2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

  殺すものと殺されるもの

殺すものと殺されるもの 宮沢賢治の重要なテーマは「修羅」だった。 童話「よだかの星」で、よだかは嘆く。 「ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩僕に殺される。 そしてそのただ一つの僕がこんどは鷹に殺される。それがこんなにつらいのだ。 ああ、…

  労働力をどうするか

労働力をどうするか 日曜日の夜は、「国際フレンドの会」日本語教室へ夫婦で教えに行く。 場所は公民館、スタッフは五人。 生徒は、十数名いるはずだが、いつも来るのは八人ほど。 完全な無償のボランティア活動だ。 生徒は、中国から三年間の出稼ぎで来てい…

  病気

病気 運動公園でボールを追って走っていたランが、途中で排便をした。 グランドのウンチを、トイレットペーパーをセットしたポリ袋で取り除く。 ここ二、三日、ウンチがやわらかい。 あれ、血らしきものが混じっているぞ。血便? ランのかかりつけの動物病院…

 あの時のあの曲

あの時のあの曲 「この歌は、新しい歌ですね」 「子どもと先生で選んで流しています。」 若い先生がこたえた。 歌は、給食が始まると学校中に流れ出す。 中国からの転入生に日本語を教えるために、週に二回ぼくは地元の小学校に来る。 無償のボランティア、…

  能力給と教育

能力給と教育 教員への能力給が、東京に続いて大阪でも導入されようとしている。 すでに教職員を五段階に査定しているが、能力給は一年先。 実践を評価して、給料に差をつけようというのだ。 ひどい手抜き指導や暴力的な指導の実態をぼくも見てきた。 そして…

  阪神大震災とダックス先生

阪神大震災とダックス先生 ダックス先生は、その朝早く、学級通信にのせる子どもの作文をワープロに入力していた。 印刷にとりかかろうとしたとき、大地震が襲いかかった。 家屋はさいわい倒壊をまぬかれ、家族の命も助かった。 しかし、周辺の家々は壊滅的…

 子どもの見方

認知症のケア、学校での指導 これは、すごいと思った。認知症のケア施設の実践なんだ。 要するに施設の職員とは別の第三者がやってきて、入居している認知症の人たちを観察し、その状態を分析するんだ。 第三者というのは、認知症ケア・マッピングというのを…

  遅刻

遅刻 高野街道をずうっと走ってくる女の子、 もう八時半を過ぎている。 遅刻だな、それで急いでいるんだな。 おはよう、いってらっしゃい。 おはようございまーす、 女の子は声をぽんと落として走っていった。 今日は土曜日、部活かな。 女の子はあせってい…

  ガンジー

ガンジー 「ガンジーの会」というところからメールが来た。 あなたの「宮柊二・一兵卒の歌」を、 「ガンジー村通信」に転載させてほしいです。 「ガンジーの会」は、自衛隊のイラク派兵に反対して、 2004年1月26日以来、24時間のハンガー・ストライ…

 芋

サツマイモ、ジャガイモ、サトイモ 毎朝サツマイモを食べる。 秋の収穫から毎朝つづけてきた。 カスピ海ヨーグルトと、蒸かし芋と、果物と、 それが我が家の朝の食卓。 去年の夏、 ぼくが北京にいる間に洋子が苗を植え、 ホームステイしていたヤスヨちゃんが…

 原罪とはなんだろう

原罪とはなんだろう 昨年暮れ、昔の仲間と食事をした。 クリスチャンで社会科の先生をしているYさんとは十数年ぶりだった。 Yさん、ブッシュ大統領も熱心なキリスト教徒ですが、 どうしてキリスト教徒があんなに殺戮をするのでしょう。 イエス・キリストが…

 子どもの死

子どもの死 遠藤豊吉という教師がいた。 1944年、学徒動員によって従軍、特別攻撃隊員になったが、 日本の敗戦によって出撃を免れて復員。 その体験をベースに戦後を生き、 小学校教育に専心した。 彼は、小峰書店の出版した叢書「日本の詩」の解説を引…

 落語で子どもを引きつける

落語 Kくんは、大学落語研究会に所属していた。 いろんな社会経験を経た後、三十代になって教職を志し、 採用試験を受けたが、不合格になった。 かねがねぼくは、教員試験の試験官や評価の基準と方法に疑問を持っていた。 ある自治体の面接試験のTV映像を…

 いたずら

いたずら 夜中に、「ウォ、ウォ」と小さく吠えて、ぼくらを呼ぶ。 目覚めてトイレに行きたくなり、戸を開けると、 ランも自分のトイレに行って、用を足す。 こちらが用を足しているすきに、ランはすかさずいたずらをする。 ぼくがトイレから戻ってきたら、 …

  卒業式

一冊の写真集 今日、一冊の写真集を本棚から出したら、 なつかしい昔の匂いがした。 写真集の名は、「いのち、この美しきもの」(筑摩書房)、 「群馬県境小学校の子どもたち」という副題がついている。 モノクロ大判の写真集だ。 斉藤喜博は、昭和39年か…

  明るい便り

明るい便り 「荒れてる学校で悩んでいる教師は山ほどいます。 そんな仲間たちを力づけてやってください。」 それに応えられるかどうか分からないが、 ぼくは自分自身の経験、 額に鉛をぶらさげたような、あの重い格闘の日々を思い出しながら、 何度か激励の…

 仏教の再生をめざす

仏教の再生 昨日の夜、NHKのTV特集で、 「お寺ルネッサンスをめざして」というのをやっていた。 衰退していく日本仏教、 全国七万数千のお寺の存在意義が薄れ、 無住の寺が増えている。 寺の再生はなるのかどうか、 文化人類学者の上田紀行が、寺の再生…

  悔恨

悔恨 卒業生を送り出して三年目が過ぎようとするある日、 一通の手紙を受け取った。 高校三年になっていた女の子からの進路についての相談だった。 自分は短大に行こうか就職したほうがいいかと迷っている、 ぼくは答えに窮した。 置かれている家庭の状況と…

  朝の登校

朝の登校 神社に集まり、 顔がそろえば黙って動き出す。 七時三十分の集合時間。合図らしい合図もなしに、 上級生を先頭に、ぞろぞろ後から動き出す。 十人ほどの小学生。学校までは二キロほどの、 人も通らぬ村の道。 大正時代は、映画館にカフェ、 銀行も…

 同速歩行

同速歩行 リードでつなぎ、 飼い主の左側に付け、 同じ速度で歩く。 前へ出すぎず、後ろに下がりすぎず、 綱を曳かずに飼い主と、いつも合わせて歩いていく。 歩くときは自分の興味関心で動いてはならないよ。 刺激があっても気をとられてはならないよ。 飼…

  あんまり川を汚すなよ

あんまり川を汚すなよ 授業がすんで、嘉助たちは川へ水遊びに行った。 谷川で遊んでいたら、上流で男たちが発破を使って魚をとっている。 発破に撃たれて魚はぷかぷか、水面に浮かんで流れてくる。 子どもたちは抗議した。 「お、おれ先に叫ぶから、 みんな…

 わが家族、ラン

ランという犬 ランはもうすぐ一歳になるラブラドール種だが、二代前に四分の一別の種が入っている。 食事時間になると飼い主の眼をじっと見つめ、正座して待ち、 容器にドッグフードを入れる間も、 よだれをたらーり落としている。 天気のいい昼間は庭で過ご…

 「先生自慢」

先生自慢 小さな旅館に客は我ひとり。 北陸は大雪だった。 女将は、あたたかい田舎料理をつくってくれて、 大阪で教員をしている息子の話を長々とした。 翌日スキー板を肩に宿を出た。 空は晴れて風もなく、 雁が原ゲレンデ行きのバスに乗れなかったから、 …

 「風船に乗ってきた手紙」

風船に乗ってきた手紙妻が庭に出たら、 姫こぶしの枝に紙切れがぶら下がっていた。 ゴム片が紙切れに糸でつながっている。 取ってみたら風船の手紙だった。 うんどうかいで、ふうせんをとばしました。 ひろった人はてがみください。 大阪河内長野のながのだ…