豊かな感性
こんな描写もある。 「雨が降り始めた。メガネ屋の店頭にぶらさがっている湿度計人形を見て、心配していた雨だ。雨は翼をそろえて飛ぶ鳥さながら、ぎっしり並んで降ってくる。雨は離れ離れにならない。てんでに自分の場所を占めながら、後に続くものを引き寄…
フランスの小説家プルーストの「失われた時を求めて」はまったく長大な小説で、描写は複雑、精密をきわめる。記憶と意識をたどり、プルーストの生涯と人々の生を、死の数日前まで書き続けた。 こんな文章がある。こういう文章に出会うと、ぼくはしばらく立ち…
脚本化の倉本聡は今年80歳になったそうだ。 こんな講演記事が載っていた。 娘夫婦が富士山に登ってきたという。5合目まで車で行って、そこから登った。それを聞いて思った。我々は、文明が進歩して5合目が当たり前だと思うようになってしまっている。それを…
ライラックの花が咲き出した。 千年前や二千年前の人々の生活を想像するとき、はるかに遠い過去のように思えるけれど、 今は百歳生きる人は珍しくなく、百歳十人が並べば千年になるのだから、 千年前という昔は、ついこの前のような気もする。 それでも、そ…