NHKスペシャル「縮小 日本の衝撃」

 昨夜のNHKスペシャル「縮小 日本の衝撃」は、そのとおり衝撃的だった。百年近い国勢調査史上初めて、今年は日本の総人口が減少に転じた。東京都も五輪開催の2020年に減少に転じるという。人口の年齢構成も、これからますます高齢化が加速し、出生率が低下する。この現象は、日本全体に現れてくる。未来を予知し、その未来に向けて行政をつくっていく能力をもっているか。その到来を予知して今、行政を行なっているか。
 報道を見ながら、ぼくは今住んでいる安曇野市の実態を考えていた。五か町村の合併によって誕生した安曇野市は、これまで「いけいけどんどん」で、新市庁舎を建て、支所の建物を建て替え改築し、さらに新体育館建設計画を進めている。合併特例債の使える今それを使わなければ損をする、と。しかし、合併特例債も借金に変わりはない。それが未来への道であったのか。
 報道は、すでに地方で始まっている「撤退戦」や東京の思いがけない現実をルポしていて、愕然とした。このまま行けば財政破綻によって自治体が滅ぶと危惧する担当者の声が重かった。地方のみならず、東京でも、五輪開催の2020年から減少に転じると予測されるゆえに、それにむけて行政の質的転換を図ろうと考える自治体もすでに現れている。
 夕張の例が深刻だった。
 2007年に財政破綻をした夕張市。東京都職員であったが、その安定した仕事を捨てて夕張市長になった35歳の鈴木市長の苦悩と奮闘。
 国の借金は350億円余りあった。今105億4000万円。繁栄当時に建てられた住宅は空家だらけ、それを今壊している。壊す費用も莫大。子どもたちは地元の夕張高校へ進学しても夢がえがけないと札幌に出ていく。進学希望者が30数%に落ち込み、市長もその対策に走り回る。保育所は築40数年たち、雨漏りや隙間風、市営住宅も雨漏り、共同体は崩壊。市長は月収を手取り16万円弱に減らし、出張費も自費で行なっている。市長の生活もかつかつ、よくやれているものだと思う。
 このような現実がある一方で、他の自治体では、政務活動費をぼかぼか自分の「ふところ」に入れている議員の実態がある。使わなければ損だと、合併特例債をどんどこ使う。
 相変わらず、慣れ合い、同調、ボスが牛耳る、異論に耳を傾けない。
 考えればもっと未来に借金を残さない手はあるのに、その市民の声は聞かず、安直に借金をしてハコモノをつくる。
 人口が減るのは仕方がない。減るとすればどうする。貧困問題、就職問題、高齢化問題、教育問題、人口問題、環境問題、福祉問題、これらの問題を解決する道は? 本気になって考える市民、本気になって取り組む行政を育成しなければ、ほんとうに破たんする。