小鳥の食べ物

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 戦時中、飼っていた農耕馬が、戦場へ送られていったのだろう。

 馬「大東号」の出征碑。戦場に出て行った馬や犬の戦死はどれほどの数になるだろう。軍馬、軍用犬は、戦死しても祀られることも弔われることもなかった。

 

 

 

 雪が積もって、白銀の世界に小鳥たちの食べ物が無い。我が家の窓辺に来る鳥たちも、何かないかとと、探している。今のところ、ヘクソカズラの実だけ、窓辺のテラスの床にある。それはジョウビタキの唯一の食べ物。小さな小さな、二ミリか三ミリの大きさの実。

 昨年は、食肉売り場から脂肪をもらってきて置いてやったり、ヒマワリの種を残しておいて木切れでつくった餌場に置いてやったり、リンゴの切れ端を枝に刺して置いたりしたが、食べる様子を見なかった。

 ここ二、三日、ヒヨドリが、白樺の枝の上で、何かを呑み込もうと、奮闘している。口に入らないから、何度もくちばしにくわえた何かを振り回して、五分ほどかかって、やっと呑み込んだ。

 ツグミかなあ。ムクドリかなあ。庭の雪の上をちょんちょん跳び歩き、餌を探している。なーんにも無いなあ。

 米ぬか、どうだい。食べるかい。雪の上にごぼっと置いてやった。

 妻が散歩で出会ったメイちゃん(白のラブラドール犬)のおばさんから、

「ヒエがいいですよ。」

と聞いてきた。店でも「小鳥の餌」に売っているらしい。

夕映えのなかに

 

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 小説「夕映えのなかに」、の二回目の校正をやっている。出版社から送られてきたゲラへの、訂正、削除、追加の、赤ペンの書き込み、校正。上巻だけでも450ページ、作業は思いのほか多い。毎日毎日、読み返しては書きこむ。

 タイトルを「夕映えのなかに」に変えてから、朝はモルゲンロート、夕方はアーベントロートを眺めるウォーキング。赤く染まる山々を見る時の荘厳な思いはいっそう強くなった。

 小説タイトルの「夕映えのなかに」の横に、ドイツ語のタイトル「Im Abendrot」を添えることにした。

 カール・ラッペ作詞、シューベルト作曲の「夕映えのなかに」の曲は、神の恩寵を歌っている。

   おお、「父」よ。

   なんと美しい御身の輝きよ。

   世界は黄金の光に包まれ、

   わが誇りを光で染めあげる。

   私は何を嘆き、何に迷うのか

   何をためらうのか。‥‥


 恩寵とは愛なのだ。

雪の山

 

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 「カイトー、カイト―」

と大声で呼ぶ。カイトは、その声でぴたったと歩みを止めて、しゃきっと頭をあげ、こちらを見る。

 「カイト―」

 何度も叫んで近づいていく。カイトは、望月のおばさんが連れている、柴犬。

 「いい子だね、いい子だね。」

 カイトの頭をなでてやる。

 我が家のランが昨年夏に死んでから、こうして出会う犬が、ぼくのちょっとした慰めでもあり、楽しみでもある。ランは今は、冷たい土の中。毎日毎日一緒に歩いた。

 散歩で出会うワンちゃんは、カイト、ハナ、ヒメ、ポンタ、ユキ、オミソ‥‥。

 姿を消したワンちゃんもいる。

 カイトのおばちゃんは、この地で育ってきた人なのに、山のことはあまり知らない。

 「こうして見ると、周りは全部山だねえ。山にまれれているねえ。あの山は、どこかね。」

 北北東に白い雪山が見える。

 「あの、北信濃の山ねえ。北信五岳だねえ。黒姫山か、妙高山か、高綱山か、火打山か、飯綱山か。」

 「こんなに山々に、ぐるりと取り囲まれているんだねえ。」

 「望月さん、信濃で生まれ育ったんでしょう?」

 「そうだけど、ほんとにすごいねえ。」

 「南の方に雪山、見えるでしょう。あの山はねえ、左から甲斐駒岳、次に北岳、そして仙丈ヶ岳ですよ。

 次に後ろ向いて、北を見るとね、すごいね、真っ白な連峰。左からね、爺が岳の双峰、その右手の勇大な、これまたまっ白な双峰は鹿島槍ヶ岳、それから五竜岳唐松岳、白馬鑓ヶ岳、白馬岳、そして右に進んで、小蓮華岳白馬乗鞍岳、ちょっと下って天狗っ原ですよ。」

 「よく知ってるねえ。」

 「そりゃあ、学生時代や若いころ、全部冬の積雪期、登りましたから。今頃の大雪のときに、あの鹿島槍ヶ岳の東尾根、五竜の遠見尾根も豪雪の中、登りましたよ。

 ちょっと分からないのは、あの東南の方向、美ケ原山と右手の高ボッチ山との間、遠くに尖った山があるでしょう。あれは八ヶ岳かなあ。」

 「ふーん、よく分かるねえ。」

 「地元に人は、案外知らないんだねえ。」

 

 

 

百人一首

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 明けましておめでとうございます。 息子の家族と共に、新年を迎えました。

 

 子どもたちはエネルギーのかたまりです。

 恒例の、百人一首を楽しみました。負けん気の強い、孫の末娘は、叫び声をあげ、闘志むき出しでした。

 じいじは、読み札を高らかに読みました。読んでいると、心にしみじみ感じるものがありました。

 

 

 ながらへば またこの頃やしのばれむ 憂しとみし世ぞ 今は恋ひしき

 

 花さそふ あらしの庭の雪ならで ふりゆくものは 我が身なりけり

 

 世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の綱手かなしも

 

多民族混交国家

 

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机の引き出しのなかから、縦横6センチ、小さな小さな豆文庫、一冊が出てきた。

安曇野の民話 4 八面大王」

 

 こんな話。

    ▽    ▽    ▽

 むかし むかし 有明山の ふもとに

 八面大王と呼ばれる 強いおかしらがいました。

 村人たちは 平地ではお米を作り

 山ぎわでは馬をかって、豊かに暮らしていました。

 ある時、都から、

 阪上田村麻呂という大将軍がつかわされ

 この地を支配しようとしました。

 

 八面大王は 村人と力を合わせて

 暮らしていくことをのぞみました。

 

 ある夜 田村麻呂の夢に

 万願寺の観音様があらわれ

 33節の山鳥の尾羽でつくった矢で射れば

 八面大王を倒すことができると、お告げがありました。

 

 矢村の弥助の家に、お使いが来ました。

 山鳥の尾羽を差し出さないと、

 弥助は遠くのいくさに、かりだされるというのです。

 すると、弥助の女房は、

 「それならば 私 が33節の山鳥の尾羽を持ってきましょう。」

 と思い詰めたように言いました。

 

 弥助は

 女房が持ってきた尾羽で矢を作り

 田村麻呂に差し出したところ、

 たいそうな ほうびをもらってしまいました。

 

 ところが女房の姿が見えません。

 あとに 一通の手紙が残されていました。

 

 「わたしは 三年前 わなにかかったのを助けられた山鳥です。

 みなさん ありがとうございました。

 幸せに暮らしてください。」

 

 山鳥は恩返しに 尾羽を置いて、飛び去って行ったのでした。

 

 田村麻呂のはなった矢に、八面大王は傷つき、

 とうとう いくさに敗れてしまいました。

 それからというもの、春がめぐるたび、

 大王が戦ったとりでのあたりには、

 真っ赤な おにつつじが、咲くようになりました。

 

   ▽   ▽   ▽

 

 この豆文庫の民話、創作だけれど、歴史が匂ってくる。

 古代の、阪上田村麻呂は、倭政権が全国支配をしたときの征夷大将軍

 むかし、信濃のあたりまで、古代は北からの民族が入り込んでいた。蝦夷アイヌ

 九州には、南からの民族が入り込んでいた。熊襲、隼人。

 そして中国大陸。朝鮮半島から、漢民族韓民族、モンゴル系民族が移り住んでいた。

 この列島は多民族が共存していたが、強い武力を持つ集団が支配を貫徹した。けれども、日本は、もともと多民族の混交国家であった。

 

年賀状を出しに行った

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 今朝の常念岳のモルゲンロートは神々しかった。

 夕映えのアーベントロートは、神の恩寵を示していると、ラッペは詠い、シューベルトは曲をつけた。

 その歌曲が「夕映えのなかに」。

 その名をぼくはこの冬に出版する小説のタイトルにした。

 

 今朝のモルゲンロート、その光景もまた、神の恩寵を示していた。

 

 郵便局へ年賀状を出しに行った。

 道に雪が少し積もっているうえに、登り坂だから、自転車を 押していった。朝日が昇る前に散歩に出た時は、雪の上の足跡は、一人だけだったが、九時を過ぎていたから足跡が増えていた。雪の常念岳が青空にくっきりと静まり返っている。

 年賀状を出し、帰り道は、村の中の道を通ろう。そっちは融雪剤が撒いてあるから雪が解けているだろう。

 思った通り、村中の道は、雪がすっかり融けていた。自転車に乗って帰ってきた。

黒豆を炒る

 

 

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まだ少し豆の選別が残っていた。

枝の一部、カラのさや、さやに納まったままの豆、

それらがごっちゃになっている。

そこから黒豆だけを取り出す最後の作業。

風があれば、風に飛ばすのだが。風がない。

 

ブルーシートに残っていた混然としているそれらから、黒豆だけを取り出す

いい方法はないか、

考えた。

そこで「転がし法」。

少しずつ箕(み) に入れて、

箕を傾斜させてゆする。

豆がコロコロ転がって、下の箱に落ちていく。

 

豆を「煎り豆」にした。

古いフライパンに5合ほど豆を入れて、中火にかける。

パチパチと豆のはじける音がすると、木のしゃもじで、かきまぜる。

はじけた豆は、皮の真ん中が切れて、中の黄色い大豆の部分が少し現れる。

しゃもじを、急がずあわてず、回し続ける。

豆のいい香りが少しする。

パチ、パチパチ、

しゃもじを回し続ける。

 

パチパチの音が少なくなってきた。

ほぼ、全部の豆に火が通ったかな。

もういいか。

ニ三粒、取って口に入れる。

炒りたての豆の味は、格別おいしい。

天然の味は、すばらしい。

 

 

煎り豆を、黒酢につけて、やわらかくなったら、

毎朝、食事のスプーンに一杯。