2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

  北川冬彦「悪夢」

戦争を体験していない人が圧倒的に多くなった。戦争を知らない人に戦争を教えることはできない。せめて体験した人の言葉を読ませたいと思う。しかし、それを読んでも、戦争はそのかけらほども伝わらない。だから、戦争は繰り返される。 それでも読む人に想像…

 少しずつ元気が回復してきた

庭から声が聞こえてきた。 庭に出ることができたんだ、ほっ、安堵した。 今日は、別の病院へもう行かないと言う。 行く気が起こらないと言う。 かかっている医者へも行かない、新たな病院へも行く気にならない。 薬も飲むのをやめる。 そう思うのならそうす…

 朝の電話

朝早く、電話がかかってきた。 消え入りそうな、しゃがれた声で言う。 ねえ、もうだめかもしれないのよ。 食べられないし、 歩けないし、 目も見えなくなったよ。 もう、わたしだめみたいだから、 あと、お願いするね。 お別れのあいさつみたいだ。 すっかり…

 戦争を招き寄せている

次の文章、いつの時代のものか。 「この田舎にも朝夕配られてくる新聞の報道は、私の最も欲しないこと、つまり戦争をさせようとしているらしい。現代の戦争をあやつる少数の紳士諸君は、それが利益なのだから別として、再び彼らにだまされたいらしい人たちを…

 学校の自然

8月2日の「ビオトープ研究会」で校庭観察 何回か草刈りをしてあるが草ぼうぼうになっている田んぼのあぜと、まったく草刈りをしないで放置してきたために草ぼうぼうとなっているあぜとでは、一見して分かる。放置してきたあぜは、草は背高く、茎太く、密生…

 ひざの軟骨がすり減った

何かの動物の頭蓋骨。ハクビシンかキツネか、なんだろう。 常念山脈から流れ落ちる烏川渓谷まで登り、ぐるっと回って帰ってくる朝のウォーキングができなくなった。 8月に入った頃から、左ひざに痛みが出るようになり、どこかいい医者はいないかなと、散歩し…

 シリア砂漠の少年

60余年前の作だろうか、井上靖の「シリア砂漠の少年」という散文詩がある。最初の部分はこんな内容だった。 「シリア砂漠で羚羊(カモシカ)と一緒に生活していた少年がいた。ヨモギのように伸びて乱れた髪、全裸だった。彼は時速50マイルで走った。」 …

 ドイツ学生の歌

図書館のコーナーにCDの棚があった。何かいいのがないかなと目を近づけてみていくと、フィッシャ−ディースカウの歌うシューベルトの「白鳥の歌」と、その近くに、エーリック・クンツと合唱団の歌う「ドイツ学生の歌」という、4枚のCDに95曲入ったのがあ…

 彼らはベトナムに帰って行った

ハップたちベトナム青年3人が国に帰る。朝7時前、見送りに彼らの寮へ行くと、3人はスーツをびしっと決めて寮の前で待っていた。ハップは笑顔で近づいてきて、両手でぼくを抱き締め、ありがとうございます、を繰り返す。時間が近づくと、帰国しない実習生たち…

白馬岳の見えるところに

もう退院して家に帰っているだろうと、キタさんの家に電話を入れた。聞こえたのは奥さんの声だった。 「今、ベッドに移そうとしていたところです」 家に帰ってからは、部屋の中は車いすで移動して、ベッドで寝ているという。 少し間をおいて電話に出たキタさ…