2014-01-01から1年間の記事一覧

 敗戦後の日本で、教育はどのように創られていったか <2>

1945年8月15日、白鳥邦夫は海軍経理学校の生徒であった。その日、彼は日記にこんなことを記している。 「12時、大元帥陛下の玉音を拝す。聖断ついに米英ソ支四カ国のポツダム宣言を受諾されたという。畜生!と思えど、聖断の一語が身を縛す。‥‥悲しみと憤り…

 敗戦後の日本で、教育はどのように創られていったか <1>

軍国主義に徹しているように見えた人が、敗戦後ころりと変って、民主教育を積極的に始めた。それを不信や懐疑の念で言われることがある。けれどその変化は少しも不思議なことではない。むしろ変って当然で、軍国主義体制のなかで戦争遂行に向かっていたその…

 加害の傷、被害の傷

南の空を灰色と黒い雲が地表まで垂れ込めていた。見るからに雲の下は嵐を予感させた。怪しげなエネルギーを持った雲の様だ。 雲に覆われている地帯は松本市の西部山岳地帯、山形村、波田地区から、朝日村、梓川、安曇地区、その奥に乗鞍岳、穂高山群が静まっ…

 この世相だから岩波書店『世界』を読む

最近はあまり本屋へ行かない。新刊本を買うのは金額が張るから、どうしても購入を控えてしまう。そこでぼくはネットで古書籍を取り寄せるか図書館を利用する。 最近、社会や政治の状況がどうも気にかかる。政治と国民意識の変化、ナショナリズム、戦争の危険…

 この国の廃屋、廃校、廃村 <2>

奈良県下市町の広橋峠からさらに奥に入ると丹生の地がある。そこに中学校の廃校があった。13年前のことである。子どものいない運動場に草が生い茂る。校舎の壁をツタが這い上り、二階の教室の窓から侵入していた。木造校舎のスタイルは明治以来の学校建築…

小さな生き物たち

7日は立冬、すでに霜も降り、山は雪化粧をした。ついつい後手後手に回ってしまう畑の作業、黒大豆の畑に行ってみたらすっかり枯れて、2割ほどのさやがはじけ、豆が飛び出して地面に落ちている。おそかりし由良の助、もっと早く収穫すべきだった。昨日と今…

 この国の廃屋、廃校、廃村 <1>

伊賀から津まで伊賀越えをしたことがあった。ひとり芭蕉も歩いただろう道を黙々と歩いていくと、山の中に廃屋があった。人が住まなくなって何年たっているのか、かつて人が住んでいた名残りをあちこちに残していて、当時のカレンダーが壁に残っており、火の…

 ひたすら無念

今朝は霧が深かった。犀川に発生する川霧が野を覆う。ランと歩いていくとランの黒いしっぽに霧の水滴がついて白くなる。霧の向こうでランを見つけた小学生の女の子三人が、十字路で立ち止まって、 「ランちゃんだあ、ランちゃーん」 と叫んでいる。声を聞いて…

佐々木修さん個展「雪稜賛歌」

佐々木修さんの絵画展の今日が最終日になるということで、午前中、松本市内まで行ってきた。 佐々木さんは、我が家から山のほうへ、田中の道を300メートルほど行ったところに住んでおられる。今日が最後になる一週間の個展は、松本市中町通りにある古民家を…

 カフェがほしい、

<前穂高東壁 その下が奥又白 蝶ヶ岳から> コーヒーを飲まない日は寂しく、たっぷり飲んだときは満ち足りた気がする。コリコリとコーヒー・ミルを回して、香りをかぎながらお湯をそそぎ、たっぷり大きなマグカップにコーヒーを淹れる。いっとき家内は生豆を…

 サルナシの実

学校へ行くと、ロッカーに、紙袋が入っていた。あれ、何だろう、袋を取り出してのぞいてみたら、メモが入っていた。今年もサルナシの実ができたからどうぞ、S先生のやわらかい文字だ。袋の中の紙箱にサルナシの実が見える。学校では科が違うために最近出会…

 今起こっていること、何かが壊れつつあるということ

サッカーのJリーグで、『ジャパニーズ オンリー』と書いた横断幕をサポーターが掲げて、問題になったことが以前あった。 コウさんとマア君、シンさんが会話している。 「あのチームは、次の試合、無観客試合という処分を受けた。観客ゼロにして試合をする。…

 シモン芋

どえりゃあ大きな芋だ。シモン芋を収穫した。今日は気温が高い。スコップで掘っていくと息切れがし、汗が額から流れ落ちた。土のなかから白い芋の肌が見えると慎重に掘っていったが、スコップが芋の一部に当たってしまうと、いくつか途中でちょんぎれた。ス…

 熊が出た

「そこのSさん、熊にやられましたよ」 朝、ゴミステーションへゴミを出しに行ったら、 I おばさんがNおばさんと話していて、ぼくの顔を見ると、待ってましたとばかり、ニュースを伝えてくれた。 「えーっ、ほんとー?」 Sさんの家は、ステーションから100…

 蝶ヶ岳に登ってきた<4>

大木は真下から見上げるのもいい。大木を前にするとつくづく尊敬の念を覚える。 秋は紅い実がよく目にはいる。こんな小さな植物にも紅い実がなっていた。 碧空に白雲。秋の雲はさすらいびと。 ケイ君は甲虫を見つけるとカメラを向けていた。ハンミョウを探し…

 蝶ヶ岳に登ってきた<3>

窓の外が明るくなっている、5時半ごろだ。日の出は6時過ぎだから起きることにした。一夜、寒くはなかった。 外に出ると、東の空が紅く染まっている。御来光を拝み、カメラに収めようとする人たちのシルエットが稜線に並んでいる。ぼくは反対側の西の斜面に行…

 蝶ヶ岳に登ってきた<2>

蝶ヶ岳ヒュッテは、稜線の真上にある。蝶ヶ岳という最高地点は、ヒュッテのすぐ南の、いくぶんヒュッテより高い位置にあるが、ヒュッテの北側に隣接して盛り上がっている別のところに三角点があり、それらを含むなだらかな砂礫の台地が蝶ヶ岳だった。ハイマ…

蝶ヶ岳に登ってきた

10月18日 秋晴れの最高の天気の中、蝶ヶ岳に登ってきた。大阪・神戸からやってきた拓也たち3人と地元のケイ君、合わせて5人、土曜日の9時半、車で出発して三俣の登り口から山道に入った。「熊出没注意」の立て看板がある。ぼくはザックに熊よけのカウベルを…

 冬近づく

季節は急速に冬に向かっている。朝の冷気が背中にしみる。台風通過した後、北から寒気が入ってきた。白馬連峰が白い。二度目の雪化粧だ。 納屋のネズミ対策は一応完了した。土間に砂利を敷いて柱材で突き固めた。 咲き終わったコスモスを刈り取る。刈り払い…

自分の育った故郷と <ヘッセの幼年時代2>」

子どもたちが今住んでいるところ、そこが大人になっても故郷と言いたくなる場所になるかどうか、そして終生そこが故郷であり続けるだろうか。 ぼくの育った故郷は、膨張してきた大都会のなかに埋没して、かつての故郷の風土は完全に喪失した。 子ども時代、…

 子どもを忘れた大人たち <ヘッセの幼年時代>

ヘッセは「考察」という文章の中に自分の幼年時代のことを書いている。子ども時代を忘れてしまった大人たちは、もう一度この文章を読んで、自分のなかにかすかに生きている子どもの魂を取り戻す必要がある。 保育園、幼稚園、学校などをつくるとき、さらに重…

 なぜ保育園反対なのか<世田谷区の問題から>

NHKテレビで、保育園建設をめぐる反対の行動が報道された。 「子どもの声がうるさい。だから反対する」。 東京都世田谷区、待機児童数が全国1位だ。 待機児童の解消のために、保育園の建設が急ピッチなのだが、全国各地で保育園への苦情が相次いでいる。9…

 憎しみから和解へ 小説「恩讐の彼方に」(菊池寛)

憎しみ・恨みから、赦し(ゆるし)・和解へ、その心境の転換を描いた、「山椒魚」(井伏鱒二)の最後、狭い岩屋のなかに閉じ込められて暮らしてきた二匹の心の中に変化が生まれる。山椒魚の心には友情が芽生え、蛙の自由を奪うのはやめようと思う。蛙も、自…

 現代の孤独と小説「山椒魚」

高校国語の教科書に、小説「山椒魚」(井伏鱒二)が載っている。川の中の狭い岩屋に閉じ込められた山椒魚の話だ。大正時代に元の作品「幽閉」が書かれ、改作されて1929年(昭和4)に「山椒魚」として発表された。 この短編小説には大きな謎がある。昭和初期…

 なぜだろう?

きれいな「クサムシ」をつかまえた。「ヘコキムシ」とも呼ぶ。「クサムシ」は「カメムシ」。「クサムシ」はずばりくさい匂いを出すから付けられた名で、「カメムシ」の名はなんともはや、お粗末なことで、今日までその虫の形が亀に似ているということを意識…

 種まき

ホウレンソウの種を播いた。堆肥と苦土石灰を入れて畝立てし、さらに木灰を入れ、表土に畝間の土をかぶせた。堆肥と苦土石灰を入れたばかりではすぐ種を播かないほうがいいが、しばらく寝かせる余裕がない。すぐに播きたい。そこで別の土を表土に1、2セン…

陰惨な言葉

子どもの世界に起こるさまざまな問題は、子どもの世界特有の問題ではなく、大人社会すなわちこの国の社会の問題が子どもの世界に影響している。 ヘイトスピーチ(憎悪発言)が大手を振って行われる国の姿、それはとても暗く陰惨だ。「死ね」とか「殺せ」とか…

 御嶽山噴火

いきなりの噴火だ。紅葉も始まろうかという絶好の秋晴れの日に噴火、登山客も多くいた。命からがら逃げただろうな。 御岳山は名古屋圏に最も近い3000m級の山で、とっつきやすい。 5月の積雪期に単独行で、王滝から登ったのは、1960年ごろだった。屋根まで雪…

 アジア大会

アナウンサーが絶叫している。金メダル、金メダル、‥‥ アジア大会の水泳競技、日本の怪物、萩野のメダルラッシュ、アナウンサーが興奮している。 日本人のための日本の実況放送、だから日本選手の活躍一点に絞られている。克明に競技のなかの日本選手に集中…

 栗の実

有賀さんから、庭の栗の実が落ち始めたので取りにおいでと電話をいただいた。以前から声をかけてもらっていたので、二つ返事で自転車に乗って、手袋と火ばさみをたずさえ、有賀さんの家に行った。有賀さんは仕事で出かけてしまい、奥さんもこれから出かける…