2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

 火を焚く

長い柄のついた斧を振り上げて打ち下ろす。薪にする楢の木の丸太は真っ二つに割れた。丸太の中に節のあるのは、斧を力いっぱい打ち下ろしても、いっかな割れず、斧の刃は木に食い込んだまま離れない。そこで斧に代わって、くさびを使う。くさびを割れ目に入…

 カブールの少年の願い

巌さんは家主に頼まれて、ご近所の家の小屋をつぶした。家主は高齢のうえに介護も必要とするご夫婦だったから、自力で小屋をこぼつことは無理だった。壊した廃材を処分したが、2メートル余りの柱5本に梁材3本、杉の丸太3本はどう処分したらいいか。吉田さ…

 高村光太郎「女医になった少女」

高村光太郎に、「女医になった少女」という詩がある。 女医になった少女 おそろしい世情の四年をのりきって 少女はことし女子医専を卒業した。 まだあどけない女医のひよこは背広を着て 遠く岩手の山を訪ねてきた。 私の贈ったキュリー夫人に読みふけって 知…

 大失敗と大成功

マート君と、マートのフィアンセのエミちゃんと、そしてぼく、三人で秋の信州へ行こうと相談した。マート君とぼくは、新雪の常念岳に登り、白銀に輝く穂高連峰や槍が岳を見る、そして稜線でテントを張って一泊する。エミちゃんはひとり碌山美術館に行って、…

 荻原守衛(碌山)と高村光太郎

穂高に碌山美術館がある。日本近代彫刻の先駆となった荻原碌山の彫刻が展示されているこの美術館は、地元の人々、学校の生徒も手作業で参加して、50数年前に建設された。教会風の建物やログ風のシックな建物が、秋は紅葉に染まる庭木に囲まれ、小さいけれ…

 朝食はふかし芋

毎朝、食事はふかし芋に、野菜ジュース、ヨーグルトなどを食べている。サツマイモは、今年は100パーセント、ネズミにやられずに収穫できた。 これは布山さんにもらった木酢液をときどき散布したのが効果を現したのかと思う。 この木酢液は、布山さんが家の薪…

 領土というもの(3)

戦争が終わって67年がたつ。だが、隣国では日本軍国主義にもとづく侵略行為の記憶がくすぶり続けていて、領土問題になると、科学的知見をもって将来の両国と世界の平和に資する冷静な解決策が陰を潜ませ、感情的対立が暴発する。いったいいつまでこのような…

 領土というもの(2)

常念岳、初冠雪。 新聞の投書でこんな意見を読んだ。一人は中国人、陳さん。 「私は1922年、中国黒龍江省に生まれた。柳条湖事件を経験し、満州国の統治下で青年期を過ごした。その後、日中戦争が勃発、国共内戦でも苦境をなめ、戦乱の中、中国から台湾に渡…

 領土というもの

1965年、ヨーロッパを出発してインド目指して旅をした。ユーゴスラビア、ギリシア、トルコ、シリア、ヨルダンを旅してエルサレムに入った。当時エルサレムは、西側がイスラエル領、東側がヨルダン領になっていて、二国の間はどれだけの距離が開いているのか…

そこにも人が歩んだ道がある

日曜日は朝から地域の市民運動会があり、ぼくは居住地区の子ども会育成会の役であったから、地元の小学校へ出かけた。市民運動会は、子どもから大人まで、いろいろコンビを組んで出場し、地区対抗という形で競走する。好天気に恵まれ、競技は和気あいあいで…

 真夜中の不思議

今朝は初霜が降りていた。昨夜は冷えた。夜中に、隣の部屋で寝ていたランが眼を覚まし、ぼくの寝ている部屋に入ってきてごそごそ音を立てている。その音でぼくも目が覚めた。ランは何かをしようとしている。いったい何をしているのだろうと、寝床から体を起…

 「永山則夫 100時間の告白――封印された精神鑑定の真実」

NHKのETV特集「永山則夫 100時間の告白――封印された精神鑑定の真実」は一時間半に及ぶ長いドキュメント番組だった。 どうしてあのような事件を起こしたのか、1968年秋、次々と4人をピストルで射殺する連続殺人事件、19歳の少年であった被告・永山…

 ニホンオオカミのいたころ

ニホンオオカミは絶滅したとされている。けれど、まだ生き残っているのではないかと、現代も探している人がいる。目撃談や声を聴いたという人もいる。私もその一人。 狼がいなくなってから、何かが変わっただろうか。 最近とみに鹿の増加とその被害が言われ…

 行方不明

「行方不明者のお知らせです。今朝○○地区の男性が行方不明になっています。」 男性は家を出て、帰ってこないと家族から届けがあったこと、年は70代、身長は165センチ、服装は紺色のジャージを着ている、少し前かがみで歩く、などと当人の特徴が述べられ…

 おばあさんの口伝え<ノーベル賞作家・莫言の描く故郷>

以前コーギー犬がいた家の前に、大根やトウモロコシが植わっている畑がある。 「大根、大きくなっていますねえ」 畑から出てきたご婦人に声をかけた。 「トウモロコシ、まだできるんですか」 もう季節はずれに見えるモロコシの葉が黄色くなりかけている。 「…

 霧の朝

今朝は一面の濃霧だった。白いガスの奥から小鳥の声だけが聞こえてくる。景色が見えなければ、音がよく聞こえる。刈り終えたばかりのソバ畑の土がしっとりぬれた。この秋、濃霧が立ち込めたのは今日が二回目だ。ベストを余分に着込んで歩く朝の道、秋ならで…

 地球宿の5周年イベントと絵本『りんご畑の12か月』

安曇野地球宿の5周年イベントが地球宿であった。昼間から夜更けまでの各種プログラム、そのなかで絵本『りんご畑の12か月』(講談社)の出版を祝うトークライブがおこなわれた。絵本は、松村暁生君の「おぐらやま農場」が舞台になっている。文章は、美術…

 ニンニクを植えた

9月はいつまで続く暑さかとうんざりしていた。ところが10月に入って、一週間ほどすると、穂高連峰や乗鞍岳に新雪が積もった。犀川の白鳥湖にもう数羽のコハクチョウがシベリアからやってきたという。我が家から見える常念岳や後立山連峰にはまだ白いものは…

 村上春樹氏への中国人作家の返信を読んだ

村上春樹のエッセイに対する中国人作家、閻連科氏の返信が、週刊誌『AERA』に掲載された。その『AERA』と月刊雑誌『世界』を買いに本屋へ行った。『AERA』はあったが、「『世界』はおいていません。定期購読の方のは取り寄せしています」という…

 仮説実験授業と民間教育

雨包君の家の書棚に、雑誌「たのしい授業」(仮説社)が並んでいた。今年の8月号をぱらぱらめくると、「民主主義と社会の授業」「授業書(徴兵制と民主主義)」「毛沢東崇拝と文化大革命」「教室で使える『遊び』」「漢字の花火大会」などの記録や授業案、読…

 子ども会でサツマイモを収穫した

土曜日、子ども会のサツマイモの収穫をした。 場所は道祖神桜の下のレンゲの里。そこは、レンゲ・プロジェクトがレンゲの種を播いて花を咲かせたり、今年は黒豆を植えたりして、春にはイベント会場にもなった。その一角が今年の子ども会のサツマイモ畑だ。 …

 穴の開いた帽子に靴

<ガーデニングの仕事をしている店の前に、昔のなつかしいオートバイがおいてあった。骨董品なのか、まだ使えるのか。> 横たえた丸太に防腐剤を塗っていた。うつむいているぼくの頭が女房の眼に丸見えになった。 「帽子、穴が開いているう。穴から頭の地が…

 認知症にならないかね

ミヨコさんが、いきなり庭の畑に入ってきて、ランが吠えた。 「なに、鳴くだ」 ミヨコさんはランに近づいて頭をなでた。 何か用があるんだな。野菜の苗を植えていたぼくは手を止めて、ミヨコさんを待つ。 「ねえねえ、医学のことよく知っているかい」 ミヨコ…

 丸太で門柱を作る

「薪ストーブ用に使うかい」と、イワオさんが丸太や廃材を軽トラックに積んで持ってきてくれたのを、工房横に寝かせたまま、半年になる。ご近所で処分してほしいと頼まれて片付けたもので、杉の木の丸太と古小屋の柱や梁だ。薪にするなら、チェーンソーで短…

 「王さん、野菜をとりにおいで」

「董さんと二人で、野菜をとりにおいで」 お昼ご飯が終わって、王さんに電話した。 「董さん、今いない。どこか出かけた」 王さんの中国なまりの日本語が応える。それじゃ、董さんが帰ってきたら、おいでと電話を切ったら、なかなかやって来ず、二人が自転車…