2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

 オリンピックの異状

ピョンチャン冬季オリンピックが終わり、これからパラリンピックが開催される。 雪と氷の教義を観ていて、「よくやったねえ」と思うのは、世界からやってきたアスリートたちもそうだけど、韓国の人びとがこの大イベントを成功させるためにやりきった努力だっ…

 市民の声は行政にとどくか

赤レンガの東京駅、美しい。だがその背後に、にょきにょき近代ビル。京都でも奈良でも、なんでここにこういうのを建てたんや、と思う。すべては後の祭り、日本にはそういうことは山とある。沖縄辺野古の海を埋め立てて米軍基地をつくっている。辺野古の海に…

 内村鑑三、田中正造、石牟礼道子

今年一月に出版された「内村鑑三 悲しみの使徒」(若松英輔 岩波新書)のなかに、「いのちの世界観――内村鑑三から石牟礼道子へ」と題する項があった。そこに次のような文章があった。 <石牟礼道子が内村鑑三にふれた「言葉の種子」と題する作品がある。二人…

 夜明け

朝、まだ薄暗い。東の山際は朝焼けがきれいだ。日の出が近い。 道の向こうに赤っぽい服が見える。あの少年だ。彼は中学一年生、とぼとぼと歩いてくる。ランを連れて近づいていくと、いつものように寒そうに手をポケットにつっこみ、頭をフードでおおって、こ…

 石牟礼道子追悼

「苦海浄土」を教材にできないか。水俣の方言が浜の香のようにつまった石牟礼道子の文章は不知火海の調べだ。水俣病という悲惨の中で生きる人間の魂を感じる。方言は命の響き、文章の香りは魂の輝きだ。公害の原点を文学として描きあげた石牟礼道子の文章は…

 ファシズム

60年、日米安保条約が、国会の強行採決で採決され、有無を言わせぬ強引なやり方で反対運動を押しつぶした。 その時、竹内好は、「政府の強行採決を見過ごすことは、国家権力の独裁制への道を拓くことだ、民主か独裁か、どちらの道を歩むかという分岐点にある…

 今の日本の政治と竹内好の見た8.15

中国文学研究者の竹内好(1910〜1977)は33歳で召集され、中国戦線に配属された。部隊は老兵や学徒兵や寄せ集めの弱卒ばかりで、それでも実戦に出た。彼は殺さなかった。敗戦のとき部隊は洞庭湖にのぞむ岳州にいた。 戦後1953年、雑誌「世界」に「屈辱の事件…

 ネコの冒険(ぼうけん)

窓からのぞいたら、田んぼ向こうの雪のあぜ道を黒い動物が歩いていました。キツネの巣のある草やぶと雑木の林が東の方にあります。そっちの方から歩いてきたようです。その黒い動物はキツネではありません。小型の犬ぐらいの大きさかな、いえいえもうちっと…

  美しい風景にはたおやかな香りがある

故郷の風景が壊されていくと感じたのは、高校生のときだった。地元には西国札所の葛井寺(ふじいでら)があり、見事な石垣が境内を囲んでいた。石垣の内側の境内にはイチョウやケヤキの大木があり、街道を覆うように枝を伸ばし、晩秋になると街道いっぱいに落…