2010-01-01から1年間の記事一覧

 遠藤周作の小説『沈黙』

高君が我が家に遊びに来たことがあった。彼が社会人になり在日関係の職に就いた頃ではなかったかと思う。 彼は一人で信貴山中腹の我が家にやってきた。 何を話したかすっかり忘れたが、文学の話をした記憶だけがかすかに残っている。 彼が帰途に着くとき、ぼ…

 バラの木の、スズメのねぐら

五年前、大和の国・金剛山麓から信濃の国に引越すことになったとき、ご近所の方がバラの苗木を餞別に下さった。 一人の奥さんがモッコウバラ、別の奥さんが白花のツルバラ、それぞれ小さな苗木だった。 モッコウバラを下さった方の家には大きなモッコウバラ…

 年賀状を書く

今朝起きたら雪だった。 雪は2、3センチほどで、舗装道路は凍結してつるつるだ。 危険だから草の生えている野道を散歩した。 昨日も天候が悪く、寒気がきびしかった。だから外仕事はやめて、終日部屋の中で過した。 一日部屋の中で何かするというのは久し…

 火を焚く

正月明けに行なわれる「三九郎」 薪ストーブの中で薪が燃えて、炎を見るだけでも温かい。 「かくらんの会」、アキオさんとヨウ子さんのフランスの旅報告は耳のごちそう、撮ってきた写真は目のごちそう、手作りの持ち寄り料理はたいへんなごちそうです。 スト…

 腰を落とす

公民館で正月のしめなわ、松飾り作り 先日、白鵬が菅首相を訪問して、励ました。 「相撲では、腰を落として土俵際でこらえるんですよ。」 首相も腰を落としてやんなさいよ、と。 「腰を落とす」という方法、その言葉に託したものがある。 重圧に押しひしがれ…

  高賛侑君のひたむき人生

ぼくが教員になって3年目、ぼくのクラスの男子委員長は高君だった。 淀川中学校3年のそのクラスは、自主的な学級活動が実に活発だった。 6時間目の授業が終わるとショートホームルームの終わりの会になるが、担任の連絡以外はほとんど何もしないで下校す…

 安曇野の道の名前

「日本サラダ街道」という名前の道がある。安曇野からリンゴ園の中を通って山形村、朝日村に至る道だ。 目的地へ最短距離で行く道ではないから、左折したり右折したり、分岐点に「日本サラダ街道」と書かれた小さな標識があるのだが、どこが出発点でどこまで…

 「イマジン」

ノルウェーのオスロで行なわれたノーベル平和賞の授賞式に劉暁波氏は出席できず、彼の文章が代読された。 「私の人生において、1989年6月は重要な転機だった。 私はこの年、米国から戻って民主化運動に参加し、『反革命宣伝扇動罪』で投獄された。そし…

 冬の夜、慶太君歓迎食事会

12月10日のこと。 夕方から雪が降り出し、安曇野に移住してきた慶太君の歓迎食事会があるというのに、次第に降雪は激しくなった。 この頃は暮れるのがめっぽう早い。雪の日となると五時前からどっぷり暗い。 我が家を出て山麓の道路を進んで行くと、闇の…

 集団のけんか

昔、いわゆるギャングエイジの子どもらは、隣村や隣町の子どもらと集団でけんかすることがあった。 昔の子どもらは、居住地域に遊びの集団ができていて、毎日外を走り回って遊び呆けていた。年上の子が年下の子らを仲間に組み入れ、カバーしながら遊ぶ。 子…

 追悼、槙枝元文さん

槙枝元文さんの訃報を告げるTVニュースが耳に入った。 槙枝さんが亡くなられた。ああ、ついに亡くなられた。 2年前ごろから槙枝さんは好きな菜園での野菜作りにも出かけていない、と聞いていた。 弱っておられるのではと案じていたら、今朝のニュース。 …

 唐突に浮かんでくる記憶

今朝は霜が凛凛と、クヌギの林を過ぎてふっと頭に浮かんだ記憶があった。 誰の小説だったか、記憶の引き出しがきしんで名前が出てこないが、そのシーンだけは頭に浮かんだ。 教師は朝礼台の上で子どもたちに別れの挨拶をした。 「帽子片手にみなさん、さらば…

 依存しすぎ

依存症では、ニコチン依存症、摂食障害、薬物依存症、アルコール依存症、 ギャンブル依存症、インターネット依存症、ケイタイ依存症、 借金依存症、人間関係依存症などいろいろあるけれども、 依存症に陥っていることを、自分では気づかずにいることが案外多…

 職の安定と社会の安定<孟子の教え>

古典の漢文教材の中に、孟子の政治論がある。 「2300年前、中国戦国時代の思想家、孟子がこんなことを言ってるんですよ。教材を読んでみましょう。」 孔子と孟子は、「孔孟の教え」と言われ、儒教儒学として日本に影響を与えた。 孟子が言っているのは、「無…

 良い人、悪い人

芥川龍之介の児童文学『蜘蛛の糸』、大泥棒カンダタは、人を殺したり、家に火をつけたり、いろいろな悪事をはたらきました。 それがためにカンダタは、死後地獄に落ち、血の池地獄で苦しみます。 それをお釈迦様がご覧になります。 カンダタは生前一匹の蜘蛛…

 干し柿とラン

昨夜、ランがげろげろと戻した。 晩ご飯で食べたドッグフードが胃液にふやけて床の上に出ている。 どうしたん? 何か悪いもの食べた? 変なもの食べたのか? ランは神妙な顔をして、また毛布の上に身体を伏せた。 それにしては吐いたものの量が多い。おかし…

 木村秋則さんの自然農法と日本の自然教育

穂高の駅前通りの古本市に行った。 出店したい人が歩道で、段ボール箱に入れた古本を並べている。 数十冊の本を前に置いて、売り主がのんびり本を読んでいる。 売り主のいない、本だけのところもあり、そこは1冊100円を箱に入れればいい。 そこで見つけた1…

 政治家たちの姿

難癖をつける、いちゃもんをつける。 「その目が気に食わない。」 「その言い方が腹立つ。」 対立関係にあると、相手に対して攻撃材料になるものを鵜の目鷹の目で探す。 そして言葉尻をつかまえる。 集団と集団の抗争になると、それがゲバルトにまで行ってし…

 安曇野、秋

農業高校の文化祭に牛がいた 土蔵にはシンプルな美がある 木に残る柿の実 山晴る。建物の狭間から眺める蝶ガ岳は高い。 早朝の桜落葉 青空のリンゴ 日の出の霜野と常念岳

 貞子さんからの贈り物『賢治の手帳』

貞子さんから送られてきた小包を解いたら手帳が出てきた、黒い小さな手帳、 ほんにまあ、これがその手帳なのか、賢治の手帳だよ。 「雨ニモマケズ」が書いてあった、あの手帳の複製。 添えられていた貞子さんの手紙に、 「宮沢賢治の『雨ニモマケズ』の詩が…

 城雄二さんの「炭素循環農法」報告会

朝の常念岳 地球宿で、城さんがブラジル帰国報告会を行なった。 古民家の2階、下で薪ストーブが燃え、宿泊客が食事をしている。 写真を映写しながら城さんは、いつものボクボクとした語り口で語っていく。 ブラジルで「炭素循環農法」、略して「たんじゅん…

 ペシャワール会、命を育む水路づくり

安曇野の農業用水路にもこんな橋が架かっている アフガニスタンでもう27年、農村医療と農村復興をめざして活動しているペシャワール会。 NHKは、ペシャワール会のリーダーである中村哲さんが現地住民とともに水路を完成させたスペシャル番組を報道した…

  二つの詩、真壁仁と石垣りんの「峠」

日本は峠の国です。 山国の日本では、遠くへ出かけるには山を越えねばなりません。 汽車や自動車が走るようになるまでは、人は歩いて旅をしました。 山の向こうへ行くには、山並みのいちばん低いところを越えていきました。 そこが峠になりました。 東に行く…

 自然界の適期

これも適期遅れだな、と思いつつ、ぼくが種から育てた紫タマネギの発育不十分な苗を今日定植した。 やはり種から育てた黄色タマネギの方も一昨日定植したが、プロの倉田さんにいただいた苗に比べると小さかったけれども紫のよりは大きかった。 黄色と紫は同…

 干し柿

鳥たちへの贈り物 日曜日は地区自治会の共同作業日だった。 午前8時から各班が分担して農業水路の掃除をする。 当地区は十数人がそれぞれ水路沿いに歩きながら草を刈ったり、水路をさらえたり。 作業に来ておられたイワオさんの奥さんが、 「柿、私の家の分…

 安曇野スタイル2010

蕎麦屋の裏に陶芸の窯 赤沼家の居間、昔は馬小屋 赤沼家の外壁 裏木戸 炭俵 11月3日から始まった『安曇野スタイル2010』、 サチヨさんを誘い、洋子と3人で車で出かけた。 自然・アート・暮らしを通して、安曇野の魅力を表現しようとするこの安曇野スタイ…

 野菜のバトンタッチ

秋が急速に深まり、ここ数日朝霧が田野を覆う。 夜明けの気温が0度以下になり、雪かと見まがうほどの霜が降りている。 夏から秋にかけてたくさんの贈り物をしてくれた野菜たちは、もうここで終わりですと、 数日前まで緑の葉を茂らせていたのに、静かに枯れ…

 灯りが点った

工房建設の最後の難関は、水道工事と電気工事、 両方とも自分には資格も専門技術もない。 築80年の金剛山麓の古家に住んでいた5年前、居間も寝室も一日中、陽が射さず、雨や曇りの日は電灯をつけなければならないほど暗かった。 照明を増やして、部屋をも…

 小さな同窓会

水車工房と常念岳 夫婦の道祖神 正之さんからメールが届いていた。 地球宿で開かれた、小さな同窓会。 薪ストーブが燃え、背中のほてりと飲む酒と、 ぐつぐつ煮えるアイガモ鍋。 青年農夫のタカオ君がさばいたアイガモ刺身に舌鼓を打ち、 十数人の老いたる同…

 国民性というもの

昨日は美しい夕焼けだった。が今日は台風の影響で雨が降り続く。 池澤夏樹がおもしろいジョークを教えてくれた。 国民性というか、諸国の国民の性格傾向をヨーロッパ現地で聞いて書いているのだが、 こういうジョーク。 天国では、イギリス人が警察官で、フ…