アジア大会


アナウンサーが絶叫している。金メダル、金メダル、‥‥
アジア大会の水泳競技、日本の怪物、萩野のメダルラッシュ、アナウンサーが興奮している。
日本人のための日本の実況放送、だから日本選手の活躍一点に絞られている。克明に競技のなかの日本選手に集中する。
アナウンサーの声のトーンが上昇気味、一位でゴールインした、優勝だ。
やったー、よかったー、すばらしいー。
ぼくは日本人、やっぱりうれしい。


松本市内に住んでいるイギリス人、英語を教えている。
「日本の放送は日本の選手のことばかり、もっとほかの国の選手のことを放送しないの?」


ウズベキスタンの選手が金メダルをとった。男子100メートル平泳ぎ。
ウズベキスタンって国、どのあたりにある?
どんな国?
どんな選手?


カザフスタンという国の選手は金メダル6個、銀メダル7個、銅メダル16個とっている。
新聞の競技成績の欄を見て知った。日本の次に多い。
けれど、カザフスタンの国のことも、まったく知らない。
トルクメニスタンという国も出場している。
パレスチナも出ている。クウェートも参加している。
何? 何? 参加国・参加地域は45だって?
いったいそんなにたくさんの国と地域、どこなんだ?


アジア大会のスローガンというものがある。
2010年9月に「Diversity Shines Here(多様性がここで輝く)」で決定したという。アジアではそれぞれの歴史・文化・伝統・宗教の多様性を認めた上で、アジア全体で真の統一感・潜在力を築くことを目標としているのだという。


それならなおさらだ。
放送するなら、もっと各国の選手たちの物語を知りたい。
その国がどんな国なのか知りたい。
その国のなかで、スポーツはどのように行われているのか。
スポーツは人々をどのようにつないでいるのか。


複雑怪奇な国と国との関係。
内戦があり、国同士が争ってもいる。
選手たちは国境を超えて、どのように友情を築いているのか。
肝心要のこと、
それを知りたい。