2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

冬来る

島崎藤村の「千曲川のスケッチ」から、一文。 「木枯らしが吹いてきた。十一月の中旬のことだった。ある朝、私は潮の押し寄せてくるような音に驚かされて目が覚めた。空を通る風の音だ。時々それが静まったかと思うと、急にまた吹き付ける。戸も鳴れば障子も…

車座社会は生きているか

ワールドカップ、ドイツチームとの試合中、日本の応援団の歌声が響き渡っていた。 同じユニフォームを着、同じところに陣取り、同じ歌を身振りそろえて歌い、心を通い合わせ、一体感に酔う。入魂のボールがゴールに入った途端、連帯の感情が爆発した。 この…

人類は進化しているか

ETV特集で、「戦火の中のHAIKU」を放送していた。外国でも俳句熱があり、それがロシアやウクライナにも広がっていた。このロシアによる侵略戦争のなかでも、俳句を作っている人がいることに驚く。日本語では5・7・5音を元にする俳句、海外ではそれを自国の言…

晩秋

自由律俳句「つぶやき」 今朝も 野は霧 だれもおらへん ストック突いたら 歩けますよ 久保田の村まで 種をまくの遅れました なんと日は短いね 干し柿 食べてみたら もう甘かった どんどん暗くなる 短くなる 寒くなる それにしても 賢治は早く逝ってしまった …

人類への警告

朝、ふと本棚の背表紙の文字が目に入った。坂村真民著「生きてゆく力がなくなる時」、何箇所に以前のしおりの紙が入っている。 そこをまた繰ってみた。 詩を書く心 死のうと思う日はないが 生きていく力が無くなることがある そんなとき大乗寺を訪ね わたし…

「夕映えのなかに」、読者からの問い

「夕映えのなかに」巻末の、万太郎に退職を決意させた自身の行為は、何故に生じてきたのか、それまでの万太郎の生き方とは異質ではないか。この問いは重い 自身の行為は、自身の精神の問題だった。教員の心の状態は、生徒に跳ね返る。教員は単なる「教える人…

詩の玉手箱 「米」

米が食べられない、そういう時代があった。ぼくの子ども時代、食糧難だった。高い金を出して「闇米」を買う人がいたが、多くの庶民は代用食を食べて、命をつないだ。芋、トウモロコシ粉、カボチャ‥‥。 天野忠という人が、「米」という詩を書いた。 米 この …

「夕映えのなかに」感想(3)

<前川喜平さん(元文部科学省事務次官)から いただいた感想> 戦後教育を真摯に生き、教育とは何かを問い続けた一人の教師の精神の遍歴と奮闘の軌跡を描く自伝的作品。被差別部落や在日コリアンへの差別と向き合い、抑圧的な学校のあり方に抗いつつ、常に…