2017-01-01から1年間の記事一覧

 除夜の鐘

(今も建設が続くサグラダファミリアの大教会) 今日の「天声人語」に、除夜の鐘を「うるさい」と感じて苦情を言う人が出ていることが書かれていた。 「うるさい」「何時までつくんだ」、苦情は3年続き、除夜の鐘をやめた寺がある。それから10数年後、先代…

 反戦をつらぬく人

25日のクリスマスの日に、こんな投書が新聞に載っていた。(朝日新聞・声欄) 投稿者は、飲食業を営む79歳のコリアンだった。私と年齢がほぼ重なる。 「私が2歳の時、兄姉の3人を連れて、母が横須賀にいる父のもとに来日した。韓国のテグには祖父母までの…

  我が生まれし年

東の空は茜に染まり日が昇るまでまだ一時間ほどはある。人影なき朝の野道を行く。雪の常念山脈が少しずつ赤味を帯びてくる。透明な冷気がここちよい。不思議な感覚がある。今日の研ぎ澄まされた感覚は今までにないものだった。 なぜこんな特別な感覚が生じて…

 心に響いたサーロー節子さんの講演

ノーベル平和賞の授賞式でサーロー節子さんが講演した全文がこの火曜日の新聞に出ていた。この記事を読んでいて、心にぐっと迫るものがあった。 壊れた建物の下で身動きがとれなくなっていた。同級生たちが「お母さん、助けて。神様、助けてください」と、か…

 二つの忘年会

50年ぶりに、人前でアコーデオンを弾いた。下手な素人演奏だが、二つの忘年会で、場を少しでも楽しくできればと思った。 日曜日は、日本語教室の忘年会。20人ほどが集まった。ベトナム人、中国人、中国から帰還した日本人の母とその娘、そして娘の夫のMさん…

 酷寒のスズメ

昨日の夕方、木枯らしが吹き荒れていたとき、野をぐるりと一周して風に向かって帰ってきた。家の入口に来た時、ころりと地面にころがっているものがある。スズメだ。仰のけになっている脚の一つがかすかに動いた。胸のにこ毛もふくらんだり、へこんだりして…

  犬と暮らすと免疫力がつくとか

今朝はマイナス5度だった。羽毛服を着て行った。鳥たちはどんなに寒くても天気が荒れていても、明るくなれば活動している。生きることは行動すること。行動を止めるときは命の終わる時。 膝を傷める前までは、烏川渓谷まで長距離を歩いていたけれど、傷めて…

 1940年の「東京オリンピック」、2020年の「東京オリンピック」

昨年のリオデジャネイロでの五輪以後、今年になってからも麻薬組織と警官隊との銃撃戦が4000件起こり、700人が死亡しているという。スラムの中学校でバスケットボールをしていた女子中学生が流れ弾で死んでいる。 住民のこんな意見が新聞に載っていた。 「五…

 学校という器なのか世界なのか

「学校砂漠」という言葉がある。 学校が地獄に思える子がいる。 公立中学校の職を辞してから教育研究をしている尾木直樹は、 「学校を離れて最も驚いたのは、いかに学校の内実が社会に知られていないかということでした。子どもと教師のリアルな息づかいが、…

 野沢菜を漬ける  

近くにある希少な雑木林。希少というのは、まったくおかしなことだが、安曇野の田園地帯に、自然な雑木林がもう見当たらないのだ。だからこの小さな林のクヌギの木へ、夏の早朝にカブトムシやクワガタを捕りに来る子がいるのだが、すでに誰かが捕った跡があ…

 ドイツのおもしろい話

ドイツのフライブルクに住んでいる今泉みね子という人が、おもしろい話を書いていた。彼女は、翻訳をしたり雑誌の記事を書いたりしながら、ドイツの環境関係の資料収集も行なっている。おもしろい話というのは、彼女の執筆した「緑のフライブルクで愛を見た…

 冬が来た

朝霧のなかをランと散歩する日が増えた。 最近、朝霧が多い。 朝の気温も零度下になった。 白樺もヤマボウシも、カツラもハナミズキも葉を落とし、冬眠に入った。 9月終わりに種をまいたリーフレタスが、いっこうに芽を出さず、 一か月ほどしてから、かすか…

 高齢者をねらう悪徳業者

夕方五時ごろ、ミヨコさんの家の横に一台の軽自動車が止まっていた。ウォーキングから帰ってきたぼくは、ミヨコさんの家に誰か来ているな、と注意してその家の玄関に目をやった。男がガラス戸の前に立っている。ピンポンと鳴らしてもミヨコさんが出てこない…

  鶴見俊輔の詩「寓話」

鶴見俊輔が、著書「思想の落とし穴」の最後に、不思議な詩を載せている。彼の詩だと思う。詩の題は「寓話」、すなわちたとえ話。この詩は、1986年に発表されている。 著書のあとがきに、鶴見はこんなことを書いている。 「自分の思想は自分にとっての落とし…

 公園の紅葉

久しぶりにランを連れて、夫婦で公園に行ってきた。 サルも出没する渓谷は、野性のにおいが充満しているからだろう、ランは興奮状態だった。カラマツの黄葉は、すでにいちばん美しい時は過ぎていた。

「扇町サロン」第一回・テーマ「次世代に誇れる安曇野の景観」<3>

講座とサロンの座席をどうするか、中村さんはテーブルを四つの島にして、一つの島に四人が座る、市からやってくる講師二人は、前のテーブルに座る、われわれ二人はいちばん後ろに並んで座る、という案を提示したのでそれにした。 講座が始まり、このような出…

 「扇町サロン」第一回・テーマ「次世代に誇れる安曇野の景観」<2>

サロンにコーヒーとケーキを用意するということになり、それをどうするかで中村さんが何度も我が家にやってきた。扇町の公民館では湯を沸かすことはできるが、20人分のコーヒーを淹れるカップも道具もない。中村さんは、「それじゃあ店に売っているふた付の…

 「扇町サロン」第一回 ・テーマ「次世代に誇れる安曇野の景観」<1>

近くに住んでいる中村さんが我が家にやってきたのは一か月前だった。安曇野市が企画している、市職員による「出前講座」をこの区でもやってもらい、それを入り口にして、みんなでコーヒーを飲みながら語り合う会をつくらないか、中村さんはそう提案した。 そ…

 白馬連峰が雪

台風が過ぎ去り、 この地域はリンゴの落下もなく、ほっと安堵したが、 信州のあちこちで被害が出ている。 故郷の大和川や石川は、増水して一部氾濫したようだ。朝、ランちゃんとの散歩で北の地平線を見ると、 白馬連峰が白い。早くも雪が来た。 白樺の木は、…

 今の日本を考えるために50年前を振り返る <3>

1968年8月、「反戦と変革に関する国際会議」で、鶴見俊輔が意見を述べた。 「それぞれの社会で、社会成立の契約を作り直し、それらの連合によって、人類の新しい社会契約を実現すべきです。国家によってあやつられている多数者に譲ることなく、少数者が確信…

 今の日本を考えるために50年前を振り返る <2>

米軍兵士、清水徹雄の「脱走」は、その後どうなったか。 彼は日本国憲法に守られて、日本社会で暮らす道を選択した。しかしいつ逮捕されてアメリカに送られ、牢屋に送りこまれるか分からない。その危険性もあったが、小田実は彼を予備校職員に就職させ、普通…

 今の日本を考えるために50年前を振り返る <1>

今から半世紀前、ベトナム戦争があった。 アメリカ軍によるベトナムへの攻撃は苛烈陰惨を極めた。沖縄の米軍基地からアメリカ空軍の爆撃機はベトナムへ向かって飛び立ち、爆弾を落とし枯葉剤でジャングルを死滅させた。 その戦争になんと日本人が兵士として…

 刈田に立った男が演説

畑へ行こうと、作業着に着替えていると、天から声が聞こえてきた。スピーカーから出る声は、選挙の宣伝カーだ。今ちょうど、市議会議員と市長と、国会議員の、三つの選挙運動が重なっている。村はずれのこの辺りにも、市議会議員候補者の車が時々やって来る…

  リトアニア杉原千畝記念館修復をした人たち

リトアニア国の杉原千畝記念館の修復をやっているボランティアのニュースを見た。その工事に携わっている彼らは、元暴走族だったり、元暴力団員だったり、経歴はいわゆる「札付き」の人であるけれど、生き方を変えた彼らの仕事はすばらしく、工事が完成した…

[愛犬と暮らす] 危篤のマミ

ミヨコさんが泣いた。 「マミが死にかけている。何も食べないよ。立つこともできないよ。」 マミが危篤だという。毎日散歩に連れて行ってくれた近所のミヤさんが、よだれを垂らしてよたよたするマミを犬小屋に入れた。 マミは犬小屋の毛布の上に横たわった。…

 ブレヒト「ドイツ」

ブレヒトは、崩れゆく母国を悲しんで次の詩「ドイツ」を作った。1933年、ナチスが政権を奪取し、ブレヒトが国外に亡命した年だった。ブレヒトは母なるドイツを「きみ」と呼び、「きみ」がナチスに侵され、「きみ」の国民がヒトラーを賛美する様子を悲しむ。…

  ブレヒト「ヴァイマール憲法義解」

ヴァイマール憲法義解 <第一条> ブレヒト (野村 修訳) 国家の権力は国民から出る。 ――だが出てからどこへ行く? そう、いったいどこへ行く? ともかくどこかへは行く! 警官が建物からぞろぞろ出る。 ――だが出てからどこへ行く? そう、いったいどこへ行…

 対話を拒否する感情

「まるで米国に戦争をさせたがっているようだ。」と中国の外交当局者が日本の安倍首相を批判しているというニュースが目にとまった。安倍首相が、アメリカのニューヨーク・タイムズへの寄稿に、「北朝鮮と対話しても行き詰まる」と訴えたことも、好戦的だと…

 対話が生まれるとき

1944年、硫黄島を守備する日本軍は圧倒的なアメリカ軍の攻撃を受けつつ、徹底抗戦をする。アメリカ映画「硫黄島からの手紙」を監督したイーストウッドが語っていたのは、「日本兵の側に身を置いて硫黄島の戦いを描く」ということだった。個人としての日本兵…

 野菜の力

おいしいトマトを今も食べている。夏の盛りから毎日のようにトマトとキュウリを食べてきたが、トマトとキュウリがこんなによく実り、こんなによく食べたのは生まれて初めてだ。トマトは歯科医の布山さんからいろんな種類の苗を十数本いただき、それはみんな…