子どもの世界

 子どもの遊び 連凧と常念岳

冬休みに児童館で、連凧を作った。 ぼくとサルタさん、そして小学5年生のマコチンスキーの3人で作った。 マコチンスキーはぼくのつけたニックネーム、ほんとはマコト。 サルタさんとぼくは指導員という資格だが、子どもと一緒に遊びをつくり遊ぶことに没頭…

 集団のけんか

昔、いわゆるギャングエイジの子どもらは、隣村や隣町の子どもらと集団でけんかすることがあった。 昔の子どもらは、居住地域に遊びの集団ができていて、毎日外を走り回って遊び呆けていた。年上の子が年下の子らを仲間に組み入れ、カバーしながら遊ぶ。 子…

 児童館活動と学校教育

地元児童館の準備会があった日の夕方、 「この記事読んだ?」 と家内が言ってくれたのは児童館の役割について書いている実践者の新聞記事だった。 「いや読んでない。」 その朝、新聞をざあっと目を通したつもりが、そこは素通りしていた。 家内が知らせてく…

 夏休みの子ども

夏休みに児童館に来て遊ぶ子どもたちに、指導員のほうで用意する企画の準備会があり行ってきた。 昼間は子どもだけになる家庭の小学生の遊びスペースを、行政で保障し子どもの安全を守る、 そのひとつとして児童館が全国的につくられた。 昔夏休み、子どもた…

 昆虫少年は生き続けるか

これがその、庭に生えてきたキノコ、エリンギ。菌床の中から出てきて、生育条件がぴったし合ったのだろう。 部屋の中をふらふらとはっていくものがいる。 ゲジ君。 ゲジゲジのように嫌われる、というが、 ゲジゲジは、ゴキブリを捕まえて食べてくれる虫だ。 …

 未来をつくる子ども、子どもは育っているか 

友人の杉原さんは、定年で高校教員を退職してから日本語教師となり、中国の重慶医科大学で2年間学生に日本語を教え、 その後、シニアの海外協力隊に入ってブータンで2年間、学校体育のカリキュラム作りにたずさわった。 杉原さんはこんな話をした。 「ブー…

 小学生のつくる替え歌

以前、このことについて書いた記憶があるんだけれど、 小学生のつくった歌。 池澤夏樹の「風がページを‥‥」(文芸春秋)のなかに出てきた子どもの替え歌を読んで、 またそのことに触れてみようと思う。 子どもたちが、池澤の仕事場の近くで歌を歌っていた。 …

子どもの声

声、高く響け 朝、野の道を散歩していたら、 ブルーベリーを栽培している農家から子どもの泣き声が聞こえてきた。 3歳ぐらいの子どものいる家だ。 何か激しく主張して泣いているらしい。 大人の声は聞こえない。 子どもの声は、低い大人の声よりもよく聞こ…

  野生をとりもどす(1)

今、子どもに欠けているもの おさかな博士が言っていたことだったが、 水槽のなかに閉じこめられた自然界の魚は、 一匹の魚を集団でつつき回すようになることがあるとか。 日本の子どもも、 限定された空間から自由に離陸できない状態がつづくと、 エネルギ…

 かみなり

かみなり 久しぶりの雨が来た。 リンゴの摘果をしていた、四時ごろ、 東の空が暗くなって雷が鳴りだし、 ぽつり、ぽつり、 今日はここまで、 テルちゃんはウーファーたちを車に乗せて、 小倉山農場へ、 ぼくは、反対方向の自宅へ車を走らせた。 雨は北からや…

 道を行く子ども

大人のまなざしで守られる子どもたち ゆっくりゆっくり車が走る。 その車の少し前や横をちっちゃな子どもがとことこ走ってくる。 走る子どもは二人、 車の中には運転しているお母さんと、三番目の子どもが乗っている。 「子どもが走って帰ると言うんですよ」…

 子どもの周りに大人がいた

外にいた大人 小学校二年生のときだったか。 母に言い付かって兄と二人で母の実家へ出かけた。 兄は二歳年上。 農業を営んでいた祖父母の家は、 国鉄の駅から田畑の中を十五分ほど歩いたところにあった。 駅舎もない小さな駅で蒸汽車を降りると、 村に続く道…

 いたずら

いたずら 夜中に、「ウォ、ウォ」と小さく吠えて、ぼくらを呼ぶ。 目覚めてトイレに行きたくなり、戸を開けると、 ランも自分のトイレに行って、用を足す。 こちらが用を足しているすきに、ランはすかさずいたずらをする。 ぼくがトイレから戻ってきたら、 …

 「先生自慢」

先生自慢 小さな旅館に客は我ひとり。 北陸は大雪だった。 女将は、あたたかい田舎料理をつくってくれて、 大阪で教員をしている息子の話を長々とした。 翌日スキー板を肩に宿を出た。 空は晴れて風もなく、 雁が原ゲレンデ行きのバスに乗れなかったから、 …

 「風船に乗ってきた手紙」

風船に乗ってきた手紙妻が庭に出たら、 姫こぶしの枝に紙切れがぶら下がっていた。 ゴム片が紙切れに糸でつながっている。 取ってみたら風船の手紙だった。 うんどうかいで、ふうせんをとばしました。 ひろった人はてがみください。 大阪河内長野のながのだ…

 「卒業生と忘年会②」

白いニワトリ 店に入ってきた顔が笑っている。 よっさん、覚えてる? 阿部やん。 おう、アベチンか、変わってないなあ。 よっさん、忘れてたら、帰ろと思うてたんやで。 忘れてなんかいるものか、変わってないな、ええ顔してるやん。 ええ顔してるやろ。よっ…

 「卒業生との忘年会」

忘年会 三十九歳になるシンジが、 「閻魔」という名の飲み屋を開いた。 その店で忘年会をする、と言う。 彼は、中学生のとき猛烈なツッパリ反抗児で、 髪をそり上げ、学ランを着て、 十人の仲間と近隣の中学校に出かけては、 ツッパリ同士の対決をしては勝ち…

 「いただきます」

いただきます 日本語を学ぶ中国人研修生に、 「あげます」「もらいます」の言葉を教えるのは、 五十音から始める学習が一月ほど進んでからだ。 二人の研修生が教壇に立ってリンゴを手渡す演技をする。 「リンゴをあげます」 「リンゴをもらいます」 「あげる…

 「罵倒文化・愚弄文化」

罵倒文化 象の背に乗った若い女性タレントが、 象の手綱をとる男性に罵声を浴びせる。 「てめえ、なにしてんだよー、‥‥」 べらんめえ調のどぎつい言葉は、 男性のプライドをひどく傷つける内容なのだ。 浴びせられた男性は苦笑する。 男性はインド人だろうか…

 「先生の悲鳴」

先生の悲鳴 小学校の先生から悲鳴が届く。 病休をとっている先生のところに見舞いに行ったら、 十二キロも痩せて別人のようだったと。 荒れる子どもたちは、 「次の担任の先生も病気にしたろか」 とうそぶき、教師への暴力はエスカレートしていると。 些細な…

 「魑魅魍魎(ちみもうりょう)」

魑魅魍魎 昔、魑魅魍魎がいた。 「一本道でんがな、 それが二本になっとるんですわ、 わしはこれは狐やと、 闇の中でマッチをすって、 タバコをつけました。 そしたらでんな、 道が一本になって、 無事帰ってこれたんですわ。」 おっちゃんは、縁側に腰掛け…

 「家族の断絶」

断絶「ふーん、これが、じいとばあの生活か。」 囲炉裏端に座っているじいと、ばあを見て、 久しぶりにやってきた小学生の孫は、 部屋の入り口に突っ立って言ったという。 柱や梁、建具も黒くつややかに輝く、 薄暗いけれど長い歴史の残る家。 じいと、ばあ…