和合亮一の福島の詩

 今朝、新聞記事で一人の詩人、和合亮一さんに出会った。
 「福島はまだ『有事』のなかにあります。私たちは沈黙せざるを得ないことに苦しんでいます。心の中に『どこにもぶつけようのないもの』がある。それなのに風化は進む。心の奥底にあるものを表に出すにはどうしたらいいでしょう。ぼくは詩や音楽を通じてできるのではと考えています。‥‥東北の各地に伝統的な踊りがありますね。宮沢賢治が愛した『鬼剣舞』を岩手県で見たときは、災いで苦しんでいる人や亡くなった人の魂を鎮めようとしているのだと直感しました。鬼は人々の怒りや悲しみを表している、と。そこから鬼を主題に一連の作品を書きました。」
 この記事を読み、その詩を読みたいと思った。インターネットで検索してみると、2013年の8月15日、和合亮一さんも音楽家とともに代表をつとめ、福島市で開催した「フェスティバルFUKUSHIMA」のなかで、和合亮一さん自ら、詩を朗読していることを知った。この催しは、「収束の目処が立たない原発事故後の世界で生きていくために、集まり、祭りをし、唄い、踊ることが必要である」と、絶望のなかから希望を生み出す祭り、音楽、アートを福島から発信するものだった。
 ユーチューブに、ラジオで放送された「多士済々」での姜尚中和合亮一の長い対談もあった。
 和合亮一さんは『廃炉詩篇』という詩集も出しておられる。フェスティバルで朗読された詩は、次の詩だった。


   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   我らは踊り明かすだろう
   手を叩き 足踏みならし
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   我らは叫び 我らは聖者 我らは思想 我らは祭り
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   我らは踊り明かすのだ
   声を上げて 汗拭って
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   我らは真夏 我らは足跡 我らは入道雲 我らは祭り
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   我らは踊り明かすのだ
   手をかざし 夜 風に吹かれて
   我らはふるさと 我らは交響曲 我らは群像 我らは決意
   我らは踊り明かすのだ 語り合うのだ 解り合うのだ
   我らは生きる 我らは祭り 我らはお囃子
   我らは言葉 我らは生きる 失われた命の為に
   我らは生きる 生きることのできなかった魂の為に
   我らは生きる 生まれ来る新しい命の為に
   我らは生きる 緑 風 土 水 の為に
   ふるさとを取り戻す為に
   あの日亡くなりし人々よ ここに集え
   踊れ 語れ 泣け 叫べ 踊り明かすのだ
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   我ら亡くなりし人々の代わりとなって生きるため
   さあ 我ら 踊る 心優しい鬼となろうぞ 叫び狂う鬼となろうぞ
   ふるさとを守る鬼となろうぞ
   亡くなりし魂を沈める 魂となろうぞ
   我々は踊り明かすだろう 手を握り 歌くちずさみ
   我らは祈り 我らは叫び 我らは足踏み
   我らは遥か彼方 我らは踊り明かすだろう
   踊りながら 今を噛み締める
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   我らは季節 我らは呼吸 我らは子供 我らは風
   この街の子供 我らは鳥 我らは雲 我らは野道
   我らはノミ 我らはお囃子 我らは太鼓 我らはとびしめ
   我らは麦わら帽子 我らは調べ 我らはロックンロール
   我らは大河 我らは何億頭の馬 我らは熱帯雨林 我らは入道雲
   我らは鉄砲 我らはシオカラトンボ 我らは水田 我らはスカイブルー
   我らは吾妻の山々 我らは阿武隈川
   我らは言葉 我らは画用紙 我らは悲しみ 我らはジダン
   我らはこぶし 怒りのこぶし
   我らはエネルギー 透明なエネルギー 我らは口笛 我らは八月十五日
   雲が追うてくる 雲が追うてくる
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   我らは 我らの命を生きる 命を生きる為に
   ここに 集い 集まる 守る 福島を
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   どぅーた どぅーた どぅどぅどぅーた
   あなたにそっと 落ちた木の実を知って欲しい
   実を 木の実を 落とされたままの実を わかって欲しい
   実を 木の実を あなたにそっと拾われたくて
   この世界に 現れてきた 美しい実を
   あなたの掌に その実の 重たさを 知って欲しい
   この夏の 夕暮れに
   あの日 亡くなりし人々に
   捧げる プロジェクト福島