どあい子ども冒険クラブ、今日は基地づくり <2>

ハマさんは実演しながら、刃物の使いかたを子どもたちに説明する。「鎌は手前へ引っ張る、右手で引いたとき、左手の指を切った人がいるよ。ナイフは向こうへ押して木を削る。近くに人がいると危ないぞ。1メートル以上離れてやるんだぞ。」ハマさんは真剣だ。子どもも真剣だ。
水路からの排水ホースが斜面を下りていた。下の田んぼに水を引くためのものだ。田んぼはハマさんがつくっている。忙しいハマさんは、夏場も草取りができなかった。除草剤を使わないから草は手動の器具でとるしかないが、それをやれなかったから、草で草で、稲刈りは草刈りをやってから刈り取ったという。そういう田んぼだ。冒険クラブに参加した幼児のしゅんちゃんは、何もかも興味津々、ホースから出てくる水をじっと観察したり、途中でホースが切れているのをつないだり、その好奇心と行動力には驚くばかりだ。
 基地づくりの子どもたちは、木や竹を集める。この男の子は初めてのこぎりで木を切った。次に、のこぎり鎌で竹を切った。この子の集中もすごかった。午前一時間、数人のグループで基地建設に打ち込んで基地を組み立て、午後は床にワラや竹の葉を敷きこんだ。
 
ハマさんは、ヤギのほかに、鶏も飼っている。子どもたちは鶏小屋をのぞいて、雄鶏、雌鳥を観察していた。
火を焚くとき、男グループは「ふりじい」が火焚き指南をした。「ふりじい」は、定年退職してこの活動にたずさわっている。女の子グループは大学生スタッフの「しみぽ兄ちゃん」が指導した。まず焚きつけにワラを使う。男の子はばらばらとワラを寝かせて置いた。女の子は円錐形にワラを立てた。それから小枝を積み上げた。マッチのすり方も初めておそわることばかり。マッチ箱の持ち方、マッチ棒のすり方、失敗を重ねてやっと火がついた。それから焚き付けのワラに火をつける。ワラが燃えて木の枝が燃え、それ鍋をかけよう。
山の斜面の薮を基地にした子らがいた。何かの動物の巣みたいだった。この基地の近くまでヤギが来た。基地づくりに熱中する子らの姿を見ていると、人間も心の欲する巣を必要としているんだなと思う。いちばん落ち着くところなのだ。基地は子どもの巣だ。
冒険クラブの舞台のすぐ下に、自然公園がある。そこは地元の中学校の生徒たちが設計から建設までかかわってできた。看板にそのことが書いてある。トイレはバイオトイレで、微生物が分解する。自然で安全なトイレだ。池があり、それはビオトープになっていて水生動物がいる。今では訪れる人の姿をあまり見ない自然公園。だから魅力も大きい。子どもたちには自然公園がいちばん似合う。
生徒たちで作った公園。3年間かかった。こういう活動こそがホンモノの教育なのだ。教室に閉じ込めて、断片的知識を教えられる授業から脱して、自然の中で、社会の中で、頭、体を動かして、考え考え、創作する、そういう勉強が人間を鍛える。その見本がここにある。ここの実践をもっと学んでほしい。