2016-01-01から1年間の記事一覧

 日本の学校は?

無表情でぶっきらぼーで、どことなく暗い感じのする彼が、小声でぼそぼそ語り出した。それまであまりしゃべりたがらなかったのに、突然語りだしたのは、彼が語る気になったからで、語る気になれなかった状態から解かれたからで、その変わり目が来て表情が変…

 非常事態宣言

今朝は霧が深かった。夜明けとともにランを連れて散歩に出ると、五十メートル先は白い幕におおわれて何も見えない。霧の中からぼんやりと人影が現れた。誰かと思えば中村さんだ。向こうも犬を連れている。 「吉田さんかい、そちらの犬何歳かね。」 「11歳…

[現代社会]子猫と子犬

ホームセンターにペットショップのコーナーがある。 子犬や子猫が、ガラスの小部屋に入れられて、 陳列されている。 種類ごとに一頭ずつ、 商品として、 買ってくれる人が現れるまで、子犬、子猫は小部屋で過ごしている。 暖房完備、快適空間、 ぐっすり眠り…

 とらわれない人

「君の名」のプロデューサー・川村元気が、こんな話をしていた。 あるとき、ケイタイをどこかへ落としたらしい。そのまま、電車に乗った。ケイタイを持っていたら、車内に入ればすぐさまケイタイを手に持ってそれに集中するところだが、ケイタイがないから窓…

  振り込め詐欺

ミヨさんは歩くと脚が痛いから、 新聞に出ていた広告のサプリメントを電話で注文した。 お金を払い込み、送られてきたサプリメントの錠剤を毎日飲んだ。 一か月ほどしたら電話があった。 金を払ってほしい、2万7千円。 私はもう払いましたよ、ミヨさんが答え…

 社会の底

「社会の底が抜けた」という言葉をこの頃よく目にする。底が抜けてしまったら落ちるところまで落ちて行く。崩壊である。今や、底が抜けた感じだ、どこまでも落ちて行くか。危機感がこの表現に込められている。これ以上悪化させない。ここで踏みとどまって、…

阿修羅

奈良へ阿修羅を見に行ったのは二十代の頃だった。五十年も前のことだ。興福寺の五重塔を右に見て、ひとり奈良公園の木立ちと芝生のなかを歩いていった。阿修羅像、天平の仏、それだけを見たい。写真に見る阿修羅の顔と姿には、長い歴史を超越して、今に生き…

 スペシャル・ミール

人生の最期の食事に、 「食べたいものは何でも準備するよ、何が食べたい?」 と言われたら、自分なら何を言うだろう。 朝刊で、藤原新也が、死刑囚が明日は死刑が執行されるという前日の夜の食事のことを書いている。最後に食べたいものを自分で注文できる。…

レタス

朝食の鉢の上にたっぷり積まれたレタスの葉、 みずみずしい緑葉に、 黄色い針のようなものがくっついている。 今朝は氷点下3度、 昨日の雪が、庭の菜園の畝間に残っている。 レタス、キャベツ、白菜、 小松菜、太ネギ、大根、 ホウレンソウ、 どれもこれも…

 「正露丸」

太平洋戦争の激戦地だったガダルカナル島で、今も旧日本軍の兵士の遺骨収集をしている人たちがいるという。 遺骨収集は、日本兵の遺族と、「全国ソロモン会」の人たち、そしてNPO法人「JYMA日本青年遺骨収集団」らが行っている。 島にはまだ約7000人の遺骨が…

 古代の渡来人

万葉集を読むと、次つぎと興味深い発見をする。大伴(おおとも)坂上郎女(さかのうえいらつめ)が新羅の国の尼の理願の死を悲しんでつくった歌がある。坂上郎女(さかのうえいらつめ)は大伴家持の叔母になる。 <たくづのの 新羅の国ゆ 人言を よしと聞こして 問…

 尾崎豊の歌

14年前、日本から郵送した二箱のダンボールはひどい壊れようだったが、中身のたくさんのCDとビデオテープは何とか使えた。その一つ、「北の国から」のドラマを中国・武漢大学の学生たちに見せたときのことを思い出す。思春期に成長したジュンが吹雪の夜、…

 「思い」と「感じ」だけで大統領は選べない

「思いがけない」結果が出たと言う。「思っていた」ことと異なる。したがって「意外」、すなわち「意」が「外れる」。「意」と「思い」が「意思」。 「思い」に人は左右され、動く。一昨日アメリカでは、「思い」が衝撃的な結果を生んだ。 だが「衝撃的」と…

 政治にかかわるみなさんへ!

自転車の荷台に箱を積んだ人が、自転車を押して歩いていました。年老いた女性でした。その横を、トラックや乗用車がスピードを緩めずに飛ばしていきます。道路の脇には歩道はなく、草が茂り、すとんと下がって田んぼになっていますから、怖くて自転車に乗れ…

リニア中央新幹線の建設が始まった

最高時速500キロで疾走するんだという。 リニア中央新幹線の建設が始まった。2027年に東京(品川)―名古屋間が開業し、45年には大阪まで延びる予定だとか。 政治経済の大勢は建設歓迎。 磁力で浮いて、ぶっ飛ぶ。そりゃ夢のような話じゃないか、その夢、実現…

 村の合唱

田舎の村の合唱クラブ「扇町コーラス」は31年の歴史を刻んでいる。昨日、町の芸能祭で合唱を発表した。総勢19人。 この春、これまで11年間指揮してきた82歳の平林さんが引退し、代わってコーラスメンバーの大友さんが指揮をすることになった。まった…

旅人の夜の歌

日野原重明さんが先日書いておられる記事は、安曇野の鳥居山荘での集いの話だった。 毎年そこで開かれる名古屋聖書研究会の「夏の集い」に、日野原さんは今年も参加しておられた。山荘での集いの夕食に大好きなトウモロコシが出た。日野原さんは塩を少しふっ…

 野村哲也先生

野村哲也の名前を見つけたのはこの夏だった。野村先生はこの二月に逝去されていた。同姓同名の人がいるかもしれないが、たぶん間違いないと思う。大阪教職員互助組合の退職者向けの通信誌が定期的に送られてくる。そこに大阪府の教職員だった人の訃報欄があ…

 初霜

秋休みで孫娘が来て一週間暮らしていった。小学校二年生、いまどき秋休みが一週間もある学校って、珍しいだろう。授業数を増やせ増やせの号令と企業の超過勤務・異常残業と重なるものがある。異常残業で自殺した若い女性社員がいたましい。 日本はどこか変だ…

 大峰高原の大カエデ

有明山のふもとにサワラの巨木の群生林があると聞いて、孫のホノちゃんを連れて家内と馬羅尾(ばろお)高原へ行ってみた。松川村のちひろ美術館から山へ入っていく。この夏に息子や孫たちとキャンプに来たところよりも、もっと奥に入った有明山麓と聞いてい…

 大川小学校の、悲劇のなかの謎

直接その人に会ったわけではない。震災後にときどき放送されたドキュメンタリー映像で知った人だけれど、その人がどういう人か、映像から伝わるものが大きかった。 その人は中学校の国語の教師だった。あの3.11の大津波によって、小学生だった娘を亡くしてい…

 小さき命

台風が過ぎた今朝は青空が広がっている。久しぶりに常念山脈の稜線が見えた。 昨夜、風のいちばん強かった時は、午後10時頃だった。ごうごうと吹き荒れ、家がかすかに揺れた。南風が強く、ドーンドーンと家の外壁に打ち付ける何かの音が聞こえた。風の息切…

 無知から来る差別

街頭やインターネットで、「朝鮮人のババア」、とののしられた在日朝鮮人のご婦人が訴えた裁判で、大阪地方裁判所は、 「差別を助長し、増幅させることを意図したものである。人格権を違法に侵害するものであり、人種差別撤廃条約の趣旨に反した侮辱行為であ…

 秋、生命

庭の白樺の一本、 葉がまだ色づいてもいないのに、ほろほろ舞い落ちて、 わずかに木に残っている葉ももうすぐ散るだろう。 木が弱っているのか、カミキリムシなのか。 カミキリが幹に穴をあけて卵をうみつけないように注意して、寸前に三匹この夏つかまえた…

 NHKスペシャル「縮小 日本の衝撃」

昨夜のNHKスペシャル「縮小 日本の衝撃」は、そのとおり衝撃的だった。百年近い国勢調査史上初めて、今年は日本の総人口が減少に転じた。東京都も五輪開催の2020年に減少に転じるという。人口の年齢構成も、これからますます高齢化が加速し、出生率が低下す…

「国際化」から「民際化」へ

探検家でもあった文化人類学者の梅棹忠夫と歴史学者の上田正昭が1999年にこんな対談をしていた。梅棹 「民族間の紛争というものは、人間の業みたいなものですが、必ずしも歴史全体を通してあったわけではありません。激しくなったのは、ここ数百年のことです…

 「歌集 小さな抵抗  殺戮を拒んだ日本兵」<2>

天皇(すめらぎ)の赤子(せきし)の軍になぶり殺しうくるとも吾(あ)は踏みたがうまじ ありとあらゆるリンチをうけて、良三は思う。兵は天皇の子どもだと称し、天皇制軍国主義は将兵・軍を鼓舞した。その天皇の軍によって、自分はなぶり殺しにあいつつある…

 「歌集 小さな抵抗  殺戮を拒んだ日本兵」を読む<1>

「歌集 小さな抵抗 殺戮を拒んだ日本兵」(渡部良三 岩波現代文庫)を購入して読んだ。このような歌集があったことをぼくは知らなかった。新船海三郎君の労作「戦争は殺すことから始まった ――日本文学と加害の諸相」(本の泉社)を読まなかったら、渡部良三…

 膝の故障、脚の筋肉を鍛える方法

このごろ太ももの筋肉が付いてきた感じだ。 一年前から、左脚のひざ、軟骨がすり減って、治療を受けたけれど、軟骨が復活するはずもなく、痛みは続いていた。グルコサミンとかコンドロイチンが入ったサプリメントを何ヶ月間か飲んだものの、効果があるのかど…

 開高健の小説「パニック」……行政関係者はこの小説を読んでほしい

120年目に笹が開花し、実を結び、枯れる。すると、その実を食べるネズミが大繁殖して、農作物も森林も怒涛のようなネズミの大軍に襲われ、大打撃を受ける。120年目の到来が近づくと、それを予測した一人の県職員、俊介が、これまでの動物学の研究にもとづく…