小さな生き物たち

 7日は立冬、すでに霜も降り、山は雪化粧をした。ついつい後手後手に回ってしまう畑の作業、黒大豆の畑に行ってみたらすっかり枯れて、2割ほどのさやがはじけ、豆が飛び出して地面に落ちている。おそかりし由良の助、もっと早く収穫すべきだった。昨日と今日で、急いで豆をのこぎり鎌で株ごと刈り取り、車で持ち帰った。もうひとつ急ぎの作業にタマネギの苗の定植があり、それを同時にやりきった。黄色と紫の二種類、去年はほぼ全滅してしまったから、気を入れて苗作りをした結果、苗はよく育った。
 やはりこの地方では、種まきは9月、10月11月では気温が低くて発芽が困難になる。それでもビニールトンネルにして地温を高めて種蒔きをしている。野沢菜は30センチほどに育った。「日本ほうれんそう」はまだ発芽しない。
 畑にたたずむと、この季節の小さな生き物が、目を引く。冬に入り生と死の瀬戸際を生きる虫たちが今日も目に留まった。死んでいくもの、ひそかな隠れ家で冬を越すもの、冬眠にはいるもの、今生きて動くものたちはその選択をしなくてはならない。夜中から朝までは零度近くになっている。それでも晴れて昼間の気温が上がると、アリが餌を運んでいる。ハナ蜂がルッコラの白い花の蜜を吸いに来ている。タマネギ苗を掘り取ると土の中からムカデの子どもが現れた。小さなツチバッタがいた。
 小さなクモが、芋づるやカボチャのつるを積みあげたなから、あっちからこっちから出てきて、隣の畝の上を越えて移動していく。どのクモも同じ方向へ移動していく。これはどういうことだろう。北の方角に向かう。畝を越えるとき、急な畝の斜面から滑り落ちるのもいる。
 カエルがいた。アマガエルではなく体つきから観ると水路の溜まりにいたカエルのようだ。もう土の中に入って冬眠するときだよ、と声をかけた。キャベツにはアオムシが何匹かついていた。このアオムシは蝶にはならないだろう。白菜の葉っぱの重なりの中は温かく、一株に一匹、守り主のようにそこにひそんでいたアマガエルはもう姿が見えない。
 毎年、この季節、命のけなげさと静かに冬や死を迎える虫たちの、すべてはそのまま当然のこととして受け入れていくいさぎよさとを感じる。