冬近づく

 季節は急速に冬に向かっている。朝の冷気が背中にしみる。台風通過した後、北から寒気が入ってきた。白馬連峰が白い。二度目の雪化粧だ。
 納屋のネズミ対策は一応完了した。土間に砂利を敷いて柱材で突き固めた。
 咲き終わったコスモスを刈り取る。刈り払い機で庭草と畑の畦草を刈った。テレビの天気予報で霜がどうのこうの言っている。もうそんな季節になったのか。頭はいまだ9月にいるような状態のままで、自然界はどんどん移り変わっている。
 今年はタマネギの種まきが早かったから、順調に育って、もうすぐ定植できそうだ。去年はタマネギがほとんど全滅した。雪が来るまでに苗が消滅してしまった。こんなことはこれまでなかった。根づかなかった原因は、定植時期が遅かったこと、鶏糞と石灰をまぜた土にすぐに植えたこと、植え方が浅かったこと、しっかり根元を固めなかったこと、などが考えられるのだが、やはり土が凍てるまでに根がしっかり伸びるようにしなかったせいだ。今年はしっかり根づかせたい。
 9月に植えたニンニクの球根がもう芽を5センチから10センチほど伸ばしてきた。これも順調だ。失敗したのは野沢菜。何を勘違いしたのか、気づいたときは植える時期が過ぎていた。萩原さんのおばさんに、
 「野沢菜を播くのを忘れていましたよ。ここがだめです」
と自分の頭を指差した。おばさんは、
 「そんなことないよ。トンネルにしたら、大丈夫だよ」
と言ってくれた。野沢菜の種を播いた畝にアーチ型の支柱を等間隔で刺し込み、ビニールシートをかぶせた。風に飛ばされないように萩原さんのクルミの木の下から、大人の靴ほどの大きさの石を運んできて、シートのすそに置いて固定した。木の下でクルミを拾っていた萩原さんのおばさんが、ぼくのやっているのを見ていたのか、またまた
 「オーケー、オーケー、大丈夫、大丈夫」
と笑顔で声をかけに来てくれた。トンネルのなかに手を差し入れると、薄曇りでも中は思いのほか温かい。曇っていても太陽熱は降りそそいでいる。地温が上がれば、発芽が促進されることまちがいない。
 ぼくが安曇野に来てから一度も出てこなかったヨトウムシを先週庭の白菜のなかに発見した。虫の入っていない株もあるが、ほとんどの株に侵入している。多い株では5匹もいた。このテロリストのような虫は、白菜のいちばん柔らかな芯の部分まで穴を開けて食べまくる。かなり葉を巻いた白菜が、ぼろぼろになってしまう。奈良にいたときは、ヨトウムシを見つけて指でつまみだすのに毎日1時間ぐらいかかった。いよいよ現れたヨトウムシ、このところ毎日、白菜のなかをのぞいている。一枚一枚葉っぱの間をそろそろと開けてのぞいている。薄茶色の大きなヨトウムシがいると、くぎ抜きでつかみだす。キャベツにはアオムシがついている。これはこれは指でつまみ取る。
 夕べ、白菜の一個を肉と炊いてくれた。おいしいね。
 ホウレンソウの芽が出て伸び始めている。これも気温が低下して、なかなか大きくならない。
 あさってから一泊二日で、蝶ヶ岳に登る予定。拓也、圭君、ほか二人、5人パーティだ。天候もよさそう、紅葉もきれいだろう。なんといっても楽しみは穂高の山群なり。熊よけの鈴、カウベルと同じデザインのを買ってきてある。カランコロン鳴らして登り、蝶ヶ岳ヒュッテに泊まる。
 圭君に、
 「ギターを持っていかないか」
と言ったら、えーっ、とすっとんきょうな声を出した。
 「じゃあ、ウクレレ持っていくか」
 圭君乗ってきた。
 「うんうん、ヒュッテで歌うたおうや」