しもやけ

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 小学生のころ、毎年冬になるとしもやけになった。かゆくてたまらない。足の指も手の指も、みみたぶまでも赤くはれあがり、ひどい時は紫色になって皮膚が破れた。あかぎれになることもあった。皮膚に糸状の割れ目ができる。水に触ることが多いとあかぎれができる。これは痛かった。

 室内の気温は外気温と変わらない。暖房は大きな火鉢が一つあるだけで、火鉢に手をかざして暖をとっても、しもやけは治らない。相変わらずかゆかった。どうしたらかゆみを減らせるか。かんてきと呼んでいた七輪に火を起こし、豆炭か木炭が真っ赤になると、家族みんなの布団を温めてくれる炬燵(コタツ)に入れた。夜、布団に入ると、ほっこり温かい。就寝する時、しもやけの足の指を炬燵の熱いところに当てる。その時だけ少しかゆみもとれる。昼間、あまりにかゆいときは、しもやけの赤く腫れたところに、マッチの火で消毒した縫い針の先端をぷちっと突き刺す。しもやけの指から滞っていた赤い血がぷっと吹き出た。赤くはれあがったしもやけの指は、少し腫れが引き、かゆみも収まるが、それも一時的だった。

 三月が来ると、少しずつしもやけが消えていく。気が付くともうかゆみはなかった。

さて、今の子らはどうだろう。今の小学生はしもやけを知らないだろう。部屋の暖房が効き、栄養のある食事を摂っている現代っ子、しもやけにならないのは、それだけではないだろう。何よりも、外で遊ばない暮らしになってしまっているからだ。かの日の子どもたちは、寒風吹きすさぶ田んぼで凧揚げをし、石けり、竹馬、ありとあらゆる遊びを楽しんだ。学校の教室も暖房がなかったから、休み時間は、おしくらまんじゅう、大根漬け、胴馬、たんていなど、寒さを吹っ飛ばし汗をかいて、遊んだ。