緑うるわし

15年前、庭に白樺の木の苗を一本植えた。その苗は成長して、梢が屋根を越すまでになった。ところが、カミキリムシが飛んできて幹に卵を産み、その幼虫が幹の中で育って樹を弱らせ、あれよあれよと思う間に樹が枯れてしまった。 がっかりしていたら、木の根の…

イングリッシュガーデンへ行ってきた

梅雨の晴れ間に、蓼科へ行った。 ワイフがぜひともバラクラのイングリッシュガーデンに行きたいという。少し道を迷い、八ヶ岳連峰が前方に現れたところで、途中のゲストハウスの奥さんに道を聞いた。 目的地のガーデンに到着、標高が高いせいか、バラの開花…

 大峰高原の大カエデ

有明山のふもとにサワラの巨木の群生林があると聞いて、孫のホノちゃんを連れて家内と馬羅尾(ばろお)高原へ行ってみた。松川村のちひろ美術館から山へ入っていく。この夏に息子や孫たちとキャンプに来たところよりも、もっと奥に入った有明山麓と聞いてい…

 街路樹と樹林の価値<2>

1894年(明治27)の夏、ウォルター・ウェストンは、中部日本のアルプス地帯を北から南へ徒歩で縦断した。糸魚川から松本までは、アルプスの東麓を歩き、安曇野に入った。安曇野を通過するとき、次のような記録を残している。 「土曜日(七月二十八日)、信州…

 街路樹と樹林の価値

仙台を出て東京の明治女学校で学び、安曇野の相馬愛蔵のもとに嫁いできた相馬黒光の随筆「穂高高原」には、安曇野の空に突き刺さるような屋敷林の針葉樹のことが少し皮肉な思いを込めて書かれている。安曇野の屋敷林は各家の自己主張であり、アイデンティテ…

 「ルリユールおじさん」という絵本

「ルリユールおじさん」という絵本がある。(いせ ひでこ作 理論社) 一人の少女が何度も何度も読んだたいせつな植物図鑑がぼろぼろになり、ページがばらばらになった。どうしたらいいだろう。少女は図鑑をなおしてくれる製本屋を探して歩き、パリの路地裏で…

 気づかない水不足

昨日は一日中風が吹き荒れた。今日は昨日の風がうそのように、穏やかに晴れた。夜中に少し雨が降ったようだ。 サツマイモの苗を植えに、今朝クルミの木の畑へ行った。 草を欠き、畝をたててサツマイモのつるを差し込んでいった。気温がぐんぐん上がっている…

 ケヤキを守る市民たち <井上靖の小説「欅の木」>

井上靖の小説「欅の木」のなかで、ケヤキを守る会をつくった市民たちが講演会をひらき、市民が演壇に立って話をする場面が登場する。昨日書いたのはその一人、ケヤキを守るために自分は命を捧げてもいいと戦地から手紙を送って戦死した弟のこと、銭湯の主人…

 伐られていく大木

「小太郎さんは、年に一回か二回、帰ってきはります」 近所のおばちゃんがそう言ったが、一度も顔を見たことがなかった。金剛山麓の村、そこに小太郎さんの実家があった。小太郎さんはT.S氏だった。池口小太郎が本名の、作家、評論家、政治家、実にさまざま…

 生きる樹、死んでいく樹

庭にある二本のライラックの樹のうち、紫花一本が生き残り、白花のほうが完全に枯れてしまった。5年前に苗を植え、2メートルを越す樹に育って花は芳しい香りを放ってくれていたのが、その一本が去年の秋にみるみるうちに元気をなくし枯れた。原因は多分根…

 中沢義直さんと会ってきた

中沢さんと会ってきた。 写真家の中沢さんのことを知り、著書「安曇野雑記」を読んでから、一度会いたいと思いつづけ、朝電話を入れた。 「夕方がいいですね。5時ごろがいいです。」 元気な声だった。 仕事が終わってからのひととき、もう暗くなっているこ…

 樹木の持つエネルギー、樹のいやし

神社を通り抜けて、山のほうに登っていく。 林業会社の材木置き場に来ると、伐採されて玉切りされた大きなケヤキの木が置かれていた。 その太さは、大臼を作れそうなほどだ。 どうしてこんな木を切ってしまうのか、どうして残せないのだろうか。 クルミの大…

 聖なる樹

桜の古木、4月開花のころ 午前5時半、ランを連れて散歩に出た。 すがすがしい朝の野なのに、心が晴れない。 その理由は明らかで、それが頭の中をぐるぐるめぐっている。 うつうつとした気分で、農業高校の農場まで来た。 農場の真ん中には桜の大木がある。…