。何本あるのか確認しなかった。たぶん100本あるだろうと予想していた。畝作りをし肥料を入れて一本…

 ハクビシンを食べる

「ハクビシン‥‥」 ドアン君が何か言いかけた。日本語教室の勉強が始まったときの第一声だ。 ハクビシン? 「ハクビシンがどうしたの?」 「食べた」 「え? 食べた?」 いったいどういうこと? ドアン君とトー君に訊いていくと、ハクビシンが車にひかれてい…

 家族という崩壊

彼の相談ごとというのは、恋愛問題だった。女性は二人。 彼が話す。ぼくが質問する。彼が応える。 問題の図式が次第に飲み込めてきた。 今彼は学生であり、進学してもっと勉強もしていきたい。海外へ飛翔もしたい。 だが彼は目の前の壁につきあたったまま、…

アカマツ枯死対策で農薬空中散布

光城山に登ってきたことを、同僚のSさんに話した。土石流災害の危険があることを話したら、認識が一致した。Sさんは豊科在住で、理科の教師、光城山のことはよく知っている。 「初めて登って、よくあの山の危険が分かりましたねえ。そうです、土石流の危険が…

 野菜の種

野菜の種袋には、何年何月までという有効期限が印字してある。大体製造してから1年余、しかしその期限内に種を全部播くことはあまりない。大概余ってしまう。余った種は捨てるにしのびず、期限と言っても目安だから、結局期限後に播くこともある。 今春もそ…

 光城山の桜

光城山の桜を見に行かないかと前日家内が言った。光城山を「ひかるじょうやま」と読むことを知ったのは、安曇野に来て何年かたってからで、それまでは「こうじょうやま」かなとか「ひかりしろやま」かなとか、勝手に思っていて、登りたいとは思いもしなかっ…

 俳句と将棋 <2>

深田久弥も将棋名人戦を見たときのことを書いている。(「きたぐに」東京美術 1970) 観戦した対局は、「老巧塚田名人と弱冠大山八段とが関東と関西の名にかけて覇権を目ざすという、運命的な試合、これこそ一流品中の一流品である」という勝負だった。 五月…

 俳句と将棋 <1>

今日の朝日俳壇に掲載された金子兜太選の第一句は、次の句だった。 東北や背に白刃の花の冷え (船橋市)斉木直哉 一読して、わが背筋を冷えが走った。理屈ではなくずばりと冷たい感覚が身を貫く。背中に白刃を突きつけられたときの戦慄を想像する。桜の花が…

 祭、お花見

昨夜は村の鎮守の宵宮だった。日本語教室に来ている外国人に、日本の文化を知ってもらうため、祭参観を教師たちで企画した。ベトナム人の実習生が3人、日本人と結婚した中国人の奥さんが3人、そして幼児3人に、日本人の教師が4人。 ぼくはこの地に来て8年に…

 ジャガイモ

「ひさしぶりです」 「ひさしぶりさね」 「この冬、全然姿見えなかったですよ」 「朝起きるのがおそかったからね」 「夜が明けるのがおそかったからですね」 「今は、4時50分ごろ明るくなってきたからね。明るくなったら起きるで」 「太陽に合わせた生活です…

 シモン芋と日本やまにんじん

道志村の幸雄さんから宅配便のダンボールがとどいた。何を送ってきてくれたんだろう。開けてみると、中から現れたのは、どでかい芋と不思議な苗、見たことのない植物だ。手紙が入っていた。 「シモン芋と、日本やまにんじん(ヒュウガトウキとイヌトウキ)の…

 自衛隊イラク派遣の隊員が28人自殺していた

公開されることのなかった自衛隊イラク派遣映像記録が、防衛省に保管されていた。それがNHKの半年に及ぶ交渉で初めて開示された。昨日の「クローズアップ現代」はその放送だった。すでに過去のものとなっていた秘められた事実は知らないままに忘却されて、新…

  日本人のビジョン

ぼくが青年だったころ、奈良県の大和郡山市の市長が、城下町の市内中心部を車規制して、人力車を走らせるというビジョンを打ち出したことがあった。旧市街の昔の城下の雰囲気を現代に呼び戻そうという大胆な発想だった。大和郡山市内には伝統的な家屋、町並…

 道祖神桜が咲き始めた

日の出が早くなってきた。太陽の光を背に受けて道祖神桜まで行ってみた。数日前はつぼみ膨らむだったが今日はどうだろう、舗装をしていない野の道ばかりをつないでいった。今年は畦焼きをした田んぼが多い。畦焼きしたあとは草が黒く焼け、そこから無数のツ…

 子孫を残した白樺

雪の中に葉を落とした白樺が立っている。雪に白い幹が溶け込み、空から舞い落ちる雪片、ラッセルで吐く息の白さ、白一色の世界が冬山の魅力だった。 信州に移り住んだとき、庭に白樺を植えたいと思った。ホームセンターの植木コーナーに白樺の苗木があったか…

 「安曇野ひかりプロジェクト」、今年のキックオフ

「安曇野ひかりプロジェクト」の主催する「夏休み、福島の子ども保養プログラム」のキックオフミーティングがあった。 会場の地球宿へ山麓線を走った。途中シダレザクラの巨木が数本、里山の斜面に見え、枝の色づきから、だいぶつぼみがふくらんでいるようだ…

 関東大震災にまつわる出来事

関東大震災が起こった1923年9月1日から1年たった9月1日、陸軍大将福田雅太郎が拳銃で撃たれる事件があった。犯人はその場で取り押さえられた。拳銃を撃ったのは和田久太郎という男で、労働運動社に所属する無政府主義者であった。拳銃の弾は予期せず空砲であ…

「孤立する日本」

「孤立する日本」という指摘がなされている。「孤立する日本」ということが実体化しているとすれば、政府が苦慮する外交の問題と共に、海外から見た日本の姿はどのようなものだろう。日本の内を見れば、安倍政権の進む道、そしてその政策に呼応する一部の人…

 生と死

吉野弘の詩は愛読者が多い。吉野弘その人を敬愛した人も多かったように思う。今年の1月15日、87歳で永眠された。平明な表現、言葉を使いながら、そこに流れる愛が、読者の心を打つ。 初めての児に お前がうまれて間もない日。 禿たかのように そのひとたちは…

 人を育てるということ――STAP論文問題

STAP論文問題で、小保方さんが記者会見を行ない、午後1時からそのTV中継があった。この若き研究者は、今もなおSTAP細胞研究への情熱をたぎらせ、今回の問題は自己の未熟さから起きた間違いであって、悪意ある改ざんや捏造はなかったと語った。事実関係の真実…

しみじみと語り合う

久しぶりに友の声を聞こうと電話してみた。 「もしもし」 「もしもし、御茶ノ水博士」 「ハッハッハ、御茶ノ水‥‥」 こちらの声がすぐ分かって返事の声に張りが出た。 御茶ノ水博士は、数年前膀胱がんの摘出手術を受けて、人工膀胱を体外にぶらさげている。不…

大正デモクラシーと「新しき村」

武者小路実篤が「新しき村」づくりを宮崎県日向の山の中、木城村で始めたのは1918(大正7)年だった。白樺派の武者小路は、日露戦争の悲惨を体験して、トルストイの平和主義に傾倒し、人類愛、人道主義をかかげて、衣食住はタダという生活共同体の村づくりを…

 日本人は何か

「きだ みのる」という小説家がいた。1895(明治28)年〜1975(昭和50)年。 文明批評的作品をよく書いた。戦後すぐの渾沌の時期、1948年に書いた作品の中に、「日本人は何かということについて」という、こんな一節がある。 <我々は日本人というレッテルを…

 養蚕

安曇野では、昭和の30年ごろまで養蚕が行なわれていたらしい。今は一軒も養蚕農家はない。伊那谷の飯田のほうでは、わずかだが、まだ養蚕農家も残っているそうだ。 子ども会育成会の役を引き継ぐため、次の役になった正さんと話していたら、正さんの子どもの…

 今年の夏も福島の子どもキャンプ――現地へとんだ3人

<写真>南農高校の農場にある、日輪舎。かつて満蒙開拓に青少年を送り込んだ訓練に使われたものを移築した。 今日、望三郎君からとどいたメールは、先日の福島訪問の報告だった。 地球宿を営む望三郎君と、野外教育活動「どあい冒険むらぶ」を実践する大浜…

 文化の香り

ふたたびドイツ文学者だった小塩節の文章を引き合いに出す。 その文章は1992年のものだったから、その後の社会の変化があろうが、 変化しない文化の状況を考えて、参考にしてみたい。 「文化の香り高く、音楽の都は威風堂々、 木々の緑は深々と濃く、 ウィー…

 春

ニオイスミレが庭のあちこちに広がり、いい香りを漂わせる季節が来た。外出から帰宅し、入り口を一歩入るとスミレの芳香が迎えてくれる。帰ってきたよ。お帰り。ほっと安堵の気分。心が和み体が和らぐ。大和の御所から安曇野に引越ししてきたとき、家財道具…

 75歳で英語教員になった人

黙って新聞を整理していた家内が、突然声を発した。 「こんな記事が載っているよ。75歳 英語教員になります‥‥」 一週間ほど前の朝日新聞の声の欄に載った投書だ。 「75歳で英語教員?」 家内はそれを朗読し出した。 「75歳 英語教員になります 大学生 75歳 …