安曇野

消えていく「ずら言葉」

信州安曇野に移り住んで、この四月で18年になる。信濃の山に登り始めたのが18歳の時だったから、信濃は僕の人生の大半を占める。 大学山岳部の頃、夜行の蒸気機関車が木曽路を過ぎ、松本平に入ると夜が明ける。窓を開け、ひんやりと澄んだ外気を吸い込むとき…

貞享義民とおしゅん、朗読劇

11月23日に、安曇野市三郷にある貞享義民記念館で、「おしゅん 加助騒動と少女」朗読劇の最終公演があり、洋子と二人で鑑賞してきた。 貞享義民記念館は、江戸時代、飢饉に苦しみ、重い年貢にあえぐ百姓たちが、支配者の松本藩に立ち向かった農民一揆の義民…

「田舎の四季」という歌

野を見回すと、水田の間に麦畑もある。麦は茶色に稔っている。昔から麦畑にはヒバリが巣をつくった。ところが今、ヒバリの姿がない。以前は今頃、麦畑から揚げ雲雀がさえずりながら、空にのぼっていたのに、ああ、この頃、ヒバリの声も聴かない。さらにツバ…

野のベンチ

見渡す限り輝く緑 大地から噴き出す緑。 「野のベンチ」の横に、もう一本、ムクゲを植える。 ツルハシを持っていって、植え穴を掘り、 背丈近くまで生長していたムクゲを 手押し車に乗せて運び、 穴に土付きの根っこを入れた。 周囲の土をかぶせて、足で軽く…

冬来る

島崎藤村の「千曲川のスケッチ」から、一文。 「木枯らしが吹いてきた。十一月の中旬のことだった。ある朝、私は潮の押し寄せてくるような音に驚かされて目が覚めた。空を通る風の音だ。時々それが静まったかと思うと、急にまた吹き付ける。戸も鳴れば障子も…

彼岸花咲く

今年も、庭の曼殊沙華が花開いた。十数本が固まって咲いている。 この花は彼岸のころに咲くから「彼岸花」とも呼ばれている。細い薄緑色の茎がまっすぐ地面から、二、三十センチぐらい伸びてきて先端に赤い花を開く。 十七年前、奈良県御所市に住んでいた時…

フキノトウ

朝夕のウォーキングで出会う柴犬のワンちゃん、名はカイト。 「カイト―、カイト―」 ぼくは、カイトの体をなでまくる。 カイトを連れたおばさん、 「私にはひ孫がいるんよ。二歳なんよ」 「え? ほんとう?」 考えてみれば、おばさんが23歳の時に女の子を生ん…

キツネ

朝、日の出前、氷点下10度。二本ストックをついて散歩に出る。少し雪が残っている。 第二ベンチに来ると、眼の端に何か動くものが見えた。広がる田野が一瞬に視野に入り、ほんのかすかな動くものも、眼はとらえる。 数枚向こうの田圃の畔、何だろう。身動き…

年賀状を出しに行った

今朝の常念岳のモルゲンロートは神々しかった。 夕映えのアーベントロートは、神の恩寵を示していると、ラッペは詠い、シューベルトは曲をつけた。 その歌曲が「夕映えのなかに」。 その名をぼくはこの冬に出版する小説のタイトルにした。 今朝のモルゲンロ…

モルゲンロート

痛む膝も、両手のストックをついて、膝をあげるように大股で歩くと、いくらか痛みは和らぐ。 大股は運動によい。意識しないとすぐに小股になる。 メイちゃんに会う。おじちゃんと、おばちゃんが、毎日メイちゃんを連れて長距離の散歩をしておられる。白のラ…

ベンチ横に樹を植えた

廃材を利用して作った「野のベンチ」の横に、一メートルほどはなして木を一本植えた。真夏になって、かんかん照りになったとき、ベンチに座った人に日陰をつくってくれるベンチになればいいな。そう思って、農道わきの農地の所有者に許可を得て、まずは第二…

安曇野の地下水

我が家では、愛称「しゅわさかさん」を自家培養して飲んでいる。沖縄、比嘉照夫さんの研究開発したEM菌が元になっているらしい。そのEM善玉菌を元にした「しゅわさかさん」に初めて出会ったのは、三年前の「福島の子ども、保養キャンプ」のミーティング…

政策を進める人よ

ある現場に行政上の課題が出てきたら、まず現場へ視察に行くだろう。当然のことだ。現場を観ないで政策を決めることはできないはずだ。 しかし「私は現場主義です」と選挙の時に主張していた人が、当選して庁舎に入ると、現場を観ないで政策を決めている。 …

「どあい自然公園」が危機に直面

三郷地区の、黒沢川上流にある「どあいの森」、「安曇野市どあい自然公園」が今、危機に直面している。 そこは、「安曇野ワイナリー」からさらに黒沢川をさかのぼったところにある。 長年その谷の一軒家に住む大浜夫妻は、そこを活動拠点にして「どあい冒険…

ヒバリが鳴きだす

朝六時、日の出が早くなった。もうすぐ日が昇る。 野の道で、塚原から歩いてくる、いつもの散歩おじさんに出会う。 挨拶をかわす。 「今日は温かいですねえ。」 「温かいですねえ。ヒバリが鳴きだしましたねえ。」 「えっ、ヒバリ? ほんとうだあ。ヒバリだ…

今朝公民館で思ったこと

今朝は8時から地区の公民館の掃除当番だった。 毎月第二日曜日が清掃日になっている。ぼくの所属する班ともう一つ別の班が、今年度一月十日が当番。 ぼくの班はたったの4軒。旧村地区の外に後から建てられた住宅地。もう一つの班は村中の11軒。 ぼくは今…

月が沈み、日が昇る

朝6時前、野を歩き始めた。夜が明け始めている。 西の山へ、満月が死沈んでいくところだ。北アルプスの雪山にはまだ朝日は当たっていないが、山々は浮かび上がっている。 昨晩、見た、ビーバームーンの半影月食。その満月が一晩空に輝きつづけ、今沈んでいく…

相変わらす、「おジョウ」が窓にちょっかいを出している。 ショウビダキだから「おジョウ」と呼んでいるが、実はオス。いつも一羽。まだ彼女がいない。 根っこのところで切り取って車で運んできた黒豆、乾燥したから、株を竹刀でたたいて、サヤから豆を取り…

お向かいのミヨコばあちゃんが老人施設に入って、家は甥っ子とかに譲られ、この二年ほど空き家になっていたが、昨日一日でたたきこわされた。 十台ほどのトラックが、家財道具などを運び出し、つづいて大型ユンボが、二階の屋根から鉄の手を振り下ろして、ガ…

霧の朝

今朝は五時半にランと散歩に出た。まだ明けていないが、薄暗がりのなかに夜明けの気配がある。深い霧が出ている。 霧は、位置によって濃淡がある。道は見えていたが、五十メートル離れたところは見えない。 歌が湧いてきた。子どものころ何度か聞いて覚え、…

信州の方言

朝、桜の木の手前で、カイトを連れた望月さんに出会った。 「昨日は、よく降ったねえ。」 「よく降りましたねえ。」 「散歩、行きましたあ?」 「いや、昨日は散歩に出ませんでした。ランは雨の時は家の近くでトイレさせました。」 そこから家での犬トイレの…

夏の合唱団」

夕闇が深まったころ、ランを連れて近所の散歩に出た。 街灯の灯に、道の上の長い紐のようなものが、浮かび上がった。前かがみになって見るが、ヘビの死体のようでもあるし、草の太い茎のようにも見える。何だろう。明日明るいときに見よう、そう思って帰って…

道で出会った人

今朝、野の道の向こうに、赤いズボンに白いシャツを着た女性らしき姿を見た。近づいていくと、やはり女性で、彼女は道にしゃがんで、何かを見ている。 何をしているんですか、問いかけると、「みみ‥」なんとか、わけの分からない言葉を言った。地面を見ると…

大嵐

昨日の午後の嵐はすさまじかった。 雷鳴がとろき、強い東風がしのつく雨を横殴りに吹き付ける。バリーン、裂くようなカミナリ。危険を感じて、パソコンの電源を切る。激しい風と雷雨は二時間ほど続いた。 嵐が去った今朝、日の出前の、ランとのウォーキング…

緑樹の木陰を 街路にも病院にも

ぼくは何度か発信してきたけれど、無名の一市民の意見なぞ風のごとく、過ぎ去っていく。 この炎天下、野の道を歩く人は一人もいない。朝、四時ごろ、日の出前、この時ばかりは、すがすがしい。野を見渡せば、あっちに一人、こっちに二人、歩く人を見かける。…

広報あづみの

安曇野市が発行する「広報あづみの」、今月号の記事は久しぶりに読ませるものだった。 記事は、安曇野に生息する貴重種のオオルリシジミという蝶を保護するために食草のクララを植え、穂高西小学校の子どもたちが取り組んでいる話だ。 その次に「安曇野の木…

郷に入れば‥‥

「郷に入れば郷に従え」 そうではあるけれども。 居住区の鎮守は、諏訪神社。 昨日は、地区の公民館で、自治会費である区費の納入と、神社費の納入の日だった。 ここに住んで15年余、「郷に入れば郷に従え」で、五、六年ほどは神社費を納入してきた。 移住…

日本語教室再開

4か月もコロナウイルスのために休みになっていた日本語教室を昨日再開した。 午後6時半から、七人のスタッフと二人の市の係員とで会議を開き、今後の方針とこれまでの状況を話し合った。 公民館の部屋は、エアコンは使わず、窓もドアも開け、風を通す。全…

リーフ・レタスとベンチづくり

リーフレタスの苗がたくさんできたので、この便利な野菜をみんなに食べてもらおうと、あちこち持って行った。 ソウゾウ君は雨の中取りに来たから、リーフレタスとゴーヤの苗をたんと持って帰ってもらった。 ソウルさんとこへ10本持っていくと、ご夫婦が庭…

六月が来た

軒の小鳥の巣、ツバメは来ず、どうもスズメが利用してヒナを育てているようだったが、かすかにチイチイと聞こえるヒナの声がぱたっと聞こえなくなったのは一週間ほど前だった。 巣立ったかな、そう思っていた。電線に止まってチイチイ鳴いている一羽、あれは…