2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

 シューベルトの「冬の旅」

中国・武漢大学でのぼくたち夫婦の部屋は、ゲストハウスの2階にあった。居間、書斎、寝室、合わせて3室あり、窓の外には広大な大学の森が広がっていた。隣に東湖が豊かな水をたたえていた。ぼくは、大学の2回生から4回生、そして大学院生の日本語科の学…

 隠された真実

袴田さんの人生は、犯罪が無実であったとすれば、権力によってつくられた虚構が強制した人生である。 拘束した初期では、捜査機関は袴田さんを何が何でも犯人に仕立てようとは考えていなかっただろう。取り調べの過程で、権力機関は保有する捜査権を踏み外し…

 ふきのとう味噌づくり

今日は一日、春の大地の命、ふきのとう味噌を作っていた。 この十日間ほど、朝のウォーキングで、ふきのとうを見つける。どこにでも生えているわけでなく、探してもなかなか見つからない日もある。田のあぜに、少し黄緑がかった花芽を地面からヒョイともたげ…

 袴田さんの再審決定

子どものころ、冒険小説を夢中になって読んでいた。小学高学年から中学時代にかけて、『ああ、無情』、『三銃士』、『巌窟王』、『アイヴァンホー』、『鉄仮面』、それら世界の名作のジュニア版を、畳に寝転んで汗握って読みふけった。 『ああ、無情』は、原…

 鹿島槍ヶ岳と鹿島のおばば

1961年春に、北さんと二人、鹿島槍ヶ岳の東尾根を登攀した記録(山日記)には、鹿島部落の「狩野のおばば」のことも書いていた。ぼくは23歳、おばばは80歳を超えていただろう。 鹿島部落は、大町から乗り合いバスに揺られて、鹿島川沿いのいちばん奥にある、…

 半世紀前の「天声人語」、「ダモクレスの剣」は今も

紆余曲折の人生上の遍歴によって、わが青年期のほとんどの記録が失われたが、かろうじて保存していたいくつかのなかに山日記がある。ぱらぱら目を通していくと、1961年春に、北さんと二人、鹿島槍ヶ岳の東尾根を登攀した記録があった。冬の豪雪のなかの登攀…

 琴欧州の引退

大相撲の琴欧州関を讃える投書がVoice(声)欄に載っていた(朝日)。見出しが「琴欧州 張り手避けた真の力士」。 何?何? どういうこと? 思わず目を通した。気持ちのいい贈る言葉だった。こういう温かい言葉は、当事者でなくても、読んでうれしい。この文…

 春

枯れ草と木屑におおわれていた、 枯れ色の庭に、 点描画の緑の点が点々と、 水仙の葉と花芽が、 申し合わせて、 祖先からの約束を一斉に、 いのちの静かな快哉。 春の七草は、何だったかな。 「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、 ホトケノザ、スズナ、スズ…

 3月23日 快晴

夜明け前はマイナス7度ぐらいまで冷えていたようで、車のフロントガラスはまっ白に凍っていた。朝8時から区民総出の堰普請(せきぶしん)、要するに農業用水路にたまっている泥やゴミを取り除いたり、水路にかぶさっている草を刈り取ったりする。居住単位…

 「ごちそうさん」、哀しみと愛

テレビドラマ「ごちそうさん」を毎朝観ている。 俳優たちはその物語の人になり、ぼくは、描かれる場面を自分の中でふくらませて、感情移入する。フィクションの奥にひそむ真実がある。 終戦前、息子活男の戦死を伝える公報を母親の芽以子は受け取った。けれ…

 生ゴミコンポスト

我が家の生ゴミはすべて2種類の方法で堆肥化している。一種類は、いわゆるダンボールコンポストと称されて全国的に行なわれているやり方で、我が家はダンボールではなく木箱で行なっている。おもに蛋白質、脂肪系の生ゴミを、ピートモス・モミガラくんたん…

 飛び込み自殺で止まった電車

再び竹内敏晴の登場。こんなことを書いていた。 ある朝、乗っていた電車が途中で停止した。車内放送が入った。 「ただ今、飛び込み自殺がありまして‥‥」 車内が一瞬シーンとした。 「御迷惑をおかけしております。まだ復旧の見込みは立っておりませんので、…

 つるバラのアーチ

古い材木でつるバラをはわせるアーチを作った。モッコウバラと白のつるバラが繁茂して、屋根まで上っていってたのを昨年秋にばっさばっさ剪定して、屋根上の部分を取り除いた。この2本のバラには勢いがあって、もっと自由に茂らせたいが屋根上はだめだ。そ…

 歩く人のための小径が文化をつくる <3>

「人の魂は、その幼い日に原型が刻まれてしまう」、小塩節のエッセイ「ザルツブルグの小径」を読んだ。エッセイはこの一文から始まる。 小塩節は元西ドイツ日本大使館公使も勤めたドイツ文学者であった。彼はモーツァルトと、モーツァルトが生まれ育ったザル…

 登校の道、鬼ごっこ

<写真:穂高地区の子どもの下校> 登校する小学生たちと一緒に通学路の途中まで歩く。ランちゃん散歩のウォーキングパトロール、上の集落の子らとは、このごろかなり長い距離を歩いている。長年この安曇野で生きてきた人たちは老い、孫たちが学童である人の…

 二つの敗戦<4>

国家権力が道を誤ったときの犠牲は大きい。国を守るために、国民は弾丸となり、盾となった。たくさんの秘密を作り、国民の自由を奪い、犠牲を強いた。そして1945年の敗戦に至った。 日本はそこで歩む方向を改めた。しかし、そこからまた道を誤った。方向修正…

 二つの敗戦<3>

「新しい衝撃は、一、二日あとにやってきた。『ああ、生きてもいいのだ!』、まるで目の中に太陽のかけらが飛び込んだように目の中がまっ赤になり、くらんだ。『戦争で死ななくてもいいのだ!』。 十年のちに、私が生きているということがありうるのだ、とい…

 二つの敗戦<2>

竹内敏晴は子どものころ難聴だった。12歳から16歳までの旧制中学時代、聴力はなく、言葉はしゃべれず、それがためにいじめにもあった。17歳、旧制第一高等学校に入学、先輩たちによる新入生歓迎コンパに出た、そこは、自閉的で孤独な軍国少年の竹内に…

 二つの敗戦<1>

3.11、東日本大震災は、第二の敗戦であると言った人がいた。第一の敗戦は1945年、そして2011年は第二の敗戦。敗戦というとらえ方には異論があろう。 震災発生から3年がたち、データは次のように示している。 死者・行方不明者は1万8517人、現在の避難者は26…

 復興とはどうすることだろう

小径、小道について書いてきた。もう少し考えてみよう。 大阪では路地のことを「ろーじ」と言っていた。人家の間の狭い道、裏通りに出る通路、サンマを焼く煙が流れてきたりして、そこを通り抜ける人は住人の暮らしを感じる。「横丁(横町)」ともいう。法善…

 歩く人のための小径が文化をつくる <2>

「歩くこと」を楽しみ、「歩く文化」を立ち上げたい。 フットパス、すなわち歩くための小道がどれだけ発達しているか、それはその社会の文化度を表している。日本の巡礼路はというと四国のお遍路、スペインの巡礼路は、キリスト教の聖地であるサンティアゴ・…

 カブトムシの幼虫、また雪

今日はまた雪が降っている。昨日までに道路の雪も融け、畑の雪も大部分融けていたのに。 この春、家の西側の窓から入る真夏の日射を防ぐために、何か木を植えようと思っている。それで木の株を植え込む予定をしているところを、1メートル×2メートルほど、…

 歩く人のための小径が文化をつくる <1>

イギリス発祥のパブリックフットパスが、日本でも、いくつかできている。まだまだ点に過ぎないが。イギリスでは全土に網の目のように作られているが、日本ではこの実践が定着していない。「パブリック」は公共、「フットパス」は小道の意味である。 今日の朝…

 ナショナリズムとファシズム

書店に行ってみる。単行本にも週刊誌にも、中国、韓国という目立つタイトルがいくつか目に留まる、他国への批判感情が、きわだった色使いに現れている。公共の図書館のなかにもそれらが何冊も入り込んでいる。公共の図書館で、どうしてこういう図書を選定し…

 棄民

時代が動いているなと思う。社会が変わっていってるなと思う。いったいどちらへ向かって動いているのだろう。寒々としたものを感じる。 ラジオの「姜尚中と和合亮一の対談」のなかで、福島原発事故における「棄民」を語っていた。福島原発事故での「棄民」と…

 和合亮一の福島の詩

今朝、新聞記事で一人の詩人、和合亮一さんに出会った。 「福島はまだ『有事』のなかにあります。私たちは沈黙せざるを得ないことに苦しんでいます。心の中に『どこにもぶつけようのないもの』がある。それなのに風化は進む。心の奥底にあるものを表に出すに…

 福島を支援する活動

<写真:夏の福島の子どもキャンプ> 昨日の午後、崇さんと安曇野社会福祉協議会本所へ行った。今年度共同募金からの助成を希望する団体が企画内容を順次プレゼンテーションすることになっている。発表する時間が来て会場に入ると、審査する理事たちが十数人…

 まど・みちおさんを偲ぶ

まど・みちおさんが亡くなられた。104歳、長生きされた。 詩人の、ねじめ正一さんが追悼文を書いておられた。(朝日) 「ずうっとまどさんのことを子供向けのぞうさんの詩人だと思っていた。ところが、『うたを うたうとき』という詩を読んだとき、私は私…

 ルアンからのメール

<写真:穂高東中学の校庭> 2月のある日、記事のないメールが来た。なんだ? 送り主を見ると名前がRuanとなっている。だれだろう、書き忘れたのかな? そこで、とりあえず返事だけはしておいた。 「何も書いてありません。どうしたのでしょう。」 数日して…

 感情のコントロール

昨年のこと、時間をもてあましている感じに見えた女子生徒に「アンネの日記」を読みましたかと聞いたら、読んでいないというから、家から持っていって貸してあげた。高校生だが、この種の本をまったく読んでいないようだった。女の子は数日後読みましたとい…