教育

こんな卒業式があった 真佐子さんの回想

「夕映えのなかに」を読んでくれた真佐子さんが、長い感想文を送ってきてくれた。これほど長い感想文を書いてくれたということは、それだけあの頃の体験が強烈だったからだろうと思う。彼女は、矢田南中学の一期生だった。 感想文の一部分をここに載せておき…

タイガース監督の「あれ」

タイガース監督の、「あれ、あれ」は評判になった。選手には「あれ」で伝わり、ファンにもわかり 、マスコミでも話題になった。 ところで、この「あれ」は、年をとってくると、頻発する。老夫婦の会話。 「あれは、どこにあるかな」 「あれ? ああ、それね、…

声「教師をやめたいと思うあなたへ」

今朝の朝日新聞、声の欄に、「教師をやめたいと思うあなたへ」という見出しの投書が載っていた。元中学校教員の65歳の男性の意見だ。正直な、謙虚な、温かい人間性を感じるその記事を、そのままここに載せる。 「駆け出しの頃、私の授業は私語だらけ。生徒と…

生徒を支える仕事

高校の非常勤講師を務めていた頃、私は70代に入っていた。勤務校は南松本にあった。通信制と言いながら、実質は通学制だった。いつ登校してもいいし下校してもいい。制服はない。クラスもない。要するに高校卒の資格を取れるところとして、存在していた。数…

筋萎縮症の生徒と、「こころ」(漱石)を読む

11年前の9月26日、この「野の学舎」に書いた記事を再録する。 私は私学の高校の非常勤講師をしていた。いつ登校してもいい、マンツーマンで生徒と接し、学習を援助する。いろんな子がいた。小学校中学校とも、不登校だった子、いじめを受けてきた子、障がい…

国語教育でいちばん大切なのは

かつて私は国語教員だった。 内田樹は、2013年、国語教育について教員たちに講演をした。 「国語教育でいちばん大切なのは、『沈黙の言語』につながる回路を、子どもたちが発見することではないかと僕は思います。学校における国語教育の実際に即して言うな…

新任教員の退職

新任教員の退職が増えているそうだ。長時間勤務や新任を支援する態勢が不十分で、精神疾患という退職理由も目立つという。東京では、公立学校の新任教員2429人のうち108人が一年で教員を辞めたと、今朝の朝日新聞のトップ記事に出ていた。 私もかつて教員を…

無着成恭さんへの手紙

おっかあ ながぐつ かってけろ そういったら あんつぁんからかってもらえ といわれた それでおしまいだ 「山びこ学校」(無着成恭編)のなかの「ふぶきの中に」に収められた山元中学校の生徒の詩だ。 教員になったぼくは「山びこ学校」に感動し、大きな影響…

「もっと光を」

安曇野で「三九郎」と呼ばれているトンド、地区の子どもの火祭り、正月飾りなどを燃やす。だがこの行事はコロナで今年も中止になっている。 正明君から届いた年賀状に、大きな文字がハガキ一杯に書かれていた。 「もっと光を」 ハガキの隅には、「ゲーテの最…

賢治の実施した「北海道修学旅行」

宮沢賢治は、花巻農学校の教員をしていた時、北海道への9日間の修学旅行を計画し実行した。貧しい暮らしをしている花巻の生徒たちにとって、9日間の修学旅行の費用捻出も大変だった。この修学旅行には賢治の、生徒たちの、未来への夢が託されていた。 1927年…

大阪で進行している高校削減

インターネットに次のような呼びかけが届いた。 ☆ ☆ ☆ 大阪では「3年連続定員割れで再編整備」という府立学校条例がつくられ、17もの府立高校が廃校にされています。大阪府教育委員会は、昨年、阪南市の泉鳥取高校を含む3校の廃校を強行したのに続き、今…

「夕映えのなかに」、読者からの問い

「夕映えのなかに」巻末の、万太郎に退職を決意させた自身の行為は、何故に生じてきたのか、それまでの万太郎の生き方とは異質ではないか。この問いは重い 自身の行為は、自身の精神の問題だった。教員の心の状態は、生徒に跳ね返る。教員は単なる「教える人…

「夕映えのなかに」感想(3)

<前川喜平さん(元文部科学省事務次官)から いただいた感想> 戦後教育を真摯に生き、教育とは何かを問い続けた一人の教師の精神の遍歴と奮闘の軌跡を描く自伝的作品。被差別部落や在日コリアンへの差別と向き合い、抑圧的な学校のあり方に抗いつつ、常に…

「夕映えのなかに」読後感想文<2>

私たち夫婦が、奈良県の御所市に住んでいた時、裏の畑で家庭菜園をつくられていた井上さんが、拙著「夕映えのなかに」の購読をたくさんの人に薦めてくださり、そして読んでくださったそれぞれの人の読後感想を集めて、プリントアウトして送ってくださった。…

「夕映えのなかに」読後感想文 <1> 

吉田氏が北アルプスの麓、安曇野市に移住され、公民館での日本語教室等のご支援をいただき、私にロマンを語られた背景が、この小説を読んで今さ らながらよくよく理解できました。ドラマチックな展開で読みやすく、立派な自分史でもあると思います。小中学校…

一つの歌

2002年、加美中学で教えた武田君が、ぼくが中国武漢大学に赴任するときに一枚のCDを贈ってくれた。それは当時、彼がファンで追っかけをしていた長渕剛の歌う「静かなるアフガン」のCDだった。 ぼくはそのCDを武漢大学日本語科の授業で使った。CDデッキは町の…

昔の仲間からの手紙

二十数年前の、「学育研究会」の熱心な仲間であり小学校教員だった東京の雅実さんから、心温まる手紙をいただいた。 「なつかしいです。やっと分厚い小説『夕映えのなかに』を読み切りました。生徒とのすごい生き様を感じながら読みました。 私は小学校教員…

教え子からの手紙 3

小説「夕映えのなかに」の、加美中学卒業生、後にも先のもこんなオテンバいなかったいうほどの最高のオテンバだったヨッシーから手紙を受け取ったのは、ヨッシーが二十歳になった時だった。 手紙は、長かった。一部を引き出してみる。 「みんな変わったよー…

教え子からの手紙 2

「夕映えのなかに」出版後、「卒業以来32年ぶり」という、加美中学校の卒業生のヤナから、なんともすごい回顧談と贈り物を受け取った。 彼女は、28歳の時に両親の大反対を振り切って結婚し、高麗大学の大学院で言語学を学び、日本にもどって仕事に就いた。仕…

教え子からの手紙

同窓生のつながりで、小説「夕映えのなかに」が伝わっていって、卒業してから連絡のなかった教え子から、「本を購入して読んでいる」という、うれしい便りが何通かあった。萬代君につたえたのが、紀子さんだった。 紀子さんの手紙から、その一部。 ――私の思…

教え子からの手紙

5月出版した「夕映えのなかに」(本の泉社)を読んでくれたかつての教え子や友人が、心のこもった感想をメールや郵便で送ってくれている。彼らが卒業してから、数十年の時を隔てて、晩年の今、間接的な再会ができたことは大きな喜びで、励ましになっている…

校長への電話

7月2日に、出身校に贈呈した「夕映えのなかに」のことを書いた。「何の返事もない」ことを。 その後、やっぱりこのままにするのはよくないと思う。今の学校はそういうもんだ、ですましてはいけない。 まず出身高校の方に電話をした。 「私は母校の遠い過去の…

チロル、緑のなかで自由に学ぶ

何年か前、チロル地方に遊んだ。 乗り継ぎのウイーン空港で待っているとき、巨大なポスターが目に入った。 オーストリアン航空のポスターだ。 英語の文字が山岳写真の上の書かれている。 私たちは、あなたのほほえみのために飛ぶ。 フリータイムから、フリー…

この国の成り立ち

古代、日本列島へ、大陸から渡って来る人たちがたくさんいた。彼らは各地に渡来人のコロニーをつくり、倭の国づくりにも参入した。 西暦六六〇年、唐と新羅の連合軍によって百済が滅んだ。倭朝廷は百済に援軍を送ったが、唐の水軍との戦いで、倭は敗れた。つ…

教員の原点

かつてぼくは、教育という現場で生きていた。そのころ、しばしば思った。教師たちは本当にプロフェショナルと言えるか。 NO! 長野県の教員の犯した問題が時々報じられる。今日は体罰のニュースだ。 教員免許のない人が学校で教えていたということが問題にな…

教育実習の本質とは何だろう

コロナ禍で、文科省が教育実習ができない場合、やむをえず「実習なしも認める」という方針を出した。 実習なしでも資格が得られる、というのはよくない。けれど実習の受け入れができず、学生が教員の資格が取れないとなってしまうのもよくない。苦肉の策が、…

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」 2

みかこさんは息子の学校の教育について書いている。日本では考えられない教育である。 英国の公立学校では、中学の年代で「シティズンシップ教育」が義務付けられている。すなわち、政治や社会の問題を批評的に探究し、問題の根拠を探って意見を交わしあい、…

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

保育士でライターの、プレイディみかこの記録「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」を今読んでいる。 みかこさんの家族はイギリスに住み、夫は大型ダンプの運転手、「荒れている地域」の元公営住宅地の「ヤバい」と言われている地区で生活し、名門…

子どもが学び始めるとき

「自閉症だったわたしへ」という、ひじょうにすぐれた自伝がある。著者はドナ・ウイリアムズ、1963年生まれのオーストラリア人である。訳者は河野万里子。この著は、欧米でベストセラーになった。新潮社から出されたこの本は日本でも多くの人に読まれた。 著…

今、教育の問題は?

<今や、現代の教育は、人材養成はできるが、本来的に人間をつくることはできない。 だが、それでも人間は人間をつくる。 人間のつくり出す社会のもろもろは、意図せずに人間をつくる。 現代の若者や子どもが、人間を継ぐことを拒絶し、巨大な断絶を生み出し…