ミヨさんは歩くと脚が痛いから、
新聞に出ていた広告のサプリメントを電話で注文した。
お金を払い込み、送られてきたサプリメントの錠剤を毎日飲んだ。
一か月ほどしたら電話があった。
金を払ってほしい、2万7千円。
私はもう払いましたよ、ミヨさんが答えたら、
払っていない、即刻払え。
そんなお金ありません。
ミヨさんが電話を切ると、また電話が鳴った。
弁護士だ、30万円払わないと大変なことになるぞ。
そんなお金ありません。
そしてまた電話が来た。
払わないと家を燃やすぞ。どうなるか分からんぞ。
怖くなったミヨさんは、金を振り込もうかどうしようかと思いながら郵便局へ行った。
おどおどしたミヨさんを見た局員が、どうしましたか、と聞いた。
訳を聞いた局員は、すぐに警察に行きなさい、と言った。
ミヨさんは、その足で警察に行った。
訳を話すと、よく来たね、と警察官が言ってくれた。
警察はサプリメントの会社に電話を入れた。
その代金は支払い済みです、という答えが返ってきた。
警察官は、これから絶対その電話に応じたらいけません、警察が守ります、と言ってくれた。
翌日、おびえた声でミヨさんが我が家に電話をした。
ちょっと来てくれんかのう、助けてくれんかのう。
か細い声に、跳んでいくと、いきさつを話し、
食べものものどを通らん、体も動かん、心臓もおかしい、と弱っていた。
ショック症状だった。
医者へ連れて行ってほしい、いつもの医者へ。
わかった、すぐ行くよ、
車にミヨさんを乗せ、二人暮らしのお姉さんも乗せ、医者へ行った。
医者は、血圧が180あります、と言って点滴を打った。
1時間ほどして、ミヨさんを連れて帰った。
医者にその出来事を話しましたか、とミヨさんに聞いたら、
医者は忙しくて、次つぎ患者が来るから、話す暇なんかなかった。
そりゃだめだよ、どんなに忙しくても、精神的なショックの原因を話さなけりゃ。
あの医者はこわくて、ぼろくそに言うから言えんだよ。
でもねえ、患者の話に耳を傾けない医者は失格だよ。
ミヨさんは、玄関のドアに名刺を貼った。
これを貼っておけば、悪い奴が来ても、これを見て逃げていくからね。
警察が、この名刺を玄関のドアに貼っておきなさいと、言っただよ。
警察官の名前が書かれていた。