生ゴミコンポスト

 我が家の生ゴミはすべて2種類の方法で堆肥化している。一種類は、いわゆるダンボーコンポストと称されて全国的に行なわれているやり方で、我が家はダンボールではなく木箱で行なっている。おもに蛋白質、脂肪系の生ゴミを、ピートモス・モミガラくんたん・米ぬかの三種を混合したものの中に投入して毎日かくはんする。これが発酵すると温度が50度を超えるようになる。
 もう一種類は、野菜ゴミを直接土に返すやり方。これまで桑の木の周りに穴を掘り、野菜や果物などの生ゴミを捨ててきた。捨てると言っても、いずれは分解するのだが、キャベツのいちばん外の葉は緑色が鮮やかだし、かんきつ類の皮はオレンジ色が生き生きしていて、それらが庭に露出しているのは美観にもよくない。なんとかならないか、家内は、大きな捨て穴を掘ってほしいと去年の冬の初めに言った。夏場なら分解は速い。だが、冬は分解が進まない。雪も積もるから、なおのこと捨て場に工夫がいる。
 そこで、桂の木の下に、1メートル弱のクルミの丸太を6段ほど井桁に組んで、ログ風の生ゴミ入れを作った。冬の初め、雪がまだ降っていなかった。真冬になり雪が積もり始めると、井桁の中にも雪が積もってしまうことに気づき、コンパネで四角なふたを作ってかぶせた。寒風が吹きすさび、雪が降り、あたりの緑はいっさい消えた。野菜くず、リンゴの皮など、毎日台所で出る生ゴミをその中に投入し、ときどき米ぬかを入れて、スコップを上から突き立てて、下のほうへ圧縮していく。
 敏感な一羽のカラスがこれに気づいた。この井桁のなかに野菜クズや果物の皮があるぞ。辺りに雪が積もり、野のどこにも餌がなくなっている。井桁のすき間から、緑や赤の色が見えた。カラスは、井桁の丸太と丸太の間のすきまを埋める小さな丸太をくちばしで取りはずした。ほうら、食べれるぞ。成功!成功! この小さな丸太は、すきま用だから簡単にはずれる。それをはずして、開いたすき間からくちばしを突っ込んで、生ゴミを引っ張り出す。智恵者のカラス、仲間が集まってきて、たちまち井桁の「ゴミログハウス」を取り囲み、生ゴミ奪取だ。かくて雪の上に色とりどりの野菜クズが散乱。
 美観によろしくないから作ったゴミログハウス、それも攻略されて、生ゴミが散らかされる羽目になった。しかたがない。食べ物がないのはかわいそうだが、こんなに散らかされてはかなわない。すまんな、網張るぞ。そこでキュウリネットでぐるりと井桁を囲んだ。
 かくして散乱は防止。
 そして春が来た。雪は融け、カラスたちは餌を見つけられるようになった。するともうゴミログは見向きもしなくなった。中の生ゴミは寒さが厳しかったから分解していない。井桁の7割が生ゴミで埋まっている。
 今日は、未分解の生ゴミを全部取り出して、桑の木の下の土に埋めた。空っぽになった井桁ゴミログに、これからの新たな野菜クズが入ることになる。気温も上がってくるから、分解も早くなる。