[現代社会]子猫と子犬


 ホームセンターにペットショップのコーナーがある。
 子犬や子猫が、ガラスの小部屋に入れられて、
 陳列されている。
 種類ごとに一頭ずつ、
 商品として、
 買ってくれる人が現れるまで、子犬、子猫は小部屋で過ごしている。
 暖房完備、快適空間、
 ぐっすり眠りこけている子がいる。
 おもちゃで遊んでいる子がいる。
 歩きまわっている子がいる。
 毎日ひとりぽっち。
 ガラスケースの外に人間がいて、自分を見ている。
 そのことに、気づいているのか気づいていないのか、
 人間に視線を向けることはない。
 一枚の厚いガラスのしきりは、
 外と内を完全に遮断している。
 子犬や子猫は、小部屋の中で、
 一日、孤独な時を過ごす。
 飼育係の人が現れるときがいちばんうれしい。
 早く目と目と見交わす人が現れないか。
 早く体と体で触れ合う人が現れないか。
 子犬と子猫は待っている。



 ガラスケースの前に、
 一人の若い女性がいた。
 客用に置かれた椅子に座って、
 子猫を見ていた。
 一時間そこに座って見ていた。
 子猫の何気ないかわいいしぐさに、笑みが浮かぶ。
 かわいい、何をしていても、その動作はかわいい。
 女性は、そこに二時間座っていた。