2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

大木実の詩「海戦のあと」

大木実の詩に、「海戦のあと」という散文詩がある。彼は、太平洋戦争でアメリカ軍に撃沈された巨大戦艦「武蔵」の謎を詩に書いた。当時、日本海軍は、「大和」と「武蔵」、二隻の世界一の巨大戦艦を有していた。敗戦色濃き戦争末期、「武蔵」は1944年10月24…

心に刺さったトゲ

心に突き刺って、いつまでも残り続ける記憶がある。 ふだんは心の奥に隠れているが、ある時ひょいと顔をだす。 取り返しのつかないことをしてしまった、あの時。 その記憶はトゲとなって、キリキリキリと心を刺す。 なぜそんなことをしたのだろう。 なぜそん…

小林多喜二のお母さんへ

「死刑囚」袴田さんの再審が確定した。 57年間、無罪への道は長かった。袴田さんは今、87歳。ほぼ一生が冤罪を訴える 裁判闘争だった。強力な助っ人はお姉さんだった。そして支援者だった。 かつて、壷井繁治という詩人がいた。彼は戦後すぐの1946年に「二月…

雪嶺を見よ

昨日は朝からみぞれが降り、午後にはボタン雪に変わって夕方まで降った。その前には温かい日よりが数日あって、虫たちが、 「春だよ、春だよ、温かくなったよ」 とばかり、どこからか現れ、 イトトンボ、モンシロチョウ、ユスリカ、クモ‥‥、 お前たちはいっ…

木の詩

木 田村隆一 木は黙っている 木は歩いたり走ったりしない 木は愛とか正義とかわめかない ほんとにそうか ほんとにそうなのか 木はささやいているのだ ゆったりと静かな声で 木は歩いているのだ 空に向かって 木は稲妻の如く 走っているのだ 地の下へ 木はた…

反戦の波は起きているか

中野重治に「兵隊について」という詩がある。その一部を掲載する。 兵隊について 見たか 賢そうな泣きつらを 背嚢形の汗を からだ中から革具の匂いのしてたあの兵隊を 気づいたか 君に何か言いかけようとしたのを 奴は言おうとしたのだ 見てくれおれを おれ…

詩人は危機の予兆を感得する

の 「現代詩集」のトップに掲載されていた「黒い歌」。楠田一郎という人の詩。 彼は何者なのか。 楠田は熊本市で、明治44年(1911年)に生まれた。すぐに一家は当時日本が領土として併合していた韓国の釜山に移住し、楠田は釜山で育った。昭和6年(1931年…

戦争

わが友、ランがいたとき その影 黒田三郎の詩(一部抜粋) 死の中にいると ぼくらは数でしかなかった 死はどこにでもあった 死があちこちにいる中で ぼくらは水を飲み 襟の汚れたシャツを着て 笑い声を立てたりしていた 死は異様なお客ではなく 仲の良い友人…

下やんよ

下やん、元気かあ。「最老後」(こんな言葉はないけど)が、ひたひたと押し寄せてくる感じやねえ。オレは若いころ、「カモシカ男」「不死身」を豪語していたけど、やっぱり近づいてくるものがあるなあ。朝と夕方、二本ストックついて野を歩くんや。北アルプ…

「いのちのうた」つづき

これが日本人の破壊的感覚。 「いのちのうた」つづき 雨田氏は、障がい者の共同作業所から、ハープの演奏を依頼され、出かける準備をしていた。迎えに来てくれたのは、共同作業所の指導員と障がいをもつ青年だった。青年は、ハマダハープアンサンブルがレッ…

いのちのうた

ハープ(竪琴)の演奏家であり、筝曲家でもあった雨田光平が、ロンドンでの体験したこと。それを、息子の光示氏が聞いて、著書「いのちのうた」に書いている。 「昭和の初め、父が留学していた時のことです。」 父は大英博物館に毎日通っていた。その帰り道…

戦時下の精神状態

一昨日、数十人か数百人か、ロシアの若者が乱闘している映像を観た。ウクライナでも若者の集団のケンカが起きていたという。どこまでが事実なのか分からないが、事実だとすればこの現象は、いったい何なのか。若者の精神の状態が現れてきているような気がす…

歌集・小さな抵抗」(渡部良三)つづき

歌集・小さな抵抗」(渡部良三)つづき 息子が出征したあと、内村鑑三の無教会キリスト者だった良三の父は、思想犯として治安維持法違反の罪で逮捕され、住民からは米英のスパイだと家族は激しい差別と弾圧を受けていた。 1946年敗戦。渡部良三は生きて故郷…