2010-01-01から1年間の記事一覧
「夜目(よめ)遠目(とおめ)笠の内」という慣用句がある。 夜見たときや遠くから見たとき、笠を被っているのをのぞき見したときに、女の人は実際よりも美しく見えるという意味である。 江戸時代などは夜、ロウソクや行燈(あんどん)の光で見たのだから、…
本日、北アルプス初冠雪。 すでに三、四本の桜の大木は、3メートルほどの高さで幹も枝も伐り払われている。 順次伐られて桜並木は無残な姿になっていく。やっぱりやるのか、この逆行。 「桜切るなら、花の咲いたときに切れ。切れるか! 」というつぶやきも…
ランが下痢をした。ドッグフード以外に何か食べたのだろうか。 昨夜下痢をし、つづいて寝る前のトイレに家の外へ連れて行ったら、また下痢をした。 「悪いものは何も食べていないのにねえ。」 「午後の散歩の時、農業水路の水を飲んだけれど、緑のカーテンの…
10月7日に書いた記事とよく似た詩を見つけた。 ぼくの記事は、灰燼に帰したレコード盤の話。見つけた詩は灰燼に帰した書籍の話。ぼくの書いたのはこういうことだった。 召集されて国境警備兵になりソビエトとの国境に送られた宮本さんは、リューマチにか…
幅3センチの木に電気カンナをかけていた。 家庭用の電気カンナ、それを右手に持って、木を左手に持って、2ミリほど削る。 スイッチを引いてブルーンと回転するカンナを木に押し当てたとき、バンと衝撃があり、左手の手袋の人差し指がちぎれて飛んだ。 やっ…
サトイモの葉っぱに眠るアマガエル 職員室に、30代後半頃と見受ける作業服に丸坊主の男性が現れ、ぼくの横に背筋を正して立つと一礼された。 どなただろう、机に向かっていたぼくは怪訝な思いで立ち上がった。 「リーの父親です。息子がお世話になっていま…
キーと鈴、「雪花石膏」の容器と、なつめの実。 家のキー、どこへ行ったんかなあ、 キーと一緒に取り付けてあった鈴が壊れて外れてしまってから、そのキーは時々ゆくえをくらます。 外出するときにはいたズボンの右ポケットに、家のキーは、ベルトから鎖でつ…
連休に雪ちゃんがやってきた。7年前、武漢大学で教えた彼女は、今は中国・四川省の大学教師をしている。 「雪」はニックネーム、武漢大学の日本人留学生がつけてくれたのだと当時話してくれたことがある。 「私は雪が好きだからなんです。」 とその由来を言…
出勤の車の中、ぼくはハンドルを握っていた。 クラシック音楽がFM放送から流れてくる。オルガン曲が数曲つづいた。 「つづいてフォーレ作曲のアヴェ・ヴェルム・コルプスです。」 女性アナウンサーの説明を聞いて、あれっと思う。 「アヴェ・ヴェルム・コ…
今日、野沢菜の種をまいた。 霜が降りるようになる頃、野沢菜は1メートル近くまで生長し、それを刈り取って樽に漬け込む。 野沢菜の漬物は信州の冬の暮らしに欠かせない。 漬ける時にリンゴを入れたりして、それぞれの家庭の特色のあるおいしい味になる。 …
眠るアマガエル 緑のカーテンに稔るゴーヤ 電車の一輌に何十人かの人が乗っている。 それぞれ自分の目的地までの乗車、 ある人は居眠り、ある人は本を読み、ある人は車窓を眺めながら釣革を持っている。 連れのいる人はおしゃべりしている。 何時何分発の、…
猛暑の夏はいちばん涼しいところ、昼間は土の上や草の上、夜はフローリングの上、風の通るところを選んで、真横になって寝ていた。 秋になって、気温が下がり始めると、今度は暖かいところと涼しいところを交互に選んで寝ている。 日向で寝ていて、はあはあ…
<藁(わら)はスゴイ> 工房の一角に古畳を敷く段階になって、 寸法が合わないので、一部を切り取って縁を縫い合わせることした。 畳はSさんの家でいらなくなったのがあり、 「どうかね、工房で使わないかね」 と声をかけてもらって、Sさんが軽トラックで…
<住民自治を無視する行政と重視する行政> 沖縄県八重山諸島の一つの島、竹富島の町長、川満栄長さんの投稿記事が朝日新聞に出ていた。(「私の視点」) 竹富島は石垣島の隣にある。 小さな島だが、八重山の伝統的風土と美しい自然が確かに保存されてきた魅…
蕎麦(そば)の畑 腰椎がね、五つ、だめになったの、それで痛くて。 腰椎、じゃあ椎間板ヘルニア? はい、手術しよか、とお医者さんは言ってくれるんだけど、 手術しても治るかどうか。 軟骨がすり減ってしまったんだねえ。そんなに痛いのに、今それ、水汲み…
当面作物をつくらない田畑に水を張っておくと、 草が抑えられる。 タマネギの種取りをしたあと、我が家の隣の畑に水を水路からとうとうと流し込んでいるKさん、 もう水を張ってから、かなりの日数になる。 Kさんは、一日に三回は見回りに来て、水量を調節…
日の出前や、日の入り後に散歩することはできるが、 日中のウォーキングはやりきれない暑さで、とても歩く気になれない。 けれど、人間は歩かなけりゃ退歩する。 歩いてこそ、感じるものがあり、気づくものがあり、思索もでき、健康にもなる。 しかし、どう…
鶴見俊輔が怒りについてこんなことを書いている。 「人と人との間に生じる怒りって、だいたい錯覚から来るんですよ。 つまりほかの人に対して、自分が像を作って期待して押し付けようとして、 それがはずれるから怒りが出てくるんで、 『ああ、思いちがいを…
もう1編、吉野弘の詩です。 種子について ――「時」の海を泳ぐ稚魚のようにすらりとした柿の種 人や鳥や獣たちが 柿の実を食べ、種を捨てる ――これは、おそらく「時」の計らい。 種子が、かりに 味も香りも良い果肉のようであったなら 貪欲な「現在」の舌を喜…
こんな詩があるのです。 六体の石の御仏 さる人の耐えがたき痛みを 一の石の仏 預かり給う。 一の石の仏の耐え給う痛みを 二の石の仏 預かり給う。 痛み 白き火の玉なして 二の仏より三の仏へ移り 六体の石の仏を転々と経めぐり 再び 一の仏より六の仏へと経…
桑の樹の生長は、猛烈に速い。 たちまち枝を四方や天に伸ばし、大きな葉を茂らせている。 庭に自然に生えてきた樹は勢いが良すぎて、境界線からはみ出していく。 大胆に剪定して、枝と葉を畑の畦間に細かく刻んで入れているが、生長が速いだけに柔らかい。 …
三郷の農場で(昨年の写真) 「自動車免許は、法令による審査に通れば交付されます。その後、法規違反をすれば免許は取り消されます。この問題もそれと同じです。」 県の課長のその答弁を聞いた約250名の住民席からどよめきが起こった。 何を言う、それと…
ドクダミ。 キュウリを食べるラン。お昼のおやつ。 タカオ君は毎年、無農薬有機の「地這いトマト」を栽培して、トマトソースやジュースをつくり、 エゴマから「エゴマ油」を加工し、 アイガモを田んぼに放して米作りをしている。 いま、トマトの収穫期、我が…
厳しい日射熱をさえぎるために、今年育ててみた「緑のカーテン」がみごとだ。 室内から見ると、緑の館のなかの、夏ごもりの感じがする。 まずゴーヤのカーテンが茂った。 おまけに、20センチを超える長さの実は、ゴーヤチャンプルにゴーヤの味噌いためと、…
チャコは小犬、チコはもっと小さい。2匹を連れて家の前まで散歩してきたMおばさん、 「たまげたー。」 庭の畑を見て叫んでいる。 何なに? 「おどけたあ、おどけたあ。」 「おどけた」というのは驚いたということかな。 「よくまあ、こんなにみごとに出来…
鶴見俊輔が、その著書「隣人記」(晶文社)のなかで、戦争末期の一つのエピソードを紹介している。 それは、片桐宏という陸軍特別操縦見習士官の死にともなう出来事である。 片桐宏は、1945年1月7日、飛行訓練中に亡くなった。 敗戦七カ月前である。 同…
今日は「ナガサキ原爆の日」。 二つの鐘を児童館の相棒のサルタさんと二人でそれぞれ打った。 ネパールから贈られた「平和の鐘」はサルタさん、 「愛の鐘」はぼく。 朝の出勤時にサルタさんに話すと、二つ返事で賛成してくれた。 小学4年生のアサヒちゃんも…
日の出前、東の空から染まり出した茜色、 みるみる中天を焦がし、壮大な宇宙のショーになっていった。 森を染め、家々を染め、茜色は家の中まで染めつくした。 光と色の変化は止まることなく、 潮が引くがごとく茜色が退いていくと、 西の空に虹が出た。 野…
臼井吉見文学館 1945(昭和20)年5月11日早朝、 上原良司は、鹿児島県知覧より特別攻撃隊員として出撃し、 沖縄嘉手納湾にてアメリカ機動部隊に突入して戦死した。 学徒出陣の22歳だった。 上原の手記は、「きけ わだつみのこえ 日本戦没学生の手…
愛の鐘 平和の鐘 今日は「ヒロシマ原爆の日」。 市役所の職員たちは、原爆投下の時刻、朝8時15分に黙祷を捧げると昨日聞いた。 まだ誰も来ていない児童館、ぼくは一人で黙祷を捧げるつもりで家を出た。 途中、ひらめくものがあった。 児童館の近くの公園…