子どもの世界

歌「田舎の四季」

私が小学生の頃、ラジオから流れてくる歌に聞き耳を立てた。初めて聞く歌だったが、四季の農村生活を歌い、懐かしい感じがする。不思議なことに一度聞いただけなのに歌は記憶の中にとどまり、ときどき口をついて出てくる。だが、4番まで歌詞全部は正確に覚え…

子どもの危機

昨年の文科省調査では、中学生の50%が視力1.0以下。 今年の文科省調査では、公立小中学校の通常学級に、支援の必要な子が6.5%いるという。読み書き障害の多くは、聴覚に問題を持っているという。 人間が本来持っている能力が、引き出されず、鍛えられず…

野性を消滅した子どもの暮らし

今朝の新聞の声欄に、次のような投稿があった。要旨を書く。 「最近の子どもの8割が近視で、10センチ離れたものを見るのも苦労する子どもがいるという。専門家は『国家的危機』と述べている。原因は、外遊びの減少だ。子どもから外遊びの機会を奪っているの…

しもやけ

小学生のころ、毎年冬になるとしもやけになった。かゆくてたまらない。足の指も手の指も、みみたぶまでも赤くはれあがり、ひどい時は紫色になって皮膚が破れた。あかぎれになることもあった。皮膚に糸状の割れ目ができる。水に触ることが多いとあかぎれがで…

子どもの約束

) 室生犀星の詩に、「明日」という詩がある。 明日 明日もまた遊ぼう! 時間をまちがへずに来て遊ぼう! 子供は夕方になってさう言って別れた。 わたしは遊び場所へ行って見たが いい草のかをりもしなければ 楽しさうには見えないところだ。 むしろ寒い風が…

自分の育った故郷と <ヘッセの幼年時代2>」

子どもたちが今住んでいるところ、そこが大人になっても故郷と言いたくなる場所になるかどうか、そして終生そこが故郷であり続けるだろうか。 ぼくの育った故郷は、膨張してきた大都会のなかに埋没して、かつての故郷の風土は完全に喪失した。 子ども時代、…

 子どもを忘れた大人たち <ヘッセの幼年時代>

ヘッセは「考察」という文章の中に自分の幼年時代のことを書いている。子ども時代を忘れてしまった大人たちは、もう一度この文章を読んで、自分のなかにかすかに生きている子どもの魂を取り戻す必要がある。 保育園、幼稚園、学校などをつくるとき、さらに重…

 麦と子ども

安曇野は今、青い稲田と麦秋の畑が一面に広がっている。 そのどこからも、子どもの声は聞こえない。 子どもは野の中から消えた。 稔りの早い麦畑は収穫が始まっている。 大型機械が畑の中に入って、麦を刈っている。 麦わらは、砕かれて畑に撒かれる。 全部…

 フクちゃんの冒険と適応力

昨日夕方、4時過ぎにフクちゃんがやってきた。二回目の預かり。フクちゃんのママは小学校PTAのコーラスに出かけた。 フクちゃんは、ママとあっさり別れて、家内に手を引かれて家に入り、もうそこに適応していた。夕方は教育テレビで子ども番組をやっている。…

フクちゃん

ママに手を引かれて フクちゃんは車から降りてきた。 ぼくはフクちゃんのママに替わって フクちゃんの小さな手をとり、 家に連れて入った。 フクちゃんは泣かない。 フクちゃんのママは 紙おむつと お腹がすいたときにフクちゃんが食べるパンと フクちゃんの…

 かまくら

車のわだちのところだけ雪が融け、アスファルトが露出している。両側の雪は凍って、足で踏めばバリバリ音がする。穂高地区に入ると路面はきれいに除雪され乾いていた 小学生の甲高い声が聞こえた。この「甲(かん)」の意味は、「音楽で、高い音、多く1オク…

 子どもの遊び研究

研究(3)探偵ごっこ 男の子はスリルのある遊びを好む。スリルのある遊びは、体を躍動させ、全身の働きを活発にし、頭脳も体力も成長が促進される。 高度経済成長とともに商業主義が子どもを標的にし、おもちゃ、ゲーム、スポーツ用具などをじゃんじゃん開…

 小学3年生のぼく

小学3年生のとき中耳炎になったことがある。夜中に耳がずきずき痛み、目が覚めた。母が起きてきてずっと耳の後ろをさすってくれた。 翌朝、父が仕事を休んで病院に連れて行ってくれた。父の仕事が郵便局だった関係上、逓信病院という大きな総合病院で診ても…

 ルナール「にんじん」

フランスの作家、ルナールの「にんじん」を、子どものころ読んで、すごくおもしろく、好きになった。題名は作者の少年のころのニックネームでもある。 ルナールが寮生活の高校生だったとき、授業の中であまりに騒ぐので、教師が、 「こら、ボウル・ド・カロ…

 チャンバラごっこ

秀さんが、取りにおいで、と言ってくれていたネギ苗をもらいに行った。 秀さんはもう植えた、その余り物、全部もらえば数百本、 半分もらって帰った。 日が暮れるまでに、植えられるだけ植えてしまおう。 三角鍬で溝を掘り、元肥の鶏糞を入れた。 ネギを植え…

 遊びとは何か

公園のケヤキの木に男の子が二人登っている。隣の木に、女の子が登っている。 今日は地区のスポーツとバーべキューの日、ぼちぼち炭火の肉が焼けそうだ。 「ありゃ、あぶないんじゃねえか」、離れたところでの木登りを見ていたおじさんの一人が言った。 「あ…

 虫と遊ぶ

信州には、イナゴのつくだにや、ジバチの幼虫のつくだにがある。ジバチは黒スズメバチで、その巣を見つけてきて、幼虫をとる。この食文化を維持してきた高齢者がいなくなれば、これもそのうち消えてなくなるかもしれない。 虫と人間の関係は、とみに薄くなっ…

 子どもの遊び研究

1、子どもは遊びを創造する達人である。 2、子どもは遊びを通して、能力や感性を豊かにする。 3、子どもは友だちとの遊びを通して、友情を育む。 4、子どもは遊びを通して、自然と交わり自然から学ぶ。 子どもは遊びを創造する達人であるから、遊び道具…

 春休み、いっぱい遊ぼ

道で学校から帰ってくる小学生に出会った。4人はランドセルのほかに大きな画板のようなものを持っている。 「お帰り。大きなのを持っているね。なに?」 「絵だよ」 「ああ、学校で描いたの?」 「うん、あしたから春休みだから」 「そうか、春休みかあ。い…

宮沢賢治「風の又三郎」とミヒャエル・エンデ「モモ」

賢治作「注文の多い料理店」の序に書いている。 「わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれいにすきとほった風を食べ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。 またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いち…

 子どもの遊び研究

(マッチをすって火をおこす)<学校というハコと、家庭というハコ、この二つのハコのなかで、現代の子どもたちはほとんどの時間を過ごす。学校と家庭の外に広がる世界には、子どもの遊ぶ姿はない。子どもたちの喪失した世界とはどんな世界だったのか。> 研…

 ヘルマン・ヘッセ「少年時代から」

親・家族、暮らしの環境、そして友、この三つは、子どもに深く影響を与える。 ヘッセにはまた「少年時代から」という作品がある。少年時代の記憶の細い糸をたぐりよせた作品である。記憶をひもとくと、まず断片的な記憶から始まる。それが集まって、記憶の元…

 ヘルマン・ヘッセの「わたしの幼年時代」

朝のうちは、ときどき晴れ間も出た天気が、にわかにかきくもり吹雪になった。雪は横殴りに吹き付ける。今は、外仕事を休んで、名文をここに書き記そう。ヘルマン・ヘッセの「わたしの幼年時代」(高橋健二・訳)から一節。昨日書いたことの想いが継続してい…

 幼少年時代の体験は一生の糧となる

ヘルマン・ヘッセの研究家であり翻訳者でもあった高橋健二が、こんなことを書いている。 「ヘッセは少年時代、すでに死の一歩手前に追いつめられる危機を体験した。その後、二度の大戦には平和主義の立場を貫いたために生活の危機に直面した。ノーベル文学賞…

 どあい子ども冒険クラブ、今日は基地づくり <2>

ハマさんは実演しながら、刃物の使いかたを子どもたちに説明する。「鎌は手前へ引っ張る、右手で引いたとき、左手の指を切った人がいるよ。ナイフは向こうへ押して木を削る。近くに人がいると危ないぞ。1メートル以上離れてやるんだぞ。」ハマさんは真剣だ。…

 どあい子ども冒険クラブ、今日は基地づくり

子ども冒険クラブを主宰するハマさんから二日前に電話があった。土曜日の冒険クラブのスタッフにきてくれないか、というものだった。快くOKして、今朝早く霧の中を車で出かけた。子ども冒険クラブは、黒沢川上流の谷間が舞台だ。今日は一日、基地づくりを…

 危険を感知し行動できる子どもは遊びの中で育つ

堀金公民館へ車で出かけ、神社の前まで来た。左は民家、右は神社の林、道は狭い。あと15mほどで左折する。民家の側には歩道はなく、神社側には細い歩道が造られている。そこを小学生の一群が下校してくるところだった。ぼくは左折するために方向指示器を点…

「子どもがつくる子ども会」への道

昨晩、地元の「子ども会育成会」の役員会が公民館であった。ぼくは今年度その会の会長になっていたから、一つの考えを提案した。 <長い人類の歴史を通じて、村落には子どもたちの集団があり、年上から年下までの子どもたちが一緒に遊んでいた。地域のお兄ち…

 ドストエフスキーの語る「善き思い出」

この文章に出会ったとき、ぼくはしばらく考え込み、遠い幼いころのことを思い出そうとした。 「ドミートリーの母親はかれが幼いころ家を出てペテルブルグで亡くなり、父親は家に女を引っぱりこんではどんちゃん騒ぎの毎日であったから、ドミートリーは放り出…

 子どもの遊び 草の相撲、草のワナ

今年は、ヒメジワという草が畔やら庭やらいたるところに生えている。イネ科の草で、丈が10センチから50センチになる。ヒメシバとも呼んでいる。茎の先から花穂が3から8本伸びる。 畔の草刈りをして、しばらくしたらまたこの草が一斉に生えてくる。 ヒメジワ…