レタス


朝食の鉢の上にたっぷり積まれたレタスの葉、
みずみずしい緑葉に、
黄色い針のようなものがくっついている。
今朝は氷点下3度、
昨日の雪が、庭の菜園の畝間に残っている。
レタス、キャベツ、白菜、
小松菜、太ネギ、大根、
ホウレンソウ、
どれもこれもシャキッと、
すがすがしい緑色を誇り、
今朝はそこからワイフがグリーンレタスの葉っぱを摘んできた。
針のようなものは、それにくっついてきた。
ワラくずにしては細すぎる。
レタスの葉っぱから数本見つかった黄色いもの、
なんだい、これ?
ああ、カラマツだ。カラマツの葉っぱだ。
カラマツの黄葉は、風が吹くと、
無数の黄色い光の針になって舞い落ちる。
庭に伸びたカラマツは、小鳥が種を運んで来たのか、
それとも山のカラマツ林から種が風に飛ばされてきたのか、
庭の隅から芽を出し、6メートルほどの高さに育った。
庭のカラマツは、まだ青年の樹だ。
青年の樹が、初冬の太陽に、黄金の葉を撒き散らす。
冬眠に入る前の、華麗な儀式。
グールモンの詩が頭に浮かぶ。


   シモーヌ、木の葉の散った森へ行こう
   落ち葉は苔と石と小径とをおおうている
   シモ―ヌ、お前は好きか、落ち葉ふむ足音を


   落ち葉の色はやさしく、姿はさびしい
   落ち葉ははかなく捨てられて土の上にいる
   シモ―ヌ、お前は好きか、落ち葉ふむ足音を


   寄り添え、われらも いつかは哀れな落ち葉であろう
   寄り添え、もう夜が来た、そうして風が身にしみる
   シモ―ヌ、お前は好きか、落ち葉ふむ足音を