2006-01-01から1年間の記事一覧

 犬は敏感

久しぶりの帰宅 お父ちゃんが今日、帰ってくるよ、と母ちゃんが言ったら、 ランはぴょーん、ぴょーんと飛び上がって喜んだ。 一箇月ぶりにぼくの帰宅することが、ランには分かる。 不思議に言葉にこめられた心が通じる。 夕方、特急列車に乗ってぼくは帰って…

 技能研修生たち

志を果たして いつの日にか帰らん ――研修所から彼らは出発して行った―― <式の最後にみなさんは「ふるさと」を歌います。 その3番は、「志を果たして いつの日にか帰らん」でしたね。 心に決意したこと、それをやり遂げてふるさとにいつの日か帰ろう、 山は…

 心に残る子どもたち(1)

落語 モリムラくんは、体が小さい。 モリムラくんの声は、かすれている。 モリムラくんは、運動が苦手。 勉強はまあまあ、普通。 モリムラくんは、落語が得意だ。 モリムラくん、学級寄席をやりたいと言う。 じゃあ、モリムラくんの落語会やろう。 学級活動…

 鎮守の神の獅子踊り

伝統を子どもたちが受け継ぐ 長良川のほとりにある、小さな神社だった。 中国の農村青年たち6人と散歩して、その神社にやって来た。 丈高い幟が二さお、強風になびいていた。 県の重要無形文化財に指定されている獅子踊りが行なわれる祭り、 近々それが行な…

 北海道の事件に思う(2)

遊ぶ先生、遊べる先生 先生、もっと子どもと遊びなよ。 遊べば見えるよ、 この子は、こういう子だったんだ、 と思うようなことを感じる、分かる。 観察しようとして目を光らせるよりも、 子どもの丸ごとが分かる。 そして、子どもと子どもの距離、 先生と子ど…

 北海道の事件に思う

子どもを観る眼 「お詫び」という「形」の報道は、もういい。 見たくも聞きたくもない。 生の声、 生身の人間の声を聞きたい。 田んぼの畦を歩きながら、 何千何万の稲の穂を漫然と眺めていても、 見えはしない。 観る眼をもった農民は、 稲穂の海の一点の、…

 「銀河鉄道の夜」ブルカニロ博士の言葉

ほんとうの考えと うその考え(2) 吉本隆明は十代のころから、 宮沢賢治の心にかかわりつづけてきました。 彼は、「銀河鉄道の夜」のブルカニロ博士の言う、 「ほんとうの考え」と「うその考え」について、 こんなことを書いています。 「宗教やイデオロギ…

 桃子ちゃんのこと

つづいて考えました 桃子ちゃんのことで、いろいろコメントありがとうございます。 考えるいい材料になりました。 もっと意見を出し合えたらいいな、と思います。 私はこんなことを考えました。 桃子ちゃんは先生に頼まれたことをしませんでした。 すると、…

 「銀河鉄道の夜」ブルカニロ博士の言葉

ほんとうの考えと うその考え(1) 「ああ、わたくしもそれをもとめている。 おまえは、おまえの切符をしっかりもっておいで。 そしていっしんに勉強しなきゃあいけない。 おまえは化学をならったろう。 水は酸素と水素からできているということを知ってい…

 子どもの考えと評価

子どもの考え 桃子は、クラスでいちばん小さな女の子、 ランドセルをしょって歩くと、いつもみんなから遅れてしまう。 ある日の下校、みんなに追いつこうとしても、 ランドセルが重すぎて追いつけない。 「どうしよう、そうだ、ここなら大丈夫、ここに置いて…

   スズメのお宿

独身スズメの若者宿 小さな公園の桜の木に、 スズメが群れてさかんにさえずっています。 スズメのお宿です。 そこから大通りへ二百メートルほど歩くと、 もっと大規模なスズメのお宿のさえずりが聞こえてきます。 それはそれは賑やかな、 ひっきりなしにおし…

 小さな手作り豆腐屋

横丁を入れば さびれた商店街のメイン通りから、 細い横丁へ十数歩はいったところに、 古い長屋風の家並みがあり、 あれれ、こんなところにと思ってしまった、 小さな手作り豆腐屋と、 その向かいに鶏のから揚げを売っている もっと小さい店があったのです。…

  「銀河鉄道の夜」

さびしい君へ 宮沢賢治が「銀河鉄道の夜」という童話を書いているのを、 知っていますか。 知ってるけれど、読んでいません? そうですか。じゃあ、読んでみてください。 この童話は、何かが分かるというような童話ではなく、 何かを感じる、という童話です…

 商店街の一軒の店

今夜のおかず 商店街には「○○銀座」という名前が付いているから、 昔は近在の人を集めてにぎわっていたのだろう。 江戸時代は街道筋、 老舗の造り酒屋や寺もある、古い家並みもある。 今はちらほら人が通るだけの、 商店街の多くの店は、 シャッターを閉ざし…

  円空さん

中観音堂 中観音堂の前に砂利を敷いた広場があり、 その傍らに、現代の木彫りの円空仏が十数体並んでいた。 大きいのは等身大ぐらいもある。 円空さんを偲んで、 平成の人々が丸太を刻んだものだった。 今も、円空仏を彫る人がたくさんいる。 発起は、趣味や…

 カボチャの収穫

土からの贈り物 台風13号の雨が来る前日、 安曇野にコンバインが終日音を響かせ、 稲刈りを急いでいる。 今年の稲の稔りは良い。 蕎麦が白い花を咲かせている。 蕎麦畑の白色と稲田の黄金色、その調和が清楚で美しい。 暁生さんの家の庭の余分な土をもらっ…

 異変に気づくこと

アオマツムシ 今日も桜の木の上から虫の声が聞こえる。 秋の虫の異変に気づいたのは、もう十年以上も前のこと。 秋の虫といえば、コオロギがおなじみ、 エンマコオロギ、ミツカドコオロギなどが庭や土間にいて、 秋の夜長、美声を響かせていた。 スズムシ、…

  心優しい人たち

一、北京で シャオホンの視線が、 ぼくの靴下の一点に止まったみたい。 見ると、靴下に穴があいている。 シャオホンは指さした。 老師、つづくってあげます、と、 彼女の両手の指がものを言っている。 シャオホンはクラスでいちばん勉強が遅れていた。 シャ…

 勇気ある発言

サツマイモの弁当 戦争が終わって3年目の夏のこと。 小学校5年生のぼくのクラスに、 町の学校から一人の男の子が転校してきた。 河内のガラの悪いやんちゃ坊主たちは、まだはだしで遊んでいた時代だった。 転校してきた子の名前はクワタくん。 クワタくん…

 偶然の出会い

コウくんとの出会い 「コウです。」 白いハンチングをかぶった長身の若い男は、 ぼくを呼んでから名を名のった。 「おう、おう、コウくん。」 一年ぶり。まさかこんなところで出会うとは、 あまりにも偶然、偶然だなあ。 ぼくは初めてそのスーパーへ、 長良…

 ゴッホと宮柊二(みやしゅうじ)

歌集「山西省」の歌 耳を切りしヴァン・ゴッホを思ひ孤独を思ひ 戦争と個人をおもひて眠らず この歌は、1941年(昭和16)、柊二が山西省大原の北の小都市、 原平鎮の野戦病院に入院していたときに作っている。 発表されたのは、戦後昭和21年。 入院…

  人間の街

オリンピックがやってくる 「子どもたちはひらひらと飛び回り、いくつもの門をくぐり、 縦横に曲がりくねった道を駆けぬけて遊んだ。……」 映画「胡同(フートン)のひまわり」のチャン・アン原案の一節。 「四合院には常に子どもたちの声があふれていた。 中…

  武漢

若者たち コメントをくれたのは、やっぱり雪ちゃんでした。 以前にくれたチャンさんも、ともに武漢大学の教え子、 あのときの、ひたむきな若い魂との交流は、天からの贈り物のように思え、 刻まれた感動は、 時を経ても、美しい調べを奏でます。 ブログの、…

  トマトを食べる犬

その体験がいじらしさを生み ひとつ、そういう体験をすると、 いじらしくなるものだなあ。 ランを連れて、タカオさんのトマト収穫の手伝いに行ったときのこと、 朝五時過ぎ。 ランは野菜の好きなおもしろい犬で、 キュウリもトマトもうまそうに食べる。 その…

 白馬村での夜

白馬村での夜 お盆の夜、白馬村にぼくらはいた。 あれから半世紀、突如北さんが言い出した。 酒の勢いもあった。 あの激しい地吹雪の登高の最中、 チョコレートを食べたいと、金沢が言ってると、 ヨッしゃんが言うたか、平岡が言うたか。 あるいは、オレが金…

 ぼくらは何を知っている

ぼくらは何を知っている 莫邦富(モ−バンフ)という中国人ジャーナリストの小さなコラムを、 朝日新聞日曜版で読むのを楽しみにしている。 今は日本に住んでいるこの人の日本と中国を見る眼は暖かい。 しかし祖国に対しても意見はなかなか率直で厳しい。 1…

 無言館へ行った

戦没画学生慰霊美術館「無言館」へ行った 上田市郊外、塩田平の丘に無言館はあった。 近くの寺の駐車場に車を置くと、 じりじり照りつける乾いた道を行く。 顔中汗だらけの中年の女性と出会い、道を訊くと、 いま無言館へ行ってきたところです、 と汗をぬぐ…

 八月六日

八月六日 八月六日がどういう日なのか、 質問したら知らないと答える子どもや若者が増えた、 と年老いた被爆者は、学校での平和学習の空洞化を嘆く。 半藤利一氏は、 日本はどこの国と戦争したか、とアンケートをとったら、 アメリカと答えなかった大学生が…

 「ふるさと」

中国で歌う唱歌「ふるさと」 中国の青年たちが、日本の唱歌「ふるさと」を歌うことに最初違和感があった。 彼らに抵抗感はないだろうか。 北京にある中国労働部の研修所でのことだった。 日本での三ヵ年の技術研修にむけて、 派遣前の日本語研修二ヶ月を受講…

 トマトの収穫

トマトジュースとトマトソ−ス 朝五時過ぎ、ランを車に乗せて出発する。 目的地はタカオさんのトマト畑。 朝のトマト収穫の手伝いだ。 このトマトは、ジュースやソースに加工するもので、 このあたり、たくさん栽培されている 支柱や覆いのない露地栽培で、 …