まさかのことが起こる

 山梨が大雪で大変だとニュースで知り、道志村に電話をかけた。息子の嫁の両親が住んでいる。
 「雪が1メートル10センチ積もってまーす。1週間前には70センチ積もりましたあ。」
 「わあ、それじゃ家が埋没ですねえ」
 「はい、埋没ですー」
 「外へ出られますかあ」
 「ここの住人3人で県道までの除雪をしてますが、まだ出られません。買い物にも行けません。行政はこんなとこへは除雪に来てくれません」
 「食べ物、どうしてます」
 「ジャガイモの芽が出たのを食べてまーす」
ということだった。
 豪雪地帯ではないところで大雪が降った。「想定外」という言葉が今回も登場している。
 そんなことはめったに起こらない。起こるはずがない。大丈夫だ。だから特に備えをする必要はない。これは「そう信じている」ということなんだが、常態化すると確信となる。すると、「絶対に起こらない」という固定観念になってしまう。
 東日本の沿岸部を壊滅させた地震津波、まさかこんな津波が来るとは思いもしなかった。原発事故が起こった。まさかこうなるとは思わなかった。日本本土に爆弾の雨が降りそそぎ、原爆まで落とされた。日本は神国、まさか負けるとは思わなかった。大企業だから大丈夫、つぶれることはないと思っていたら、まさかの破綻となった。
 たかがしれた人間の浅知恵、「めったにない」は「絶対にない」ということではなく、「あり得る」ということである。「大丈夫、大丈夫」と言われ、大丈夫と信じ、高をくくる。
 恐竜が栄えたのは、白亜紀と言われる時代で、約1億4千万年前から6500万年前になる。まだ人類は登場していなかった。その恐竜全盛の時代に、まさかのことが起こって、恐竜は滅んでしまった。今は人類が全盛期、科学を駆使しても、何が起こるか予測のつかないことはいくらでもあり、とんでもないことが起こり得る。人間世界で「想定外」の何が起こるかわからない。それなのに、険悪な関係にはならないだろう、戦争になるはずがないと、高をくくったお調子者の言動が、他国との関係を壊している。

 Hさんからメールが入った。
 「大雪の翌日、新潟市まで行きました。高速はすでに県内全面通行止めでしたが、北陸道は通行可なのを確かめ糸魚川から北陸道を走り、3時間半で新潟に到着しました。糸魚川までの道を走ってみると安曇野市の道路が最悪で、北へ行くほど積雪は多くても快適な雪道ドライブでした。白馬や小谷の除雪は完璧。車道は言うに及ばず、歩道の除雪も歩道専用の除雪機があちこちで稼働していて感心しました。国道事務所や県の企業局の大型除雪機が多数配備されていることも大きいと思います。糸魚川に入ると雪は次第に少なくなり北陸道は新潟まで雪無し。
 それにしても安曇野市の道路は最悪でした。新庁舎に金かける前に市民生活にお金かけてほしいと思います。地区ごとに業者委託と言っても、三郷地区では地元企業が次々倒産し、三郷村時代と比べても圧倒的に人と機材が不足しています。
 松川村は役場職員が村所有の除雪機を動かして、ライフラインを確保しています。白馬村も村で自前の除雪機動かして県道や国道以外、歩道も除雪しています。安曇野市も全面的に業者委託では無く、自前で重機やオペレーター確保しないと業者任せでは限界があると思います。除雪機の設備がない山梨県の有様を見ていると人ごとではありません。それが危機管理というものです。」
 Iさんがこれに応えていた。
 「除雪作業、大町市八坂でも完璧です。 家の庭もついでに除雪していただきました。小学校へ通う山際の通学路も、近所のお父さんが機械で除雪して安全に通学しております。 見習うところがたくさんありますね。」
 安曇野市内の新田の交差点でさえ、道路際の雪がきわめて危険だったと、家内が車で帰ってきて言った。市の中央部でも周辺部でも残雪で、「お手上げ」なのか、自然に融けるのを待っている。