現代社会

 近づくソチ冬季五輪

今日は日の光に熱がこもっていた。氷点下の、体を貫くような冷気が、日が昇るにつれて上昇し、昼間は日射が肌をほかほか温めていく。ランの黒毛は日を吸収して、縁台で四肢を伸ばして寝ている。きらめく太陽にはまぶしい輝きがあった。まだまだ冬の日が続き…

 原発の廃炉 

近い将来、危険がわが身に及ぶことが予測されたら、だれでも真剣になる。将来の、自分の子ども、孫の代が危ないと知ったら、やはり真剣に考える。では、人間は、どれぐらい未来まで想像して真剣になれるだろうか。 100年かけて取り組むというイギリスの原子…

 歴史と民主主義<4> 考えを変えられない「悲劇」

自動車教習所で、免許を取るための講習を受けると、「だろう運転」について教えられる。「相手はよけるだろう、相手は曲がるだろう」と、「大丈夫だろう」の楽観予測をして事故を起こすことが多いからである。走り出すと、「相手はよけないかもしれない、ま…

 歴史と民主主義<3>

「昭和万葉集 巻六」(講談社)のなかに、「獄中の歌」と名づけた項がある。戦争中に、治安維持法違反で獄につながれた人たちの歌である。 「短歌評論」という雑誌があった。労働者の生活実感や政治批判の歌も掲載されたために弾圧され、1938年1月廃刊になる…

 歴史と民主主義<2>

1942年(昭和17)の正月を人々はどんな気持ちで迎えただろうか。 その前月に、日本は米英を相手に戦争を始めていた。それから昭和20年までの正月は戦時下の正月だった。 人間の常識を超え学識を超えておこれり日本世界と戦ふ 南原繁 八日の朝生徒の前にをの…

 歴史と民主主義<1>

2013年が終わる。振り返ると今年も、世界で日本で、国レベルで地方レベルで、これはいったいどうなっているのだと思うことが、頻発した。民主主義について議論も起こっている。 何かがおかしい。何かが狂っている。どうしてこうなるのか。その原因を究明する…

 それは秘密

都合の悪いことは隠す。 不利になることは隠す。 悪いことは隠す。 批判を受けることが予想されることは隠す。 隠していることがあばかれないように、 隠していることが知られないように、 隠していることを隠す。 何が隠されているのか分からない。 隠され…

「ムラ社会」というもの

大根 日展のような芸術の世界でも、力の構造ができていた。美術、書道、工芸の作品が入賞するためには、権威をもつ幹部のお偉方に取り入らなければならない。お偉方が主宰する会に入って、金を積んで、目をかけてもらって、そうして日本最大の芸術展に入賞す…

 「中国激動 さまよえる人民のこころ」

録画しておいた「中国激動」というNHKスペシャルを観た。シリーズのその回は「さまよえる 人民のこころ」というタイトルだった。 共産主義では宗教は否定されてきた。が、現代中国では宗教はある程度認められている。経済成長が著しい中国で、今何が起こって…

 韓国の樹木葬

ぼくの育った大阪の南河内には巨大な天皇陵があった。我が家のすぐ裏には仲哀天皇陵、1キロほど東に応神天皇陵がある。これらの大古墳を含む古市古墳群には、古墳が14基あった。今それらはうっそうと茂る森をつくっている。 仲哀天皇陵と称される前方後円墳…

 ヒロシマ、被爆から68年

原爆投下から68年、テレビで広島平和記念式典を見ながら朝8時15分、黙祷した。1分間の黙祷の間に、原爆投下直後の被爆者の姿が脳裏をよぎった。 2004年に92歳で死去した山代巴という人がいた。山代巴は次のような経歴の持ち主だった。1912年 広島県栗生村に…

「全日本おばちゃん党」

「全日本おばちゃん党」というのができたという。大阪の中年女性中心に、「党員」1000人超とか。コメントをくれたmichiさんからの情報を得て、毎日新聞を読んでみた。 「全日本おばちゃん党」の谷口真由美代表が語っている。 「オッサン政治劇場に嫌気がさし…

 人を化かした昔の狐、狐に化かされた昔の人間

臼井吉見記念館 「遠野物語」(柳田國男)には、村人から聴き取った昔の不思議話がたくさん収録されている。ザシキワラシの話、山の神の話、山男の話、河童(かっぱ)の話など多種にわたり、キツネの話もある。「遠野物語拾遺」と合わせると、キツネの話は1…

 「水俣」の死者とともに、石牟礼道子

石牟礼道子は昭和2年(1927年)生まれだから、現在85歳になる。石牟礼道子が「苦海浄土」の一部を発表したのは昭和35年(1960)、完成本が出版されたのは1970年だった。石牟礼道子は16歳から20歳まで小学校の代用教員をしていたことがある。水俣病が発生して…

 死者とともに生きること

高市早苗はどうしてあのような発言をしたか。高市政調会長は、「原発の放射能によって死亡した人はいない。だから福島原発はそれほど深刻な被害ではなかった」と言いたかったのだろうか。原発推進の方向に凝り固まっているから、このような意識になり、死者…

 写真集「隣人 38度線の北」<2>

この写真集の写真には、説明が全くついていない。だから写真集を見るものは写真を見て想像するしかない。北朝鮮にとっては、撮られる写真が国にプラスになるかマイナスになるか、どのような目的でどんな意図で発表されるか、と神経質になるだろう。さらにそ…

 写真集「隣人 38度線の北」

「隣人 38度線の北」(徳間書店)という写真集を図書館で見つけた。北朝鮮の写真集だ。撮影は2011年から2012年にかけて4度北朝鮮を単身訪問し、合計して一ヶ月間ほど滞在している。写真家は初沢亜利氏、153ページに及ぶ写真の最後に、滞在記が14ページ掲載さ…

 日本は夢の国ではなかった

昨日、今年の初音(はつね)を遠くで聞いた。今日は2回目の声を近くで聞いた。今年もやってきたカッコー。 ツバメがやっと家近くまで来た。隣家の軒下に飛び込んでは飛び出し、巣の場所をさがしている。だが、うちの特設巣箱をのぞきにきた様子がない。来い…

 気がつけばファシズム

原発被災地から他の都市に避難している人たちに対して反感を持つ人が出てきており、「被災者は帰れ」という落書きがなされている。帰りたくても帰れない人たちの存在をやっかいなものに思う人がいるらしい。震災直後は被災者を助けようとして受け入れた地域…

 人と街路樹の関係

職場に向かう南松本のその道は、街路樹の新芽が勢いよく伸びていた。あざやかな新緑にはさまれた道路は、一変して心を和ませる緑道に変わっている。生きる力を感じる街路樹はすばらしい。並木で思い出す。 転校した小学校の中を小川が流れていた。小学1年生…

 内田樹「壊れゆく日本という国」

内田樹(現代思想家)の寄稿を読んで、うなった。(朝日新聞5月8日) 「国民国家としての日本」が解体過程に入った、という論である。「国民国家」とは、「国境線を持ち、常備軍と官僚群を備え、言語や生活習慣や伝統文化を共有する国民が、そこに帰属意識を…

 刑務所のなかの中学校

松本市の少年刑務所には中学校の分校がある。少年という言葉がついているが、大半が20代で、さらに高齢の人もいる。刑務所の中に中学校があるのは、全国でも松本だけである。この学校の存在は以前テレビのドキュメンタリーで報道されたので知っていた。最…

「地域回想法」の講座は楽しかった

「子どものころ、どんな遊びをしましたか。」 このテーマになって、輪になった6人が順に話しはじめた。出るわ、出るわ、このテーマでしゃべりましょう、という時間は20分、それを超えても止まらない。 子ども時代を山口県岩国の海辺で育った富美恵さんは、夏…

 ブッシュマンと虫

イナゴやジバチを食べる信州の食文化のように、アフリカのカラハリ砂漠の住民も昆虫を食べる。ではどんな昆虫を食べているか。ブッシュマンの昆虫利用について人類学者の田中二郎さんはこんなことを書いておられる。 「カラハリは乾燥していて植生もアフリカ…

 ブッシュマン、永遠に

世界のどの民族も、グローバルな文明の変遷に翻弄されて、その民族なりに生き方を変えざるを得なかった。アフリカ・カラハリ砂漠の少数民族、ブッシュマンも、長い長い歴史を生きてきた狩猟採集生活が破綻し、政策によって定住という生活を強いられてきてい…

 フラッシュ・モブというサプライズ

人間には人を驚かせておもしろがる性質がある。 「びっくり箱」というおもちゃがある。人を驚かせようと、かわいい箱に仕組みをつくる。イベントで作られる「お化け屋敷」は、驚かせる楽しさと驚く楽しさを目的にした仕掛けである。 人を驚かせる、遊びとし…

小布施町には127軒のオープンガーデンがある

自分の家の前に椅子を置いて、腰をかけているお年寄りがいる。何をするでもなく、通りを眺めている。中国の古い街でそういう姿を見ることがよくあった。漫然とどこを見るともなく、腰を下ろしている老人がいる一方、数人で囲碁か将棋かマージャンかをしてい…

 国民の責任

「不慮の災難」という。「不慮」は思いもかけないこと。 まさかそんなことが起こるとは考えもしなかった。エジプトで熱気球が燃えて落下し死亡、アルジェリアでテロによる技術者の死亡、毎日毎日、交通事故に火災事故、殺人事件など絶えることがない。 日常…

夢うつつの頭に浮かんでは消える二本の道があった

朝方、夢うつつの頭に、浮かんでは消える二本の道があった。眠りながら考えていた。 1945年の敗戦をゼロ年とし、それから今年の2014年まで数えると69年になる。 次に、明治維新のゼロ年を起点にして、そこから同じ69年を数えた。すると1937年だ。このふたつ…

 広島県江田島市の実習生による殺傷事件を考える

穂高東中学校の校庭 またも不幸な事件が起こった。広島県江田島市のカキ養殖場での、中国人実習生による殺傷事件である。受け入れ事業主の社長ともう一人が死亡した。実習生は昨年9月ごろ日本に来たというから、半年になる。順調な実習生活であれば、仕事に…